0343・第7エリア・ボス戦
ボス部屋の扉前でゆっくりと休憩するミク達。寒くはない為、防寒具を脱いでおり、開放感を感じながらの休憩となる。適当に飲み食いしつつ、第7エリアの話をしている6人。セリオは食べているだけだ。
「それにしても厄介なエリアねえ。暗かったり明るかったり、猛吹雪だったり氷だらけだったり。嫌気が差してきそうだけど、それでも突破できるようになってるところが腹立たしいわね」
「そうだね。面倒臭いのと大変なだけで、普通の探索者でもちゃんと突破できるようにしてある。ちゃんとしたバランスで出来ていると思うよ。それが腹立たしいと言えば、その通りなんだけど」
「本当にねー。何でこんなに厄介だけど、攻略できるようにしてあるんだか……。もちろんミクが居なければ攻略する気にもならないんだけど、でも攻略できない訳じゃないのが……」
「どう解釈すればいいのか悩むね。今まで攻略しようとしなかった根性無しなのが悪いのか、それともミクのようなのが現れないと無理だったのか。フィグレイオも攻略されてるしねえ」
「それを言うならジャンダルコもドルムもでしょうが。残っているのはエルフィンとカムラだけね。そこも終わらせれば、周辺国はコンプリートよ。それに意味があるのかは知らないけども」
「そういえばミク、エルフィンはどうする気? 神聖キルス法国や小国家群が進軍中だけど、このま放っておくの? それとも介入する?」
「介入というか、戦場で死んだ連中を喰う事は考えてる。でも、それは夜中にすればいいだけだし、昼間に介入する気はないかなぁ。別に私が介入しなくてもエルフィンは負けるだろうしね」
「でも、エルフィンのエルフがゴールダームに逃げてくるかもよ? それはどうするの?」
「ゴールダームの人達にスラムへ追いやられるか、それとも私が秘密裏に喰うかだね。それと王子と王女は全員喰っておいた方がいいかな? 残っても邪魔だし、鬱陶しい事をしだす可能性が高い」
「そうね。亡命先で国家を建国なんて言い出したら、迷惑千万でしかないわ。秘密裏に殺害しておくのがベストだし、他の貴族も喰って問題ないと思う。ちょうど軍同士が衝突した辺りで食い始めるのが良いでしょうね」
「仮に東の連中がエルフィンの王都であるユグルに到達しても、既に王子や王女はおらず責任をとらせる者も居ないって事かい。しかし、王子も王女も死んだっていう証拠は要ると思うけどね?」
「そうね。でないと逃げられたと思って延々と探す事になるし、地下に潜り反撃の機会を窺っているとか噂を流す奴が出るかもしれないわ。完全に死んだという証拠が必要でしょう」
「仕方ないか……適当に殺し合いをしていた風にしておくかな。どうせ王城に寝泊りしてるんだろうし、殺し合いをしていたように見える死体なら後は勝手に考えるでしょ。もし貴族の所にバラけてるなら、適当に数人暗殺するかな」
「そうすれば報復のし合いになり、最終的に1人が残る。その後はそいつを暗殺すれば終わるかい。ここでキッチリ止めを刺すなら、だけど」
「あの国はここで止めを刺さなきゃ駄目でしょ。でないと延々と同じ事を繰り返すわよ? 唯でさえ長生きな癖に強欲なんだから始末に負えない。そういう連中なんだから、ここで確実に息の根を止めなきゃ駄目なの」
「アレッサは特にそう思うか……とはいえ、あの国に住むエルフ以外の意見はそうだろうね。今まで散々に貶され見下され差別されてきたんだ。怨嗟も十分に溜まってるだろう」
「それどころか、逃げるエルフ達を襲って殺すかもしれないわ。身包み剥いで森にでも捨てれば、魔物が勝手に食い荒らすでしょ。どうせ逃げる奴なんて金目の物を持ってる奴等よ。仕返しとばかりに襲うわ、確実に」
「今までやられてきた事を考えれば当然だし、不当に高い税を掛けてたんだ。転落すれば、今度は自分達が搾取される側になる。それが戦争に負けるって事でもあるんだけど、そのギリギリまで揉めてるような奴等じゃねえ」
「敵を前に一致団結、とまではいかなくても、少しは協力すべきでしょうにね。戦争に負けたら権力どころじゃないと思うんだけど、ギリギリになったら逃げるのかしら」
「逃げるでしょう。あそこの国の連中なら、むしろ当然よ。実際に追い詰められたら、我先に逃亡するような連中。それが、あそこのエルフどもなの。だから息の根を止めなきゃいけないって言ってるわけ」
「力説する気持ちも分かるけど、そろそろボス戦の準備を始めようか。ここでダラダラ話してても、無意味に時間が過ぎるだけだよ」
そのミクの言葉を機に、話を止めて準備を始める5人。ミクは既に準備を整えており、後は他の者達が準備を終えるのを待つだけだ。ボス部屋の中は基本的に岩壁の空間なので、ミクは防寒具を着ていない。
それを見てアレッサ達も防寒具を着ずに、いつも通りの装備で身を固める。そして準備が完了すると、ボス部屋の扉を開けて中に入った。
中は何の変哲もない岩壁の空間であり、30メートル四方ほどの大きさだ。それなりに大きなボス部屋の中で、いったい何と戦う事になるのか。
ボス部屋の扉が閉まり、魔法陣が輝く。そこから現れたのは巨人だった。人間の姿によく似ているが背が5メートルに近く、巨大な剣を右手に持っており、動きはそこまで遅くはない。
相手が既に動き出している為、ミクは即座に接近する。それと同時に相手は剣を横薙ぎに振ってきたが、ミクは盾で完全に受け止めた。微動だにしないミクの防御に驚く巨人。その隙に攻撃を繰り出す仲間達。
アレッサは足にウォーアックスを振り下ろし、ティアは足首に一閃。シャルはもう片方の足を突き刺し、カルティクは足の指を切りつける。そしてイリュとセリオは顔へと【爆熱球】を放つ。
武器は全く歯が立たず、【爆熱球】は左手で防がれた。そして再び剣を横薙ぎに振るってくるが、こちらも再度ミクが完璧に防ぎ切る。流石に驚いて一旦離れる4人。離れているイリュとセリオも唖然としている。
「ちょっと! 幾らなんでも強さが急激に上がりすぎでしょ!? ついでに何よ、このデッカイ奴! 初めて見るんだけど!?」
「イリュディナが初めて見るんじゃ、私達が分かる訳が無いでしょうが! それにしてもワイバーン製の武器が通じないって何よ。幾らなんでもおかし過ぎるでしょう。どんな皮膚してんのよ」
「ミクが敵の攻撃を防いでくれてるからいいけど、あんなのもらったら一撃で死んじまうよ! こいつに有効な攻撃が分からないけど、どうする? このままじゃジリ貧だ!」
「とにかく人体と同じなら急所を狙うしかないでしょ。それ以外に方法なんて無さそうよ」
「そもそも足の指だって急所なんだけど!? そこに全く効かなかったのよ? 私達の武器どころかアレッサのウォーアックスすら効かなかったのに、いったい何処に攻撃しろっていうの!?」
「魔力を篭めて全力で使えばいいでしょ! ここで壊れてもいい、とにかく倒すのが先よ。少なくとも顔への攻撃は防いだ。つまり、何処かしらダメージを受ける場所はある!」
その言葉を聞いて飛び出したティアは、巨人の足の爪の間に薙刀を刺し込む。するとあっさり薙刀の刃は刺さり、絶叫が響く。
「Guooooo!!?!!?!」
どうやら拷問じみた場所なら効くようだが、それはそれでどうなのだろうか? とはいえ、突破口は開けたようなので皆も落ち着いたようだ。
仲間内で怒鳴り合うというのは良い事ではないので、密かに安堵するアレッサであった。




