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0338・引率終了




 ボス部屋の奥にある脱出の魔法陣から参加者を出していく。シャル達は最後だがミク達は既に外へ出ており、達観したような目で脱出していく者達を見て呆れているイリュ。全員を出した後に溜息を吐く。



 「折り合いをつけるのは構わないけど、覇気が無いのは何とも言えないわね。参加者を生き残らせないといけないから仕方ないんだけど、それでも圧倒的実力を見せつけなくてもいいと思うわ」


 「仕方ないわよ。アレが一番手っ取り早いし、自分とは違うって思うのも勝手と言えば勝手よ? 探索者を諦めて故郷に帰るとか言い出さないだけマシでしょ。そうなってたら、ラーディオンが五月蝿かった筈」


 「良い悪いは別にして、あそこまで圧倒的だと折り合いをつけるしかないからねえ。他に方法が無い以上はああなるさ。一部おかしな奴が居たけど、おおむね問題ないんじゃないかい? そもそも天才だって出てくるんだし」


 「天才じゃなくて怪物なのが何とも……。人間種の範疇はんちゅうにないからね、下手に折り合いをつけられても……と思わなくはないのよねえ。そもそも、あんなの絶対に届かないし」


 「でもアレッサやティアも同じ事してる以上、折り合いをつけるのは致し方ないわよ。エクスダート鋼の材料を取ってきてくれれば良いんだし、それ以上は私達が気にする事じゃないわ。それより、そろそろ出ましょう」



 カルティクの言葉で脱出していく3人。イリュとしては、もうちょっと上を目指そうとしても良かったのではないかという思いがあるようだが、折り合いをつける者は結局どこかで折り合いをつけるのだ。


 それが今であろうが後であろうが、然程の違いは無かったりする。折り合いをつける者というのは、結局どこかで頭打ちになる者なのだ。これはどんな事でもそうなのだから仕方がない。


 3人が外に出るとミク達が待っており、6人はそのまま探索者ギルドへと歩いて行く。今回である程度の者達を連れて行く事が出来たが、そこまで人数も多くない。まだまだ足りないと言われそうな気もしている。


 探索者ギルドに着き、中に入って受付嬢に話す。すると既に戻ってきていた者達が報告していたらしく、ミク達は1人小銀貨3枚が支払われた。第4エリアの引率と攻略と考えると安い気もするが、ギルドの仕事なので仕方ない。


 そう諦めてさっさと受け取ると帰るのだった。周りから色々と見られている事もあり、面倒臭かったとも言える。帰り道でその事を話すと、カルティクが理由を話してくれた。



 「毎年そうなんだけど、闘技大会の後には新人というか他国からやってくる者が増えるのよ。正確には闘技大会に合わせて来て、そのままゴールダームに居つくって感じかしら」


 「で、そいつらの中から裏組織に流れたり闇ギルドに流れたりするのが出るわけ。それがまた腹立たしいんだけど、今年からはそこまでの腹立たしさは無いわね。この数ヶ月で崩壊してるから」


 「そうね。裏の勢力図はガタガタで、当分の間は元に戻る事はないでしょ。もしくは新たな形に変わるかも。ある意味で注意しなきゃいけないけど、上手くやればコントロールしやすくなるかもしれない」


 「話は変わるんだけど、ミクは他の国の闇ギルドとかは喰わないのかい。有名どころはエルフィンとドワンぐらいだろう? ゴールダームの闇ギルドは喰われてるけど、他の国のは殆ど聞かないからねえ」


 「面倒臭いというのもあるけど、一番は何故か関わりが無かったってトコかな? 何より焦る必要が無いし、まだまだこれから十分に喰える機会はあるだろうしね」


 「まあ、そうね。他の国に無理して行く事もないし、闇ギルドだけがミクのターゲットという訳でもない。クソみたいな奴という意味では、ゴールダームにもまだ沢山居るわ」


 「何処の国にだって、そんな連中は沢山居るさ。本来ならそういう連中も抱えるしかないんだけど、ミクが居れば消してくれるからね。そういう意味では助かるよ。ある意味で天災みたいなものだし」


 「クソみたいな奴等だけ消し去ってくれる天災っていうのも凄いけどね。とはいえ、今までと違ってありがたい天災よ。来たってまともな者は誰も損しない。クソみたいな連中だけが損をするんだもの」


 「散々悩まされてきた側からすれば、まるで恵みの雨の如きものだね。ま、私は悩まされる立場そのものが無くなったから気楽だけど」


 「代わりに情報収集をさせられてるじゃない。とはいえ女将軍の地位に比べれば気楽でしょうけど」


 「そりゃねえ。気楽どころじゃないさ。そういえばフィグレイオの情報はどうなってるんだい?」


 「それは戻ってからね」



 夕方には少し早いものの、<妖精の洞>に戻ってきたミク達は食堂へ。適当に座って水を頼み、運ばれてきた水にハチミツを溶かして飲む。後は適当に摘む物を注文して、面倒になったミクは小銀貨1枚で支払いを終えた。


 皆も適当にハチミツを溶かして飲みつつ、摘みながら話を始める。ちなみにセリオはミクから干し肉を貰っているようだ。どうやら摘むにしても肉が良いらしい。ミク達が注文したのは炒った豆などであり、食べ応えが無いのだろう。



 「現在のフィグレイオは、ようやく新しい宰相と将軍が決まったみたいね。私は知らないけど、元内務卿が宰相に、近衛の副隊長が将軍に抜擢されたそうよ。反発が無かったらしいんだけど、妙な感じね?」


 「元内務卿って事はオールドム侯爵かい。まあ、順当っちゃ順当か。そこまで悪い事もしてない奴だよ。もちろん貴族であるからには裏で色々としてるけど、本質的には悪人じゃない」


 「ふーん……じゃあ、近衛の副隊長は? イリュディナは反発が無いので変って感じだけど」


 「基本的には何処の国もそうだけど、軍と近衛は仲が良くない。軍は多くの人員を動かさなきゃいけないし、統率もしなきゃいけない。近衛は少数精鋭だ。一応近衛が上に置かれてるけど、近衛は大人数の統率経験が無いんだよ」


 「成る程ね。軍隊のような何千人もの数を統率できるのか疑問がある訳か。嫉妬とかも無い訳じゃないんでしょうけど、一番は変な奴等に指揮権を持たれて死んでこいと命じられると困るって事でしょ?」


 「その通りさ。軍としちゃ近衛の連中は優秀かもしれないけど、それは少人数で優秀なだけだ。大人数での戦闘というのは全く違うもんだよ。戦争では基本、上の者の思い通りになんてならない。なる訳がないんだ」


 「多くの者が居れば、それだけ足並みを揃えるのも難しい。となると、目指すはベストではなくベターとなる。訓練ではベストを目指しても、実際の戦争でベストなんて不可能。それを目指すと絶対に失敗する」


 「完璧な作戦なんてないし、完璧な成功なんて無い。もしあったら最悪だ。バカな奴がそれを目指して必ず失敗する、これは昔からよくある事なんだよ。何が起きても対処出来るようにする。となると、ある程度は余裕のある状況を作るしかない」


 「ああ、余裕のある状況というのは、言い換えればベストを尽くしていません。代わりに大負けもしない形ですか……」


 「そうさ。軍を扱う場合にはそれが必要なんだ。ベストを目指す奴は戦争というものを何も理解していない。何が起こるか分からないのが戦争だ。どれだけ準備していても、どれだけ訓練をしていても、ベストは目指しちゃいけないのさ」


 「それで失敗したら引っ繰り返されるものね。そんな危険は冒せないでしょ。兵の命も国民の命よ。戦って散るのは仕方ないにしても、無駄使いしていい訳じゃない」


 「まったくもってその通りなんだけど、バカには分からないんだよ」



 他人の命より自分の手柄。古今東西、そういう指揮官は溢れている。


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