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0320・団体戦・準決勝 第一試合




 闘技大会が終わった後の腕試しに出る事になったミクは、ダンジョンに行けなくなった為、仕方なく闘技大会を見に行く事にした。話し合いは終わったのでティアとベルについていく形になり、王都を出て会場へ。


 当然6人で行動しているので目立つが、こればっかりは仕方がない。後で狼の毛皮も羽織るし、知り合いしか分からないだろう。そう思いながらもなるべく目立たないようにしているのは、印象に残らない為だ。


 ミクがそんな苦労をしていると、関係者席とおぼしき場所に案内されたので、そこの椅子に座る。野外なので大した椅子ではないが、それでも一般観覧のように地面に座るよりはマシである。


 近くに王も王太子も居るという事は、この席は本来貴族などが座る席なのでは? 面倒な絡みをしてくる奴が出てくる可能性があるなと思いつつ、周りの連中を調べていると、今日の第一試合の者達が出てきた。


 王が椅子から立ち上がり、この場の者達に言葉を述べる。



 「本日は優勝を決める最後の日である。皆の者が全力を尽くし、素晴らしい試合になる事を願っておる」



 王の言葉に拍手が巻き起こるが、ミクは適当に手を叩いているだけだ。実際、それはイリュもカルティクも変わらない。ティアぐらいである、ちゃんと拍手をしているのは。


 それぐらい適当な事をしていると拍手が止み、審判らしき者が試合を始める。



 「皆様、静粛に!! それでは団体戦、準決勝第一試合。………始め!!」



 右の赤い兜のチームは槍が2に盾が3、そして斧が1。左の青い兜のチームは盾が4に槍が2。やはり長物である槍が多い。槍といっても、先には丸く布が何重にも巻かれている。あれで一応保護はされているようだ。


 何処かの青い星ではたんぽ槍と呼ばれる物によく似ていて、安全の為に棒の先にクッションになる物を着けて布で覆ってある、いわゆる練習や試合用の槍の事だ。


 右のチームは盾3人が中心に居て、その左右に槍が立っている。どうやら斧は遊撃の位置らしく、隙あらば敵を崩しにかかるのだろう。逆に左のチームは盾を1枚増やして、より重厚に防御を厚くしている。


 とはいえ、個々の技量によって槍も盾も大きく変わるため、そう簡単な事ではない。そして両チーム共に、槍は牽制し合っているだけだ。やられれば試合会場から出なくてはいけない為、試合に出ている者も必死の形相で槍を振るっている。


 叩きつけたり、相手の盾を突いたりと崩そうとしているものの、両チームの盾も簡単には崩れない。そんな試合を見ながら、ミクは控えている<槍のグルム>を見ていた。


 明らかにやる気がなく、大口を開けて欠伸あくびをしているのが見える。個人戦に出場しているので暇なのは分かるが、流石にあの態度はどうなのだ? 少々疑問に思うも、監視は続けるミク。


 顔は試合の方に向けているが、幾らでも目を作り出せるミクにとっては右後ろの方を見るなど造作も無い。個人戦は団体戦の後らしいので、今から長い間待たなければいけないようだ。なので、あの態度も仕方ないのであろう。


 試合は白熱したと言うより、叩き合いと突き合いが今も続いている。言葉は悪いが戦争も似たようなものなので、戦争の一部を見ているようでもあった。なので、ミクにとっては面白くない訳ではない。


 実際の戦争であれば、もっと必死な形相でお互いに叩き合いや突き合いを行うのだ。それを考えると、この戦いの形も分からなくはない。意味の分からない者にとっては面白くない試合であろうが。


 観客も飽き始めてきた頃、体力の無くなってきた相手の槍に対し、右チームの遊撃である斧持ちが【身体強化】を使って飛び出る。そして素早く相手の首に当て、相手の槍を死亡判定にした。



 「赤、槍、死亡判定! 速やかに試合会場から出るように!!」



 そう審判に言われ、斧にやられた槍は試合会場の外に出て行く。こうなると数が減った方は不利になる。盾を持っている連中が持っているのは、ことごとく木剣ばかり。あれでは槍のリーチには勝てない。


 そして槍のリーチで叩かれている最中に、再び斧が相手の槍を襲いに行く。【身体強化】で素早く出た斧は一気に接近するも、近くの盾が飛び出し、斧に対して剣を振る。おそらく狙っていたのだろう。


 斧は慌てて相手の盾に斧を当て、無理矢理に相手を排除しようとするが、その瞬間には槍を頭に落とされて退場となった。なかなかに白熱した試合展開になってきたが、面白くない者にとっては面白くないのだろう。つまらなさそうにしている観客も居る。


 セリオがミクを呼ぶのでティアはセリオをミクに渡し、ミクは適当に出した干し肉を食べさせる。セリオにとって試合は面白くないようだ。



 『だって、僕が突撃すれば勝てちゃうし。そんなの見てても面白いとは思えないんだもん』



 そりゃそうだろうとしか思わないミク。戦車が蹂躙して回るだけにしかならないし、確かにセリオなら余裕だろう。でも試合の見方はそうじゃない。そう思うも、自分ならどう戦うかと考えるのは普通の事かと考え直す。


 再び試合に戻ると、槍1と槍2の構図に変わっていた。どうやら盾の牽制を止めて、槍2が相手の槍を倒しに行ったらしい。その影響でお互いの盾が動けなくなっている。


 盾としては剣が届く範囲まで攻めたいのだろうが、それをすると槍で攻撃される可能性があり、迂闊に攻められない。槍が2人残っている側も、迂闊な隙は晒せないという事で、動くに動けないのだ。


 その間にも槍の攻防は続いているが、お互いにそろそろ腕が上がらなくなってきた。3メートル50センチほどの槍を振っているのだ、持ち上げて落としたりするだけでも腕の力を結構使う。


 それを試合が決着するまで振るうのだから、槍も大変だろう。そう思っていると遂に槍2の攻撃が当たり、槍の退場となった。これで盾しか居なくなったが、その盾の4人は一気に攻め立てる。


 もはや槍持ちが居ないのだから、距離をとる必要が無い。そして当たり前の事だが、長槍は接近されると弱い。この闘技大会では武器を複数持つ事は許されていない。唯一の例外は両手に短剣を持つ事だけだ。


 だからこそ長槍は接近されると槍で戦うか、手放して素手で戦うしかなくなる。一応素手という選択肢はあるものの、剣よりリーチがある訳ではなく、あっと言う間に退場となった。



 「どちらも負けじと攻め合う、なかなかに白熱した戦いよな。準決勝に相応しい戦いであるが、あの疲れは回復すまい」


 「でしょう。陛下のおっしゃられる通り、次の試合では厳しいかと。ですがお互いに勝たねば先に進めませぬ。全力となるは仕方なき事かと」


 「うむ。だからこその良き戦いでもある」



 王と王太子も楽しんで見ているらしい。唯の公務なのかと思ったが、どうやら羽を伸ばせる公務と言えるのだろうか。横に居る宰相など、手を握り締めて観戦しているぐらいだ。


 そして遂に決着がついた。勝利したのは右の赤い兜のチームであり、斧持ちが居たチームだ。結局、最後は盾持ち同士が木剣で切り合っていたが、その時点で2対1だった。流石に2対1では勝ち目は無かったようである。


 それでも健闘したからだろう、両チームに拍手が送られる。ああいった削り合いは見栄えが良くないのか、面白くなさそうな者もちょこちょこ居たが、ミクとしては良い試合だったと思う。


 なかなかどうして人間種の戦いも楽しめるものだと、少々の感心をしている。ミクやセリオなら簡単に終わるが、それはそれで酷くつまらないものだ。それなら白熱する試合の方がまだ面白いだろう。


 たとえ呆れるくらい下手な者同士でも。


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