0318・5人組の結果
3階の<ユキフラシ>を倒したミク達は、猛吹雪が無くなった帰り道を走る。そのまま2階に戻っても走り続け、1階の魔法陣から外へと脱出。<妖精の洞>へと真っ直ぐ戻る。
部屋に戻った3人は防寒具を脱ぎ、ミクが【浄滅】を使った後でアイテムバッグへ仕舞う。少しゆっくりしていると、セリオが話しかけてきた。
『あの<ユキフラシ>に僕が勝つ方法ってあるかな? 何も役に立たないっていうのは嫌だから、役に立てる方法があるなら教えてほしい』
子供は子供なりに色々と考えるものだが、セリオは大人でも子供でもない年齢であった。そんな事を思いつつ、ミクは色々とアドバイスしていく。
「角を大きくしたり出来るなら、きっと魔力を篭めて硬度を上げる事も出来るはず。だったらそれを使って切り裂いてみるとか? 形が変えられるなら剣みたいにしたり出来ない?」
『うーん。やった事ないから分からないけど、出来るかもしれない。試してみる!』
アレッサとティアがビックリしているが、ミクは気にせずセリオにやらせてみる。色々な事をやらせてみないと、セリオの能力は分からないのだ。これだけの事が出来ますよと教えてもらえる訳ではないのだし。
そしてセリオはティアに抱かれ、うんうん唸りながらも探索者ギルドへ。解体所に獲物を渡したら木札を貰い、受付で売却金を受け取る。今回は大銀貨24枚と小金貨が9枚だ。
キッチリ3人で割れる数しか持って帰ってきていないので、3人で等分に出来るのは当たり前だったりする。帰りに3分割できる数にして帰ってきているのだ。これは、いちいち揉めるのが面倒だというミクの意見が強く出ている。
実際アレッサとティアは、余りの分はミクの取り分だと言っているのだが、余りの分まで確保するぐらいなら、蹴散らして進みたいのがミクである。当然その方が楽だし、アレッサもティアもそこに異論は無い。
ただ、持って帰れば売れるのに勿体ないと思うくらいである。2人もそこまでキッチリ全て処理して持って帰るべきだとまでは思っていない。面倒なのは確かだからだ。毎回、血抜きのために止まらなければいけない、これも負担なのは事実なのである。
1人大銀貨8枚と小金貨3枚に分けたら、宿へと戻り食堂に行く。小銀貨2枚を渡し、大銅貨8枚のお釣りを貰ったら、席に座ってゆっくりと待つ。セリオは未だに角の形を変化させる練習をしている。
出来るかどうかは不明なのだが、頑張ってやってみたいそうだ。格好よく「ズバッ」と切れる角を持ちたいらしいので、3人もセリオの頑張りを微笑ましそうに見ている。
そうしていると3人が帰ってきたので挨拶。どうも3人とも闘技大会を見に行っていたようだが、何かあったのだろうか? 随分と笑っている。
「おかえりー。で、3人とも笑ってるけど何かあった?」
「ああ、ごめんなさいね。私達に練習を頼んでた5人組いたでしょ? <大地の剣>とか言ってたカムラから来た5人組。あいつら決勝トーナメントの1回戦で敗れたのよ。この試合が面白くてね。その試合の話をしてたの」
「面白い、ですか。いったい何があったのでしょう?」
「団体戦のルールでは頭や首への攻撃で死亡判定になり、大きな怪我とかで続行不可能と判断されたら負けになるんだ。怪我の方は1人でも出た段階で負けになる。ちなみに闘技大会では兜は貸し出されてるみたいだね」
「そうしないと、幾ら木製の武器でも当たったら死ぬからでしょうね。で、ジェミは木製のメイスで出てたわ。まあ、ミクの作った双節棍の木製なんて用意されてないから当たり前なんだけど」
「でもジェミは随分奮闘してたわよ、あのバカに比べればね。木製の剣を刺突剣のように使って戦ってたら、それなりに戦えてたのよ。それで調子に乗ったんでしょう、自分がマジシャンだというのを忘れて敵の魔法が直撃、続行不能で負けよ」
「まさか敵の魔法に注意しないバカなマジシャンが居るとは思わなかったよ。ある程度【身体強化】が出来るようになって浮かれてたんだろうさ。予選も上手くいってたみたいだし」
「そんな予選と決勝トーナメントじゃ違うんだけどね。とはいえ、これでようやく本心から凹んだでしょう。今までは何だかんだと言って、鬼軍曹みたいなイリュディナが黙らせてきただけだもの」
「でも今回は明らかに本人のミスだ。これで凹んで反省したら変わるだろうけど、言い訳したり他人の所為にしたら終わりだね。そこが問われてるんだけど、あの甘ったれはどういう態度をとるのやら」
「ま、私達にとってはどうでもいい事ね。それよりミクが言ってたグランセンドの女、個人選に出てきてキッチリ上がってるわよ。おそらく優勝するんじゃないかしら」
「あれはねー、相当に強いと思うわ。戦闘系のスキルを持つだけあって、それを如何なく発揮してる感じよ。更に言えば槍だからね、上手く使えば隙の無い武器だわ、本当」
「基本が上手いよ。対魔物戦だけじゃなく、対人戦もしっかり出来ている奴だ。魔物相手に戦う探索者にとっては相性は悪いね。魔物相手なら強いと思える奴は居るけど、勝手が違うからさ」
ミク達の料理が運ばれてきたので早速食べるものの、話はまだまだ続けるようである。
「対人戦は読み合いだものね。魔物の行動を読むのと、人間種の動きを読むのは全く違うし複雑よ。相当の修練と経験をしなきゃ、読み合いで勝てないわね。あれは相当対人戦の練習をしてきてる感じがするわ」
「だからこそグランセンドが送り込んできたんだろうけどね。表で友好を唱えるなら何もできないし、それでグランセンドの方が強いと言い張る感じかね?」
「じゃないかしら。もちろん表ではゴールダームを立てるでしょうけど、裏では大きな顔をするでしょうよ。国同士なんてそんなものと言えば終わる話でもあるけど」
「とはいえ誰か勝てないものでしょうか? 我が国の開催で他国の者が優勝するなど恥にしかなりません。これで友好と言われても、という気はします。もちろん表では、なのですけれど」
シャル達も食事が運ばれてきたので手を付け始めるが、特に妙案などは無いようである。向こうが非合法な手を使わない以上は、出来る事など限られているからだ。
「流石に卑怯なやり口とかを使えば糾弾できるけど、向こうは正攻法で勝ちあがっていて、単に強いだけだからねえ。優勝した後にミクとでも手合わせさせたら、優勝者がその程度という事になるけどね」
「………ちょっと、私行ってきます」
そう言って、食事が終わっていたティアは走って行ってしまった。まさか本当にミクを出す気だろうか? 別に悪くはないので出るのは良いのだが、喰えない戦いかと少しガッカリするのだった。
食事が終わった後、ミクはイリュにミードの入った樽を渡す。受け取ったイリュは用意していたらしく、大銅貨で2000枚、つまり小金貨2枚分の大銅貨で支払ってきた。正気かと驚くものの、正気で集めてきたらしい。
「と言っても、知り合いの店に行って交換してもらってきただけなんだけどね。当たり前だけど複数の店よ。それで当分の間は大銅貨が無くなる事はないでしょう?」
「そりゃね。ありがたく受け取っておくよ」
その後は部屋へと戻り、アレッサを綺麗にしてベッドに寝かせる。今日はティアは戻ってきそうにないなと思いながらミクも横になり、瞑想の練習をしていく。
アレッサとセリオが寝たタイミングで2人を本体空間に転送し、睡眠学習を始めた。どうやらセリオのついでにアレッサにも受けさせるようだ。




