0323・無差別部門・終了
「続いて団体戦の決勝を行う! 両チームは試合会場へ出てくるように!!」
右の赤い方は今回も斧持ちチームであり、左の青い兜のチームが斧と短剣のチームらしい。どちらもそれなりに強いのだろうが、体力を消耗し過ぎている。休んでいたとはいえ、短時間で回復する疲れでもない。
「団体戦決勝………始め!!」
試合が始まった途端、両チームは弾かれたように接近する。もはや牽制し合うだけの体力が右のチームには無いのだろう。左のチームは疲弊させる作戦をとっていたチームであり、そこまで疲れていない。
しかし牽制し合うより近接戦闘の方が有利に立てると思ったのだろう、だから最初から突撃しているのだ。良いか悪いかは別にして、斧と短剣のチームは場の流れが読めているらしい。これは勝負あったと言えるだろう。
相手の出方が分かっていれば、その分だけ有利に立ち回れるものだ。読みが当たっていなければ不利になるが、当たっていれば有利に試合を運べる。そして結果こうなるのだ。
「試合終了!! 勝者は青兜チーム!!」
「「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」」」」」」
優勝チームが決まったので大きな歓声が送られている。ミクとしては当然の結果だとしか思えないので何とも言えないが、体力以外にも読みの時点で負けているので、そもそも赤兜の方は勝てる要素が無かった。
体力以外の差も大きかったので、試合内容としては歴然とした差がある。周りの貴族は分かっていないのが多いが、流石にティアを含めて全員理解しているようだ。
「それはね。幾らなんでも愚か者ではないんだし、上手く試合を運んでいた方が勝ったという単純な話よ。相手を倒す事で精一杯の側と、相手の行動を読んで対応している側。相当の差があったわね」
「まあ、戦争でいえば引っ繰り返せない程の差だよ。明らかに統率者がいなかったね、負けた側は。それでもこういう戦いなら勢いで押せる事もあるから何とも言えないけど、勝った側は作戦勝ちだった。それは間違い無い」
「あそこまで明確に差があるとアレだけど、普通はもっと接戦になるのにね。勢いだけのところが勝ち進んでしまった感じかしら。その結果、こんな決勝になったのかも」
「でもそれって、結局は勢いだけの連中に負けたのが不甲斐ないって事でしょ? 何の言い訳にもならないと思うけど?」
「それはそうよ。むしろ押し切られて負ける程度の地力しかなかったという事だもの。それではね? 私達が仮に出たら、問答無用でボコるじゃない? そこまでではなくとも地力は必要よ」
「確かに皆で出れば、地力で敵を叩き潰して終わりそうですわね。別に策を考える必要も無く、全員が好き勝手に動いて倒して、というのが簡単に想像できます」
「やはり、そうなるか。皆さんが出られなくて本当に良かった。それでは拮抗した試合にならず、賭けがどうなっていたか……」
「最後に残された個人戦の決勝を行う! 決勝はグルム対オルディアーラ! 双方は試合会場に出てくるように!!」
審判の声でグルムとオルディアーラが試合会場にやってきた。両者共に槍だが、どういう結果になるかは分からない。が、ミクは7対3でグルムの勝ちだと思っている。
ちなみに【槍神の一撃】を使えば確定でグルムの勝ちだとも思っている。【剣神の導き】とは効果が違うだろうが、スキル名から考えても一撃で決着がつく筈。そんな予想をしていた。
「個人戦決勝………始め!!」
始めの声が掛かったものの、両者一歩も動かず。その後、ゆっくりとにじり寄っていく2人。どちらも2メートル50センチの槍を使っているので、リーチの差も一切ない。あるのは純粋な技術の差と能力の差だけだ。
両者共に間合いに入った途端、グルムが突きを繰り出したものの、オルディアーラが払って不発に終わる。両者共に槍を戻し、再びグルムが突くもオルディアーラが弾く。しかし、グルムの手から槍は離れない。
オルディアーラが狙っているのは、武器を取り落とす事、もしくは態勢を崩させる事だ。なのでかなりの力で払っているのだが、それでもグルムは槍を落とす事も無ければ、態勢を崩す事も無い。
両者共に槍を戻し、再びグルムは突く。そしてオルディアーラが払う。その構図は続いていくが、圧倒的に不利なのはオルディアーラだ。払うのにも結構な力を使っており、突くのと上手く力を流しているグルムとは相当の差がある。
ガルツォ達もそれが分かっているのだろう。だから声援を送っているのだが、グルムの突きが速く、払う事に集中しなければ難しい。こういった部分も対人技術を磨いてきた側との差が出てしまう部分だ。
グルムが再び突くが、オルディアーラは【身体強化】をして払う。しかし、グルムもまた【身体強化】をして流す。これではジリ貧になると思ったのだろう、【身体強化】を使い続け、一気に槍を戻したら突き出したオルディアーラ。
しかしその突きは【身体強化】をしたグルムに弾かれ、態勢を崩したオルディアーラは首元に槍を突きつけられた。
「そこまで! 勝負あり!! 勝者はグルム!!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
最後の試合。他にもやりようはあったと思うが、そもそも地力というか対人戦の経験と技で負けているので、オルディアーラが勝つ可能性は低かった。何よりグルムは油断をしていなかったので、勝機は薄い。
それでも頑張ったのは事実なので、オルディアーラには笑顔があった。無差別の個人戦、優勝はグルムで終わったものの、ミクの出番はここからだ。優勝者は王太子より賞金などが贈られるが、その場で王が発表する。
ミクはベルとティアに呼ばれたので密かに動いて準備をしにいく。隠れられる場所に行き、仮面を着けて狼の毛皮を羽織る。そしてアイテムバッグとレティーを預けて試合前の控えの場所へと移動。
闘技大会の関係者は、いきなり来たミクに驚いている。しかし横にベルとティアが居るので、何かを聞く事も出来ないのであった。そして王太子の賞金授与などが進み、その時がやってきた。
「遥々グランセンドから来られて優勝とは恐れ入る。申し訳ないのだが、そなたがどれ程に強いのか、あと1試合だけ見させてもらいたい。もちろん優勝はそなたなので、賞金を含めて持って帰ってもらって構わぬ」
「もう1試合でしょうか?」
「そうだ。ゴールダームの王である我が知る、唯一無二である最強の人物との試合をな」
「最強?」
「うむ。………準備は出来ているようだな。では、出て来てもらおうか!!」
その声と共に、ミクは2メートルの木槍を持って試合場へと現れる。観客は白い仮面と狼の毛皮を纏った人物に驚くが、持っているのが木槍だというのにも驚いている様だ。
「私はあの者と戦えばいいのでしょうか?」
「うむ。彼の者からは神の名を冠するスキル、即ち【槍神の一撃】を使っても構わぬと聞いておる。そのうえで勝てぬ事を証明するともな」
「………分かりました」
明らかにミクに対して悪意を向けてきたが、ミクはどこ吹く風だ。態度からも明らかであり、適当な、良くいえば自然体で待っている。その事もグルムの心に怒りとなって現れた。
グルムは2メートル50センチの槍を受け取ると、試合場へと歩いていく。ミクは仮面越しに適当に見ているだけだ。覇気も無ければ、気合いも感じない態度。それに腹を立てながらも所定の位置につく。
「ではこれより腕試しの儀を始める。仮面の者とグルムの戦い………始め!!!」




