0341・第7エリア最終攻略開始
「しかし……ティアが第7エリアを攻略するのか。王族としては喜ばしい事ではあるのだが、妹がそんなに先に進んでいるというのは少々複雑な気分だ」
「姉上。そうは言われても、私は御二方に連れて行っていただいている身ですので……」
「まあ、それでも練習はしてるけどね。魔物と戦ったり、ミクの本体空間で修行をつけられたり。そっちの方が厳しいっていうのもアレだけど、それでも強くはなってるわよ。特にスキルが良い結果を出してるんじゃない?」
「あ」
「スキル? ティアのスキルは判別しないままだったな。いったい何のスキルがあったのだ? もし有用なスキルであったのなら、城の中で活かしてほしいのだが……」
「そのー……。あのですね、姉上。実は……」
「【舞踊】と【所作】と【色気】よ」
「イリュディナ殿! 何故そうあっさりと言うのですか!?」
「別に良いじゃない、変なスキルも無いんだし。どうせ言いよどんだのは【色気】でしょ。これはそこまでのスキルじゃないって言ったでしょうに。【魅了】や【魅惑】に【妖艶】よりはマシなの。それらを王族が持ってたら大問題よ?」
「それはそうかもしれませんが……」
「その……【色気】というのは、普通に想像する色気で宜しいので?」
「そうよ。ただし元々色気のある者の色気と、スキルの【色気】は別。簡単に言うと、スキルの【色気】はその人の色気にプラスの効果があるだけ。つまり元々色気の無い人だと、然して効果がない事になるわ」
「そうですか……。もしかして、だから今までティアに色気など感じなかったと?」
「そ。色気の無い人にスキルで【色気】を足してもねぇ……。代わりに歳をとって色気が出てきたら、そこにプラスされるから効果は大きくなるわ。色気というのは何も見た目だけではないのだし」
「纏う雰囲気であったり所作であったりもあるが、ティアは【所作】のスキルも持っている。……あれ? という事は?」
「凄い色気を振り撒く悪女になり得る可能性もあったわね。元々腹芸は得意なのだし、必要悪として王族の中に居た可能性はあるわ。その場合は国家の為に貴族を誑かしてたでしょうけど」
「悪女のティアか……それはそれで見てみたい気も」
「姉上。そんな下らない、絶対に来ない未来など放り捨てて下さい。それより皆さん、そろそろダンジョンに参りましょう。下へと下りるのにも時間が掛かりますし、早めに出発しないと急ぐ事になります」
「まあ、色気で弄って拗ねられても困るから、そろそろ行きましょうか。第7エリアの攻略、といっても私達はミク達に任せっきりだったんだけども」
「それは良いんじゃない? ミクも暇だから行くって感じだったし、私達は私達でやる事があるしね。シャルも一応は情報収集してるけど、私達も含めて難しいのよね。変化の時期だから」
「ミクがゴミを喰うと、またゴミどもが変化するからね。喰うにしても安定してからじゃないと難しいわ。場合によっては時間が掛かる可能性もあるけれど、こればっかりはね」
「ワシは何も聞いてないから気にしないでくれ。そっちの事に興味を示す気は無い」
「まあ、ギルドだけで大変だろうし、それ以上に首を突っ込んでも仕事が増えるだけだろうさ」
「勘弁してくれ。これ以上仕事が増えたら、仕事に殺されかねん。ワシは一足先に逃げさせてもらう」
そう言ってラーディオンは宿を出て行った。ベルと騎士達も出て行き、ミク達は部屋に戻って防寒具を着たらダンジョンへ出発。第7エリアへと到着すると、そこは猛吹雪になっていた。どうやら復活したらしい。
すぐに雪を掘り、棒を2本出したら真ん中にセリオが立つ。再び壁が左右からせり出したので走って行き、復活していた<ユキフラシ>の近くで説明をする。
『こいつは仮称<ユキフラシ>。とにかく広範囲を切り裂くか、それとも【火魔法】の系統で焼くといい。他の魔法は多分効きづらいと思う』
そのミクの言葉に頷いたシャル達3人。ミクも長巻を取り出すと、一斉に走って行き切り裂き始めた。再び<ユキフラシ>は体をくねらせるが、今回は人数が多いのとセリオが魔法を使っている。
それも角を大きくして突き刺した後、角の周りから魔法を発射しているらしい。流石に相手の体の中から発射は出来ないみたいだが、それなりのダメージは与えているようだ。
『あちち! あつ! あっつい!!』
ゼロ距離で魔法を使ったら、そりゃそうなるだろうとしか思えない結果ではある。どうしても近接攻撃の形で戦いたかったのかは知らないが、流石に離れて魔法を撃つセリオ。失敗したが、これもまた経験ではあろう。
イリュは的確に魔法を撃っているが、流石にダメージが大きかったらしく、今回はイリュに向かってマシンガンの如く雪が飛ぶ。その速さは想像していたよりも速く、慌ててイリュは逃走する羽目になった。
その間にも近接組は攻撃を仕掛けており、気付けば半分は切り裂いて潰している。もはや風前の灯火だったのだろう。最後に圧し掛かり攻撃をしてきたが、それを受けるミク達ではない。
さっと離れて倒れこんだ<ユキフラシ>に対し、総攻撃を加えていく面々。殆ど死に掛けていた状態だった<ユキフラシ>に耐えられるものではなく、あっさりと死亡し雪は止まった。
「よし! これで1階は終わりね。最初に倒した時から7日? 10日? それぐらい経ってるわよね? 復活までの時間が微妙だけど、細かく調べる気にもならないし、適当でいいか」
「お疲れ様です。後続の方は地図があるんですし、何日で復活するかは重要ではないと思います。勝てるかどうかが先でしょう」
「確かにね。こいつ、見た目よりは厄介だよ。何と言ってもブヨブヨの体で切りにくいし、刃が通っていかない。押し切る武器だと斧ぐらいじゃないと駄目だね。もしくはミクの持ってる剣のように切り裂くタイプか」
「魔法で倒すにしても骨が折れるでしょうね。いきなり雪をこっちに向けてきたし。あやうく雪に殺されるところだったわよ」
「鈍重だけど、思っているよりも厄介な魔物ね。気合い入れないと倒すのに時間が掛かるわ。そのうえ圧し掛かろうとしてくるし」
「総じて面倒な魔物という評価ね。こいつが何体いるか知らないけど、思っている以上に攻略は大変だと思う。普通の探索者ならギブアップしそうよ」
「特に圧し掛かりが厄介極まりない。あの重量でやられたら間違いなく死ぬし、結構な大きさだから被害が相当出る。かといって普通の連中じゃ、人数かけないと厳しいだろうさ」
「人数を掛ければ逃げ場がなく押し潰され、距離をとると雪の連射で埋もれる恐れが高い。どっちにしても厭らしい魔物ね。雪を作るだけじゃなく、純粋な自分の重さとか雪の重量で攻撃してくるなんて」
「それが1階に1体、3階に1体、そして9階に複数居るのよ。そう簡単に突破させてくれない感じだけど、私達なら<ユキフラシ>に苦戦しないから大丈夫でしょ」
「最初の時はミク殿が【獄炎嵐】を使った所為で、<ユキフラシ>は炭化したそうです。それに辺り一面の雪が無くなっており、灼熱の嵐が吹き荒れた後でした」
「「「………」」」
何やってんだコイツ? という顔でミクを見るシャル達。あの時は「イラッ」ときていたミクが、衝動と共にブッ放した所為でああなったのだ。階段の位置が分からず彷徨ったうえでの結果である。
それでもやり過ぎなのだが、今さら言っても意味は無く、ミクもスルーして流した。




