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0319・腕試しの決定




 朝。日の出と共に本体空間から出した2人を寝かせる。今の今まで睡眠学習を受けていたが、結構な細胞が置き換わり混ぜられたセリオは、睡眠学習をさせやすかった。やはりアレッサとは違うと理解したミク。


 人間種かどうかも関わりがありそうだが、それにしても楽だったなと内心で首を傾げていた。本体もハッキリ分かるぐらいの差があったのだが、そう考えるとティアは然程ではあるのだ。


 アレッサよりも睡眠学習をさせやすいティアだが、セリオほど簡単かといえば実はそうでもない。これはシャルも同様である。もしかしたらスキルの有無なのかもしれない。そうも考えるミク。


 しかし、その思案は途中で打ち切られる。セリオが起きたからだ



 『うーん………おはよう。昨夜僕に何かした? 何か良く分からない事が頭の中にいっぱいあるんだけど』


 『戦う為の色々なものとか情報とかね。魔法も使えた方がいいでしょ、あの<ユキフラシ>とは魔法で戦えてたかもしれないんだし』


 『確かにそうだね。魔法があったら僕の攻撃も役に立ったかもしれない。よし、次こそは頑張るぞー!』


 『気合いが入ってるのは良い事だけど、まだアレッサは寝てるから静かにね』


 『はーい。まだなら遊んでようっと』



 狐の毛皮の上をコロコロ転がったり、ミクの手を頭で押したりして遊んでいる。ティアともやっていた事だが、ミクは押し返すだけではなく、横に力のベクトルを切り替えたりして相手をする。


 当然スカされたセリオはコロンと転がってしまうのだが、何が面白いのか、むしろ積極的に押してくるようになった。仕方なくミクもセリオの重心を崩すように力を加え、再びコロンと転がす。


 訳の分からない遊びに嵌まったなと思いつつ、それでも頭で押すのを止めないセリオと遊んでいると、アレッサが起きた。



 「……おはよ。それはともかく、何をやってるの?」


 「んー……重心を崩す遊び? どうもコロンと転がるのが楽しいのと、頭で押すのも楽しいみたいね」


 「へー………」



 ボーッとしているというか、頭の中の情報を精査している感じのアレッサ。ある程度は把握できたのか納得したらしく、起き上がって準備を始める。ミクもセリオとの遊びを止めて準備し、終わったら部屋を出る。


 その頃にはアレッサがセリオを抱いていたので、何も言わずに部屋を出たミク。どうしても抱き上げたいらしい。


 食堂に移動し注文をしたら、大銅貨9枚を支払って席に着く。セリオがコロコロして遊んでいるのを見ながら待っていると、朝早い食堂にティアとベルと護衛の騎士がやってきた。2人は食事をしてきたらしいので、適当に座ると話し掛けてくる。



 「ミク殿、昨日城に戻って陛下にお伝えしてきたのですが、ミク殿さえ良ければ優勝後の腕試しとして出てもらえないかとの事です。流石に陛下もグランセンドの者だというのはご存知でしたが、優勝されて我が国が下に見られるとは思ってもみなかったようです」


 「まさかグランセンドの4神将を送ってくるとは……私達も予想外だったとしか言えない。<槍のグルム>というのはあまり聞かないが、まさか我が国の闘技大会に出てくるなど思わなかった」


 「流石に神の名を持つスキル持ちが居るとなれば、普通の探索者や騎士では勝てません。しかし、あっさりと優勝されて終われば我が国が軽んじられます。グランセンド以上の強さを我が国が見せつけなければ、国際的な価値が下がりかねません」


 「ティアから聞き、今は表で何もする気は無いと分かっているが、だからといって強さを見せつけられて終わるというのは迷宮国家の沽券に関わる。とはいえ、確実に勝てるというのは3人しかいないのも事実」


 「シャルティア殿でも勝てますが、御本人の事が何処でバレるか分かりませんので、お頼みする事は出来ません。それに我が国としては確実に勝てる手を打ちたいのが本音です」


 「まあ、戦うのは良いんだけどね。やるなら相手をそのまま帰さなきゃいけないんだよ。1人は喰ったけど、これ以上は無理か。仕方ないし、ここは無理をするところじゃないね」



 そう決まった丁度のタイミングで、シャル達が食堂に姿を現す。それと同時に料理も来たので朝食を始めるミク達。



 「あん? 何でベルが朝っぱらから居るんだい? 何かあったって感じには見えないけど、不思議な事だね。ティアに会いに来たのかい?」


 「いえ、違います。グランセンドの者が圧倒的な強さで優勝してしまうと、我が国の沽券に関わりますので、優勝後の腕試しとしてミク殿に出ていただきたく頼みに来ました」


 「あー、そういう事かい。確かに神の名を持つスキルを持ってるんじゃ、普通の探索者は相手にならないね。それならしょうがないって思うけど、国のメンツとしちゃ納得は出来ないだろうさ」


 「それで逆にミクを出してボコボコにしてもらい、闘技大会に出ている者だけが強者ではないとアピールする気ね?」


 「はい。一応は陛下の知る最強の方という形で登場していただきます。実際、何も間違ってはおりませんし、ミク殿は最強の怪物ですから……」


 「うん、確かに間違ってないわね。最強すぎて反則に思えなくもないけど、そんな事を言ったら神の名を持つスキルも反則だもの。反則同士の戦いになるでしょうけど、反則過ぎる方が絶対に勝って終わりよ」


 「知っていれば、その答えを誰も否定しないわね。ミクは出るんでしょうけど、どうするの? 派手な衣装で出る? それとも顔を隠して出る?」


 「顔を隠してって面白そうだね。せっかくだから顔とか色々隠して出ようか」



 食事の終わっていたミクは一旦部屋に戻り、本体空間で作っていた鉄のプレートアーマーを着込み、首から上は仮面で覆う。顔の全面を覆う白い仮面を着けて現れたミクは、一種異様な姿だった。



 「流石にプレートアーマーはどうなの? 確かにミクだとは分からないでしょうけど、だからといって向こうがグチグチ文句を言ってくる可能性はあるわよ?」


 「一応ルール上はプレートアーマーでも問題ないんだけどねえ、流石にガチガチに固めてるから云々と言ってきかねないよ。あたし達はミクの勝ちを疑ってないけど、だからこそケチを付けられるような事は止めるべきさ」


 「分かるんだけど、私だとバレると面倒な事になりそうだし、他に全身を隠すようなのって……いや、あるか」



 そう言ってミクは部屋に戻り、プレートアーマーを外して、代わりに服の上から狼の毛皮を羽織る。これならバレる心配は無い筈。そう思って食堂に戻ると、その場の全員が微妙な顔をする。



 「確かに狼の毛皮と仮面でバレないとは思うけど、今度はその狼の毛皮がねー……。獲ってこれるのは第7エリアに行ける者だけなのよ。ま、その事を知っている者は少ないから大丈夫だとは思うわ」


 「そうね、それが一番マシでしょ。後は喋らなければ大丈夫かな? それとも声を変えて喋る?」


 「あ、あー、あー……あ~~。このぐらいで良い?」


 「かなり声が低くなったわね? むしろ高くするのかと思ったけど、それなら身長も低くしたら良いんじゃない? ミクなら自在に変えられるでしょ」


 「そこまですると動き難いから、流石に却下。向こうが神の名の入ったスキルを使ってくるかもしれないし、咄嗟の時に感覚が違うのは困る。負ける事は無いけど、手加減できないかもしれない」


 「ああ、それはそうでしょうね。感覚が違うのにキッチリと戦闘なんて出来ないでしょ。私達からすれば使い慣れた武器じゃなく、まったく別のをいきなり持たされて戦わされるってトコでしょうね」


 「そりゃ無理だ。武器を使い熟すにも、それなりに時間はかかる。いきなり完璧に扱うなんて無理さ」



 ミクにとって分体の形は自在に変えられる。だからといって、使い慣れているかどうかは別なのだ。


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