0337・昼食
『干し肉はいつ食べても美味しいね。海老の身とか蟹の身でもいいけど、やっぱり食べるならお肉だよねー』
「まあ、美味しいと思える物なら何でも良いんじゃない? セリオは干し肉が好きだけど、どちらかというと硬いのをモグモグするのが好きって感じよね。普通に食事もするのに」
「ですね。いつも食堂で私達と同じ物を食べてますが、後で干し肉をミク殿に強請ったりしてますから。でも、あの体の大きさに比べれば小食ですので、それぐらいは良いのだと思いますよ?」
この辺りの話はミク達というよりは周りに対してだ。既に知っている事だが周りの連中は何も知らないので、ある程度の情報を出して沈静化を計っている。そして堂々とやって来るレレア。
『モグモグモグモグ………あれ? この手はやっぱりおねーちゃんか。また来たの?』
「うん。また来た」
そういって撫でているレレアはご満悦であり、ひたすらに撫でている。そして、それを見て集まってくる他の女性達。やはり男性陣は集まらないが、女性陣は集まって撫でている。中には竜人の妹も鱗人の女性もいた。
近付いても暴れない大人しい魔物。それどころか意思疎通すら可能なのだから、愛玩動物と変わらない感じなのだろう。この星では愛玩動物が少数なのだから仕方ない。撫でられているセリオも気にしていないぐらいだし。
そうやって人気のセリオが撫で撫でされる休憩も終わり、その後も歩いて進んで行く。魔物は無視して構わないので参加者は楽だが、それでも歩くのは自分の足であり、当然ながら疲労は蓄積する。
とはいえ、それでも魔物と戦う事が無い分、早いペースで進んでこれているのだろう。オドーなどはいつもより早く疲れなくて助かると言っているし、彼のチームメンバーも頷いている。
<大地の剣>や竜人のチームも大丈夫だが、それ以外のチームは思っているより体力が無い。これでは実力不足と言わざるを得ない部分はある。第3エリアをクリアしてきた筈なのだが……。
ミク達は8階への階段で昼食にする事にした。昼でここだと時間的には十分だろう。夕方までには帰れるし、それで今日の引率は終わりである。ミク達としても、もう少しというところだ。
「今日は食べなきゃいけない大麦パンの残りと各種干し肉にチーズモドキだね。それとハチミツ」
『塗って! 僕たっぷりと塗ってほしい!!』
「ゲッ! 大丈夫なの、セリオ? あれは異常な甘さをしてるのに、たっぷり塗ったら悶絶するわよ?」
『えー? 前に食べた時も美味しかったし大丈夫だよ。ちゃんと食べるし、残すなんていう勿体ない事はしないんだから』
「まあ、前も大丈夫でしたから平気なんでしょう。ミク殿やイリュディナ殿も大丈夫なんですから、きっと大丈夫です」
「バケモノ2人と一緒にするのもどうかと思うけど? さす、あいたっ!?」
「石が飛んできたみたいですね。余計な事を言ったからでしょうけど、魔法じゃなくて良かったです。魔法だったなら周りに被害が出るところでした」
「流石のイリュも、そこまではしないと思うけどね。っていうより、石をピンポイントでぶつけられる方が腹立たしい気もするし」
「何だかバカにされているような感じですか? あるいは嫌がらせ的な?」
「どっちかって言わなくても、嫌がらせ的なものでしょうよ。あの3人は殿なんだし、最後尾って事は上だから狙いやすいんでしょ」
「まあ、上からですからね。射線さえ通っていれば狙いやすいでしょう」
上から石を投げられる一幕があったものの、昼食後はまたもや女性陣が集まり、セリオを撫でながら会話をしている。どうやら疲れを始めとするストレスの緩和みたいなものらしい。
ミクも適当に会話をしているが、怯えなくなったものの、やはりミクをチラチラ見てくる竜人族の妹の方。
「あの、流石に名前で呼んでもらえませんか? 名乗ったのに妹呼ばわりはちょっと……」
「そう? 今日初めて会ったのに名前呼びはどうかなって思ったんだけど、まあ本人が良いと言うなら名前で呼ぶよ。それで、何でチラチラ見てくるの?」
「ごめんなさい。やはり存在が大きいのでどうしても……。【気配察知】と【魔力察知】も持っているのですが、そちらでは特に何も無いので不思議だとも思ってました」
「ああ、となるとギリギリまで薄めないと無理っぽいね。………これなら大丈夫じゃない?」
「…………今度は存在を感じ取れなくなったのですが?」
「ありゃりゃ……。まあ、それでも感じられなくなったのなら問題ないね。そもそも存在って強さだと聞いたけど?」
「ええ。故郷にいる頃に色々と調べたのですが、どうも存在が大きいほど強いというのは分かっています。ですので見えない程に強いミクさんは、いったい何なのかと思ってしまいまして……」
「そうだったんだ。それにしても【存在看破】って多分だけどレアスキルよね? 言っても良かったの?」
「そこまで狙われたりするようなスキルでもありませんし、精々相手の強さが分かるくらいです。それに純粋な強さだけで、その人の技術がどれぐらいかは分かりません。あくまでも、その程度です」
「その方の本質的な強さと、培った技術は別という事ですか。まあ、当たり前と言いますか、それ以外には無理ですわよね。流石に全部を総合した強さなど、どう測るのかも分かりませんし」
「それは無理でしょうね。そもそもそれってスキルに寄らない強さだから余計に分からないだろうし、スキルだって使い熟せなければ大した意味は無いもの」
「食事も終わったし、休憩も十分にとれた。そろそろ出発したいんだが、いいかー?」
「構わないよ。それじゃあ、出発しようか?」
8階への階段で休憩していたが片付け、7階に上がってトイレを済ませたら、8階へと下りていく一行。更に先へと進んで行くのだが、今までと特に変わりもない為そのまま進み、ボス部屋前に到達。最後の休憩を行う。
十分な休憩をとり、しっかりと体力を回復したらボス戦へ。ツインヘッドフレイム5頭が出現するが、3頭はミク、アレッサ、ティアが一撃で倒し、残り2頭はセリオが撥ねた。
あっと言う間に5頭が死亡、奥の扉が開いて終了となる。何もする事が無かった参加者は本当に引率されただけで終わり、自分達を見つめ直す結果になったようだ。
目の前に圧倒的な者が居ると、諦めるか目標にするか、それとも折り合いをつけるかぐらいである。そして多数の者が折り合いをつけ、僅かな者が目標にする。諦める者は殆どいない。
その理由は、探索者が仕事だからだ。自分の弱さを知ろうとも仕事であり生活の為に狩りに出る為、大多数の者は圧倒的な者を天才だとする事で折り合いをつける。対抗心を燃やしたところで、どうにもならないからだ。
現に多くの参加者は達観したような目をしており、アレと自分達は違うのだと理解したのだろう。自分達が至れる領域というものが分かると、届かないのも分かってしまう。ちなみにオドーやリュウレンは普通である。
オドーはかつて目の前で相対したので身に沁みて分かっていて、リュウレンは【存在看破】で既に分かっていた。なので諦めも憧れも何も無い。むしろあそこまで強くて当たり前という感じである。
しかし、何故リュウハクの目がキラキラしているのだろうか? もしかして数少ない憧れる側に入ったのでは……。
せっかく引率も終わり後は帰るだけだというのに、若干嫌な予感がするミクであった。




