0334・ゴブリンキング?の話
朝。それなりに魔道具を動かしていたからか、部屋の中は冷えており涼しい。別に体が冷えすぎるほど寒い訳でもなければ、大して効果が無いという訳でもない。上手くちょうど良い室温になっているなと思いつつ、皆が起きるまで待つ。
それにしても、あの仮称ゴブリンキングを倒せばアイテムバッグが手に入るなら、色々な探索者が取りに行くだろう。それを公にして良いか迷うミク。
(私か私達だけ知ってる方が都合が良い気もするんだけど、1度目が大型で2度目が小型。もしかしたら2回で終わりなのかな? それともランダム? 2回じゃ分からないし、要検証ってトコだね)
そんな事を考えてるとセリオが起きたので挨拶し、遊びで押してきたので掌で押し返して遊んでやる。またもや押し返してはコロンと転がされつつ、楽しそうに遊んでいるとアレッサとティアが起きた。
「おはよー……っていうか部屋が涼しい。寒くはないしちょうど良い感じかな? 使ってるって事はもしかして……」
「おはよう。完成したから試運転中? ただワイバーンの骨で作ったからね、白色しか出来なかったんだよ。だから台座に書いておいた」
「おはようございます。………台座に<冷たい>って書いてありますね。という事は、これが冷える方ですか?」
「そう。流石に見た目が同じだと、どっちか分からなくなるでしょ? だから書いておいたんだけど、分かりにくい?」
「いえ、そんな事はないと思います。それで、オリジナルの方は陛下にお渡しするという事で良いですか?」
「そりゃ複製があるから構わないよ。ただし、複製の作り方までは渡さない。それはそっちでやってもらわないと困るからね。私は神どもに教えられてるし、この国が何処までの知識と技術を持ってるか知らないからさ。迂闊に教えられないんだよ」
「でしょうね。流石に神様から教わった知識を寄越せとは言わないでしょ。それ言ったら神罰が落ちるか、全面戦争の可能性もあるんだし」
「私もそれは無いと思いますし、陛下にも『お腹すいたー』お伝えしておきます。っと、そろそろ食堂に行きましょうか」
準備が整った後、部屋を出て食堂に移動し注文。大銅貨12枚を支払って待つと、シャル達がやってきた。今日の引率にも来ると言っていたので、おそらくは一緒にギルドへと行くのだろう。
「おはよう。今日は引率だけど、おかしな事を言い出すバカとかを抑える為に私も行くわ。あの小坊主が選んでる筈だから、そこまでおかしいのは居ないでしょうけどね」
「おはよう。第5エリアでエクスダート鋼の材料を得るのは良いんだけど、物を運ぶ事って出来るの? 昨日言ってたみたいに、荷車じゃ大変だと思うんだけど……」
「おはよう。でも昨日、それしかないって話しただろ? 他に何か良い方法でもあるのかい?」
「おはよう。別にそれぞれが苦労すれば良いと思うわよ。それもまた探索者の生き方だしね」
「それは良いんだけど、昨日信用出来るヤツがアイテムバッグ持って、っていう話をしてたじゃない? で、昨夜アイテムバッグを手に入れたんだけど……」
「「「「「また?」」」」」
一斉に全員がミクを見るも、ミクは言われても困るとスルーした。そしてその時に球体の魔道具を思い出す。アイテムバッグから取り出したミクは、ついでに麻袋に入ったゴブリンの魔石も渡していく。
「その球体の魔道具が室内を暖めたり冷やしたりする魔道具。第7エリアの8階で手に入れたんだけど、ティアが国に渡したいって言うんで複製を作ったの。で、蓋を開けて魔石を入れると動くから」
「へー。段々と暑くなってくる季節だし、部屋が涼しくなるなら助かるよ。なんだか魔石もいっぱいあるけど、随分と綺麗な魔石だね?」
「それゴブリンの魔石。昨日の夜に第3エリアへ行って大量に狩ってきたの。その時にカルティクが言ってた大型のゴブリンが出てきてさ、そいつも殺しまくってたらゴブリンキングっぽいのも出てきたよ」
「「「「「えぇっ!?」」」」」
ゴブリンキングという言葉に驚く5人。料理を運んできた店員も驚いているが、そこまで驚くような事なのだろうか? オークキングが話として上るが、ゴブリンキングの話題は殆ど聞かないのでイマイチ分からないミク。
「ミクは分かっていないみたいだけど、オークキングが有名なだけでゴブリンキングも、ってちょっと待って。ミク、そのゴブリンキングっぽいヤツって【身体強化】を使った?」
「使って殴ってきたけど? 最初は思っているより強いパワーだったから飛ばされたけど、次は踏み止まって首から上を喰ってやったよ。それで終わり」
「それはまあ、そうでしょうけどね。とはいえ【身体強化】をしてきたって事は、間違いなくゴブリンキングね。コボルトキングもオークキングも【身体強化】を使うのよ。だからスキル持ちが挑まないと勝てないの」
「魔物の身体能力で【身体強化】を使われるとヤバいからね。戦闘スキル持ちが戦わないと対抗できないんだよ。ま、今はミクが居るから余裕で勝てるだろうけどさ」
「それよりも、問題はゴブリンキングを倒した後。倒し終わってすぐ、上からアイテムバッグが落ちてきたんだよ。色々と考えてみたんだけど、ゴブリンキングを倒した報酬っぽいんだよね」
「………それが本当なら、アイテムバッグは無限に手に入れられる?」
「町中にアイテムバッグが溢れる? って事はないね。ゴブリンキングが相手だと、大多数の探索者は殺されちまうよ。いったいどれだけのゴブリンを殺したのか知らないけどさ、ゴブリンキングが出てくる程なら凄まじい数を殺したんだろ?」
「大きなゴブリンが出てくるまでに倒したゴブリンは100。そしてゴブリンキングは大型を5体倒すと出てきたから、多分500だね。それもおそらく個人で、だと思う」
「自力でゴブリン100体は厳しいわね。復讐している奴等ぐらいしか出せない筈よ。そのうえゴブリンキングは自力で500体。とてもじゃないけど、そこまで体力が保たないでしょ」
「そうだね。そもそも出せるヤツが限られる以上、アイテムバッグを手に入れるのは難しいと言わざるを得ないね。ミクが良いならギルドに預けて貸し出しにするかい?」
「まあ、それでも良いけど、誰か大型のアイテムバッグを使う? 別に交換しても問題ないと思うし、小さいのよりは大きい方が良いでしょ。容量も多いしさ」
「使うならシャルじゃないの? だってシャルとティアだけ小型でしょ。幾らでも出せる可能性があるんだし、遠慮しなくてもいいんじゃない? ついでに神様が変えたヤツじゃないんだし」
「ミクさえ良ければ変えてもらえると助かるよ。流石に小型よりは大型の方が良いからね。神様から貰ったもんだから、ミクが持ってた方が良いと思うけど……」
「あいつらが気にしたりなんかしないよ。出元が分からないようにする為に変えただけだろうし、ラーディオンには何も言わずに渡すから気にする必要はないね。神どもは騒がれるのも面倒っていう感じだし」
「騒がれるのは面倒という気持ちは分かるけど、神様もそんなものなのね。……確かに面倒臭いのは、面倒臭いのよね」
「分かるよ。あたしも将軍の時はそう思ってたからね。今は個人になって気楽だけど」
「でしょうねえ。少なくとも国を左右しかねない将軍の地位は重いわよ。今のフィグレイオは、やっと自分の足で歩いてるって感じだもの。今まで如何に女将軍に甘えてたか、よく分かるでしょうよ」
1人の優秀な人物に頼ると、居なくなった時に大きく崩れる。それは歴史的にも証明されている事である。




