0335・引率
朝食も終わり、話を止めてギルドへと出発する6人。ダラダラと進みつつ探索者ギルドに到着した6人は、中に入り受付嬢にラーディオンに会えるかを聞く。受付嬢はすぐに2階へと行き戻ってくると、問題ないとの事で2階へと上がる。
ギルドマスターの部屋に入ると、6人は早速アイテムバッグの話を始めた。
「小坊主、エクスダート鋼の材料で困ってるんでしょう? 話を聞く気はあるかしら?」
「とりあえず内容によるとしか言えん。流石に何も聞かずには承諾しかねる」
「まあ、それもそうね。私というよりもミクからだけど、信用できる探索者にアイテムバッグを貸し出して、それに獲物を詰めて帰ってくるという事をやってみない? もちろん貸出料は取るのよ」
「金を取るのは当たり前だからアレとして、そのアイテムバッグは何処から用意すりゃいいんだ? 流石にあんな高価な物を用意するなんてのは簡単な話じゃないんだがな」
「それに関してはミクがとっておきの方法を探し出してくれたわ。なんと、第3エリアでゴブリンを100体倒すと、大きなゴブリンが出てくるんですって」
「いや、数はともかくとして、大きなゴブリンが出てくるのは知られてる事なんだが……?」
「それを5回、500体のゴブリンと5体の大きなゴブリンを倒すと、ゴブリンキングが現れるそうよ? コレを倒すとアイテムバッグが空から降ってくるんですって。報酬みたいなものね」
「………」
「固まったわね。まあ、信じられないのも分からなくはないけど、ミクが調べたから事実なのよ。それともアイテムバッグが手に入る事に驚いているのかしら?」
「多分そうじゃない? 今までなら落ちているアイテムバッグを拾うしかなかったんだし、可能性としては高くないもの。しかも、いつ手に入るか分からなかった。ゴブリンキングを倒せばいいだけなら、可能性は高くなったと言えるでしょ」
「でも、普通の探索者がゴブリンキングに勝てるとは思わないし、それまで1人で殺し続けるのも無理じゃない? ゴブリンキングを1人で倒す必要は無いんだろうけど、それでも1日がかりになると思う」
「それは仕方ないだろう。それでも1日の儲けとしちゃデカいけどね? アイテムバッグ1つで結構な値がするし、ゴブリンキングが倒せりゃ自慢にもなる。一生安泰とはいかないけど、20年は普通に暮らせるだろうさ」
「まあ、贅沢しなきゃ20年は暮らせるんじゃない? 実際、日々の暮らしで贅沢しなければ、そこまでお金なんて使わないしね。アイテムバッグを手に入れるのに、どれだけの人員を使うかにもよるんじゃないかしら?」
「確かにそうかも。人数が多すぎたら分配で揉めるだろうし、最初からゴブリンキングなんて御免だって言う人も多いだろうだしね。実際には戦わない方が良いとは思うけど……」
「そう簡単には勝てませんよ。ミク殿だからこそ、500体もゴブリンキングもあっさり倒せるのであって、普通の探索者にはどちらも無理でしょう。そもそもゴブリンキング自体、伝わっている話の中の存在でしかありません」
「ま、王女様の言う通り、そもそもゴブリンキングを見た事がある奴は今の時代にはいねえ。だから本当にゴブリンキングかは分かんねえが、そう思えるぐらいに強い奴って事か……」
「【身体強化】をしてくるうえ、ミクが殴られて飛んだそうよ? それがゴブリンキングでないとでも?」
「……マジかよ。お前さんがブッ飛ばされるって、そりゃゴブリンキングだわ。そもそも魔物が【身体強化】するだけでも反則だっつーのに、最強がブッ飛ばされるってなんだなんだよ。意味が分からん」
「一応言っておくと、敢えて受けたんだけどね。それでもこの分体を飛ばす程度の力はあったよ。立ち上がったらまた殴りに来たんで、触手で捕まえて首から上を喰ったけどね」
「あー、うん。やっぱ、お前さんは最強だわ」
周囲で5人も「うんうん」と頷いているので、同じ思いを持っているのだろう。ゴブリンキングがあっさりと倒されるレベル、もしくは歯牙にもかけない強さなのだ。最強の名は伊達ではないと言ったところであろう。
ミクはラーディオンに小型のアイテムバッグを2つ渡し、信用できる者に渡すように言う。受け取ったラーディオンは、とりあえず自分で持っておくようだ。
「おっと、今日の話をしておかないとな。今日は志願者を連れて第4エリアを突破してほしいんだが、ギリギリで第4エリアに到達した奴等が居る。そいつらの事は気にかけてやってくれ。竜人族のチームだ」
「ああ、あのチームね。竜人族に鱗人族の混成の子達が居るのよ。私も昨日偶然に見たんだけど、どうもグランセンドの西にある<竜頭山脈>からやってきたみたい。遠い所からよくここまで来るものよねえ」
「あんまり都会慣れっつーか、人慣れしてないんだよ。ただし実力は十分でな。だからこそ変な奴等に騙されねえようにしてほしい訳だ。まあ、何となく【悪意感知】を持ってそうな感じだけどな」
「へー、何となく探ったら分かりそうね。シャルが探るのが一番早いだろうけど」
「あたしの【精神看破】を当てにされても困るんだけどねえ。まあ、あたしとアレッサが見れば分かるとは思う。でもスキルも絶対じゃない部分があるし……あんまり見ると警戒させちまうよ?」
「そりゃ困るな。悪いところは見当たらねー奴等だ、できれば長くゴールダームに居てもらいたい。竜人は300年、鱗人でも200年は生きるからなあ」
「何名のチームで、どういうバランス?」
「確か竜人の兄弟がタンクとスカウトで、鱗人の3人がアタッカーとマジシャンだったと思う。竜人の妹がスカウトみたいな感じだったわ。結構こっちを調べてたっぽいから」
「まあ、あんたの場合は調べられても流すからだろ? あっさり流せば余計にスカウトは調べようとするだろうよ。とはいえ、気取られてる以上はまだまだみたいだけど」
「流石に<影刃>と呼ばれてるもんが相手じゃ、格上過ぎるだろうよ。あいつら若い連中のチームだから、尚の事ワシは心配なんだよ。良い奴等ほど早死にす「コンコン」るのが探索者だ。っと、入れ!」
「失礼します。ギルマス、全員が集まりました。皆さんも下りてきて下さい」
「了解よ。さーて、下っ端達のお守を始めましょうか?」
「お手柔らかにしてやってくれ。バカはどうでもいいが、将来の芽は摘まないでくれると助かる」
「そんな事はしないわよ。ちょっと私に逆らえないようにするだけね」
「出会った瞬間、下半身から全部漏らすようにはしないでね? 150年ぐらい前にやらかしたでしょ?」
「~~~~♪」
どうやら盛大なトラウマを植えつけた事があるらしいイリュ。何をしたかは知らないが、会っただけで漏らすというのは相当の何かをやったのであろう。
本人は聞こえないフリをしているが、ラーディオンは気が気ではなかったりする。内心で「頼むから、おかしな事にはならんでくれよ!」と祈りながら歩く。
1階に着くと既に多くの者が集まっており、ザワザワと騒がしかった。が、ラーディオンが一喝するとすぐに静まる。
「今日、お前達を連れて第4エリアを攻略してくれるチームだ。お前達は連れて行ってもらう側だという事を忘れるな! 自分の命を守るのは自分自身だ。自己責任である以上、下らん事をすると見捨てられるぞ。いいな!」
ラーディオンの言葉に顔が引き締まる参加者達。そもそも自力で突破出来ないから集まっているのだ。攻略できるなら集まったりなどはしない。
なので引率者を怒らせるのは死に繋がると理解しているようである。




