0331・第7エリア・9階まで
「それで話を戻すんだけど、さっき言ってた第4エリア攻略っていつから?」
「早けりゃ明後日じゃないかい? 出来るだけ急ぎたい感じだったからねえ。それぐらい必要なんだろうけど、輸出分が足りてないのかもしれない。今年はあたしが来てるし、ジャンダルコの姫も来たんだろう? 例年通りじゃ足りないのかも」
「そうでしょうね。夏前の時季にある程度テコ入れしておかないと、間に合わないと思ってるんじゃないかしら? エルフィンの事もあるし、今年は大変そうね」
「エクスダート鋼の事はともかく、エルフィンの方は完全にミクの所為だけどね。それでもエルフィンが荒れると、他の国もエクスダート鋼を要請してくる可能性はあるわ。買い付けに来るのも」
「となると、今年は探索者に出回らない可能性もありますわね。それはそれで探索者の底上げになりませんし、素材を得る実力も頭打ちになってしまうのでは? 腕も大事ですが、限度というものがありますし……」
「まあねえ。普通の鉄の武器でマッスルベアーやスチールディアーに勝てと言っても、流石に難しいっていうか無理でしょ。それ相応の武器はキチンと用意しなきゃ勝てないのよ、普通は」
「そういえばミクは鉄製の武器でワイバーンを倒したんだっけ? アレに比べればマッスルベアーやスチールディアーの方が楽でしょうね」
「とはいえ普通の探索者じゃ勝てないんだから、そこの意味は無いでしょ。要はエクスダート鋼の材料が集められれば良いんだし、それにはある程度の材質の武器が必要よ」
「最低でもドリュー鉄は必須かな? ウィリウム鋼まで行くと結構な値がするから買えない可能性もあるけど、ドリュー鉄ならそこまで高くない筈。もちろんジャンダルコに買いに行くならね」
「ゴールダームまで運んでくるのに費用が掛かるから、どうしても結構な値になるから仕方ないわ。それにウィリウム鋼は更に高いんだから、結局ドリュー鉄の方がマシね」
「そのドリュー鉄やウィリウム鋼を買うのに、マッスルベアーやスチールディアーを倒さないといけないんだけど?」
「そこはランサーブルやロックリザードで何とかしなさいって事でしょ? 高望みしたって始まらないんだし、とりあえず第5エリアまで連れて行けば良いんじゃない?」
「確かにそうね。そもそも後の事を考えてやる必要がないのだし、各々で好きにするでしょ」
「ま、全ては明日行ってOK出してからだね」
既に食堂にはミク達しか居らず、【灯り】の魔法を使って話していた。しかしセリオが眠りかけているので解散。それぞれの部屋へと戻って行く。
ミクは部屋に戻ったらすぐに触手で持ち上げて服を脱がし、【清潔】と【聖潔】を使ってから【浄滅】を使い、後は服を着せてベッドに寝かせていく。
セリオを寝かせるにしても綺麗にしてから寝かせたかったので、このような形になったのだ。しかし相変わらず文句一つ言わず任せっきりの2人。最早いつもの事でしかないらしい。
狐の毛皮を敷いてセリオを寝かせ、レティーも寝かせたらミクも寝転ぶ。後はいつものように瞑想の練習をしながら時間を潰すのだった。
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翌朝。日の出を30分ほど過ぎた後、2人は同時に近いタイミングで起きた。パッチリと目が開いており、やはり狐の毛皮の影響なのだろう。スッキリ起きられたようだ。
挨拶をして綺麗にし、毛皮を仕舞ったりなどの準備をしたら食堂へ。ティアがセリオを抱いて出たのでミクは最後尾で出る。
食堂で注文し、大銅貨12枚を支払ったらいつもの席へ。適当に時間を潰して待ち、運ばれてきたら食べていく。途中でシャル達が来たので挨拶し、食事が終わったら出発。まずは探索者ギルドヘ。
ギルドに着いたら中に入り、受付嬢に昨日シャルから聞いた事のOKをラーディオンに伝えて貰う。その言伝が終わったら<妖精の洞>へと戻り、防寒具を着て準備が出来たらダンジョンへ。
第7エリアに入ると未だに<ユキフラシ>は復活していなかったので一気に走って行く。途中で昼食を食べつつ7階まで来たら、さっさと1度壊して左に乗り階段まで進む。今日は始めての8階だ。
8階は北に2つ南に2つ、そして東と西に1つずつとなっている。結局は1つずつ試していくしかないのだが、組み合わせが多くて腹立たしく、3人は何度も上の階に上りながらも試していく。
「1度も壊れなかったのは駄目、1度だけ壊れたのも駄目。ここからはミクの番ね、私達は上の階に居るわ。その方が良いでしょうし」
「2人は体力の事もあるから休んでていいよ。さっきの階と同じなら、どれかを1つ壊した後だろうけどね」
アレッサとティアとセリオは上の階層の階段で休むようなので、ミクは1人で氷を壊していく。そして東の氷が2度目で壊れた際、近くに魔力の反応を発見。そちらへピーバードで行くと、なにやら球体があった。
棒の先に青い球体が付いている物と、赤い球体が付いている物があり、どちらも台座に固定されている。台座の後ろには開けられる蓋があり、開けると中に何かを入れられるようであった。
試しに開けた場所に魔力を流すと、なにやら青い球体の近くが冷たくなっているのが分かる。となると……と思い、赤い球体の台座の蓋を開け、魔力を篭めると赤い球体の近くが熱くなったのだ。
ミクはその場で考えるものの、用途が1つしか思い浮かばなかった。それは室内を暖めたり冷やしたりする事だ。他の用途を思いつかないまま、とりあえず蓋を閉めてアイテムバッグに仕舞ったら入り口へと戻る。
再び氷を落としていくと、何と西の氷は2度壊されても崩れなかった。そしてそのまま氷の陸地に着くと、そこには階段が見える。まったくもって、ふざけているとしか思えない方法である。
散々2度壊れると落ちると思わせておいて、8階では2度壊されないと進めないとは。何とも言えない怒りが込み上げてくるものの、一旦9階へと下りて戻ろうとするミク。しかしついでに9階を見てみようと思い、チラリとだけ見る。
すると9階は猛吹雪の階層だった。それも1階や3階とは比べ物にならない猛吹雪である。間違いなく<ユキフラシ>が2体以上いるだろうと予想しつつ、7階にある8階への階段に戻った。
「おかえりー。突破できた? それとも分からずに戻ってきた?」
「いや、突破は出来たよ。ただ、9階を見に行ったら猛吹雪だった。それも1階や3階よりも猛吹雪。多分だけど<ユキフラシ>が2体以上いる。でないとあの量の吹雪にはならない」
「それはまた……そこまで面倒なのが9階なんですか。とはいえ9階の階段近くを探せば2本の棒が見つかるでしょうし、そこまで苦戦しませんかね?」
「それでも普通に倒すには骨が折れるわよ、セリオはやる気十分だけど」
『今度は僕も役に立つよ。あんな奴、僕が倒してやるんだから!』
「ま、とりあえず今日は終わりだから帰ろう。ここから帰るのにも氷の所為で無駄に時間が掛かるし。ある程度は急ぎたいところだね」
「そうね。脱出にも時間が掛かる……のは当然だけど、氷に乗る方がもしかして早い?」
「………どうなんでしょう? その可能性はあります。何だかんだと言って、浮いている氷は速いですからね」
自分達で走るより速いのかもしれない。そう思いながら氷に乗ってプカプカと進む。しかしそれは間違いで、氷の階層は何処も入り口の階段と次への階段が遠くないのだ。
ミクも自分の足で進んでいない為だいたいでしか把握しておらず、その所為でイマイチ分かっていないのだった。




