0336・第4エリア引率中
20名以上を連れてダンジョン前まで歩いて行く。一番前を歩いているのが何故かオドーなのは置いておくとして、他にも<大地の剣>などが居て少々驚くミク。こいつらも第5エリアに行きたいらしい。
「そりゃ行きたいわよ。やっぱり儲かる金額が違うみたいだし、お金を貯めて装備も良くしたいしね。それに私達じゃ、まだまだ足りてないのも分かったからさ」
「思っているよりも善戦できなかった。予想以上にゴールダームの探索者は強い」
「他人の戦い何て気にもしてなかったけど、全てにおいて一段上という形でした。まさか、本気で戦うとあそこまで差があるとは……」
「何故か男2人は悔しさが無いようね? 何かあった?」
「いえ。【身体強化】を教えていただいた時に、これが当たり前なら勝てないなと分かってましたので、そこまでの悔しさは無いです。全力で戦いましたけど、本戦に出られただけでも良かったですよ」
「だな。オレ達も【身体強化】を教えてもらって戦い方が変わっちまったしな。慣れない中でも善戦した方だと思うぜ? もっと詰めなきゃどうにもなんねーよ。むしろ問題なのは来年だ。来年も駄目なら、流石に悔しいだろうな」
「成る程。確かに<大地の剣>は、予選3日前に【身体強化】が使えるようになりましたからね。それまでとは戦い方を変えての参加です。それを考えると本戦に行っただけで十分ですか」
ダンジョンに行くまでの道で適当に雑談をしていると、竜人のチームが近付いてきた。妹の方は何やらミクを見て怯えているような気がするが、いったい何なのだろうか?。
「お話中のところ申し訳無い。自分は竜人族のリュウハクと申します。こちらは妹のリュウレン。そして鱗人族のタイラン、リーシュン、メイファです。実は妹が貴女にお聞きしたい事があるようで……」
そう言って、リュウハクはミクの方を向く。何故か怯えている妹は、ミクに聞きたい事があるらしい。訳が分からないものの、ミクは了承して妹の方に向く。すると「ビクッ」としたものの、意を決してミクに聞く。
「いきなりこんな事を聞いていいのか分かりませんが、貴女は………貴女はいったいなんですか?」
「は?」
「私は【存在看破】というスキルを持っています。これは対象の方の力の大きさを示すものなのですが………貴女の力は桁違いに大きすぎるのです。それは空を覆うが如く、大地を叩き割るが如きもの。どう考えてもおかしい」
「妹が持つ【存在看破】は、簡単に言うと相手の強さを見破れるものと考えて下さい。妹いわく、その者からオーラのように出ているもので判別できるそうです。大きくなると、その人を覆うような玉のように見えるらしいのですが……」
「貴女の力は大きすぎて見えません。この【存在看破】は1人1人にしか使えないのでいいのですが、貴女を調べると私の目が貴女の光で覆われてしまい、何も見えなくなってしまうのです。こんな事は今まで1度もありませんでした」
「だからミクに聞いたわけね、貴女は何ですか? と。ただ、必ず答えてくれる訳ではないでしょう。それでも聞きたいの?」
「はい、私の「おーい! そろそろ突入するぞ!!」スキルが……」
オドーが第4エリアへのショートカット魔法陣に入る声掛けを行ったので、話が中断し第4エリアへと突入する参加者。ミク達も入っていき、全員が居る事を確認したら出発。ミク達は前を歩く事となったので、竜人達とは離れる事に。
最前列にミク、右後ろにアレッサ、左後ろにティア。いつもの三角形の布陣なのだが、セリオが突然離れて大きくなり、一気に混乱する参加者達。
「静かに!! あれはセリオと言って私達の仲間だから気にしない! ワイズライノで、大きくなったり小さくなったり出来るのよ」
「いやいや。大きくなったり小さくなったり出来るって言われても、意味が分からねえ。普通はそんな事が出来る訳がねえんだよ」
「普通は出来なくても、目の前で出来てるでしょうが! なら信じるしかないのは当たり前でしょうに。何いってんの?」
「ちょーっと待ってくれ。幾らなん『早く行こーよ! 話してても時間の無駄だよ?』でもお……」
「「「「「「「「「「喋ったーーーー!?!!?!!?」」」」」」」」」」
大騒ぎになって大混乱状態だが、ミクが【陽炎の身体強化】をすると全員が一斉に黙る。
「お前達はいちいち騒ぎすぎ。セリオは【念送】のスキルに近い事ができ、意思を伝えられる。それと体を大きくしたり小さくしたり出来る、それだけ。大事なのはお前達が納得するかではなく、現実を認識する事だ。騒いだところで意味は無い、さっさと受け入れろ」
それだけを言い、ミクは出発していく。セリオもミクの横をトコトコとついていき、アレッサもティアも歩いて行く。そして後ろからシャル達に「早く行け!」と言われ、ようやく参加者は歩き始めた。
かなり強引な方法ではあったが、どのみち受け入れるしかないのだから時間の無駄ではある。なのでミクの強引さも、そこまで間違ってはいない。ああしないと、いつまで経っても喚いていた可能性もあるのだ。
歩いて進んで行くのは良いのだが、ペースは随分と落としている。いつものミク達の速度には到底ついてこれないからだ。なのでゆっくりと進んでいるのだが、それだけに魔物に狙われやすい。
『どーん!!』
セリオが突然走りだし、前の方に居て鼻息が荒かったランサーブルを吹き飛ばす。当たる少し前に【身体強化】をして当たっている為、ランサーブルですら空中を吹っ飛んでいるのだ。
落ちてきて「ドゴッ」という音を響かせると、その後はピクリともしない。完全に一撃で死んでおり、それを見た参加者の顔は引き攣っていた。ランサーブルよりも怖ろしい生き物が近くに居るからだ。
とはいえ意志の疎通が出来る相手を怖がる理由もなく、徐々にだが落ち着いてきた参加者達。
ミクがウォーハンマーでロックリザードを叩き潰したり、アレッサがウォーアックスでグリーントータスを叩き割ったり、ティアが薙刀でランサーブルを半裂きにするのにも見慣れたようだ。
後ろではシャルがランサーブルを切り裂いたり、カルティクがロックリザードの首をカウンターで落としたり、イリュが適当に燃やし尽くしたりしており、段々と参加者も麻痺してきたらしい。
その間にもセリオが正面からのタックルでロックリザードを吹っ飛ばしたり、グリーントータスに噛み付いて振り回したり、ランサーブルの首下に角を差し込み投げ飛ばしたりしても、特に驚かなくなっていた。
やっている事がメチャクチャだし暴れているだけなのだが、自分達の実力では物を言う資格も無いと思ったのだろう。参加者の全員が大人しく歩いている。
第4エリアという、今まで多くの者を阻んできた場所の魔物が、ザコの如くあしらわれているのだ。それを見ていれば嫌でも理解できるだろう。格が違うのだと。
そんな諦観のようなものを育みつつの4階。流石に疲れが出てきたらしいので一旦休憩となった。ミク達なら休憩には早すぎるのであり得ないが、体力の少ない奴が居るので仕方がないとも言える。
4階への階段で休憩と決めて止まり、階段に座って休んでいると、セリオが小さくなって近付いてきた。どうやら干し肉が欲しいらしく、ミクに求めている。
ミクはアイテムバッグから干し肉を取り出すと、セリオを膝に乗せて食べさせていく。周りからの視線を完全にスルーしながら。




