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0330・戻って雑談




 ダンジョンを脱出し、地上へと戻ってきたミク達。随分と苦労を含めて色々とあったものの、ようやく完全に解放され気分も楽になったようだ。そのまま<妖精の洞>へと戻り、部屋に戻ると防寒具を脱ぐ。


 暑さが和らぐまで部屋の中で過ごし、マシになったら食堂へ。注文をして大銅貨12枚を支払ったら、席に着いて適当に雑談を始めた。適当にと思っていたが、やはり口から出るのはダンジョンの愚痴である。



 「あの氷の階層は信じられない程に面倒臭いわね。冗談でも何でもなく、組み合わせとか考えたら、簡単に攻略出来るような場所じゃないわよ。幾ら何でもおかしいでしょ、アレ!」


 「ええ、本当にそう思います。アレはどう考えても嫌がらせの如きものでしょう。戻ってきては調べて、戻ってきては調べてを繰り返す事になりますし………。そういえば帰りに捨ててましたが、もしかして干し肉にしたのですか?」


 「したよ? 食べてみないと分からないしね。で、食べてみた結果だけど、思ってるより美味しいかな? そこまで美味しいって訳じゃないけど、脂肪が多い肉だからか良い感じだと思う。反面、腐りやすそうだけど」


 「脂肪って腐りやすいの?」


 「そもそも脂肪って乾燥し辛いし、雑菌が繁殖しやすいのよ。だから腐りやすいの。赤身の部分ならカッチカチに乾燥するんだけど、脂はねえ……。それでも【浄滅】を使ってから凍らせて、そのうえでアイテムバッグに仕舞えば大丈夫だろうけど」


 「まあ、それが気軽に出来る人はミクしかないから、干し肉にする場合は脂は除いた方が無難ね。それにしても皮がブヨブヨで大きかったけど、あのブヨブヨ具合が脂肪だったわけかー」


 「そう。見てると分かりやすいけど、あれだけハッキリ見えるって事は、大量に脂肪を蓄えてるって事。まあ、寒い場所の生き物ほど脂肪を蓄えるらしいけどね。脂肪って天然の防寒具だから」


 「へー、そうなんですね。だったら私達も脂肪を溜め込んだ方が暖かく過ごせるって事ですか?」


 「でも代わりに夏場が暑いんじゃない? 毎年、夏前に必死になって痩せなきゃいけなくなると思うけど……する?」


 「いや、それはちょっと……。それに、今はもう体型も変わりませんし」


 「あ、そういえばそうだった。もう体型って変わらないんだっけ。とはいえ脂肪を溜めこんで、どれだけ暖かくなるのかは知らないけど」


 「暖かくはなるだろうけど、代わりに物凄く動き辛くなるし、動きがトロくなるよ? まともに戦えなくなると思うけどね。デブの貴族と変わらない感じになるんじゃない?」


 「ウゲッ!? それは勘弁。あんな恥ずかしい体型にならないと暖かくならないなら、最初から太る気なんてないわ。あれはない」


 「ええ、流石に腐って肥え太った貴族のようになるのは止めておきなさい。何故そんな話をしているのかは知らないけど」



 シャル達3人が食堂にやってきたと思ったら、イリュだけがいつも通りこちらにやってきた。相変わらず注文をカルティクに任せているらしい。そのイリュはさっさと席に座り、こちらの話に加わる。



 「さっきの話は第7エリアに出てきた、大きな太った魔物の事よ。今日は第7エリアの7階まで行ったんだけど、5階から出てきた魔物がそれなのよ。代わりに他の魔物が出ないんだけどね」


 「一応、魚の魔物が居ますから、あの太った魔物だけとは限っていませんよ?」


 「ああ、あの魚が居たんだっけ? あの鋭い歯を持った危険なヤツ」


 『でも、アレ美味しくなさそうだったよ? やたらに噛みつきに来そうだったけど、身が少なそうな感じだったし』


 「確かにそうだったね。こっちを喰う気だけはやたらに強かったから、落ちてたら間違いなくあの魚に集られて食い尽くされると思う。まあ、私なら逆に食い尽くすんだけど」


 「そりゃね。ミクならそうして当然でしょうよ。それにしても、5階からの氷は本当に面倒だったわ」



 注文とお金を払うのが終わり、シャルとカルティクがイリュと同じテーブルの席に座り、話に加わってきた。どうやら聞こえていたらしく、内容は分かっているようだ。



 「氷? 雪じゃなかったのかい? さっきの話の流れからすると、5階からは氷に変わるのか……また厄介なエリアだねえ」


 「それだけじゃないのよ。入り口の階段近くは氷の大地で、そこの近くに大きな氷が浮いてるの。乗ると勝手に流れて行って、大きな太った魔物が勝手に乗ってきて壊すのよ」


 「ええ、本当に。ジャンプしてドーンと落ちると氷が割れて壊れてしまうのです。それが2度ある場所もありまして、2回目は乗っている氷が割れて、下の海に落ちてしまうんですよ?」


 「それでさっき魚の話をしてた訳ね。それにしても氷に乗って進むって事? それとも流れていく?」


 「流れていく感じね。何故かわたし達が乗るまで何もないのに、わたし達が乗ると進んで行くのよね。不思議と言えば不思議だけど、ダンジョン自体が不思議の塊でもあるし……微妙な感じかな?」


 「まあ、魔物が復活したりとか不思議な事も多いけどさ、氷が壊れたらどうなるんだい? それっきり?」


 「ううん。何故か上の階か下の階に移動すると元通りになってる。もしかしたら1チームずつ順番に進まなくちゃいけないのかもしれない、誰かが見てる間は元に戻らないのかも」


 「そうなると厄介ね。とはいえ第7エリアとなれば、そもそも行ける人が少ないから問題ないか。今も私達しか行けないしね。<竜の牙>と<鮮烈の色>は未だに第6エリアで止まっているわ」


 「止まってるって言うより、先に進もうとしてないが正しいね。ギルドマスターがエクスダート鋼の材料を優先させているみたいだって聞いたよ。<鮮烈の色>が増えたから人手が増えてるのかと思ったら、透明トカゲで全滅する奴等が出てるんだとさ」


 「それじゃあ、増えた人数が減ってるじゃない。結局意味なしっていうか、むしろマイナス?」


 「かもねえ。それで今日頼まれたのさ、ミク達に第4エリアで燻ってる連中を連れてってくれって。流石に減った分の人員を増やさないといけないからね。後、グランセンドの連中が仮面の人物を探してるらしいよ」


 「そうそう。何でも心当たりがないか聞いて回っているのが居るんだって。私もその話を聞いたから、たぶん間違い無いんじゃないかしら?」


 「仮に聞かれたら私だって言うから、別に聞かれても問題ないよ」


 「………ああ、そういう事かい。ミクが自分だって言ったら、むしろ信用しないだろうね。自ら名乗りを挙げるバカは他にも居るだろうし、そのバカに紛れちまえばいい」


 「狡猾ねえ。疑われるかもしれないけど、それは否定しても同じ。だったらワザと肯定すればいい。そして適当に答えれば向こうは勝手に違うと思い込む」


 「まあ、そうなるかは分からないけど、そうなる可能性は高いわね。前にミクやアレッサの出身地は分からなかったって言ってたけど、ゴールダームにはそんなの山ほど居るから今さらだし」


 「腐った夢の国には沢山の場所から集まるから、出身地なんて聞く奴は居ないでしょ。自分から名乗ったりしなければバレないし、そもそも言わなくても誰も気にしないし」


 「ほんと、そういう事を聞くのって何かを探ってる怪しい連中なのよねえ。自分達から怪しいですよと、バラしてどうするのかしら? だからグランセンドの連中だってバレてるのに」


 「その程度なんだから楽でいいんじゃないかい? まあ連中も織り込み済みだろうけどね」



 怪しい者だとバレてもいい情報収集とは何ぞや? と言ったところであろうか。


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