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0317・第7エリア・2階突破




 『あまーい! おいしーい!! これ甘くて美味しい。凄いまでは行かないけど美味しいよ!』


 「凄いまでは行かないのと、セリオは普通に塗って食べる事が出来るのね。私達は甘すぎてアレなんだけど、セリオはミクやイリュと似ている味覚なのかしら? 驚きだけど、そういう事もあるかな?」


 「ですね。ミク殿はともかく、イリュディナ殿も耐えられるのですし……他に耐えられる者が居ても、おかしな事ではありません。まあ、セリオがそうだとは思いませんでしたが」


 『このスープ? も美味しいよ。何かよく分からないのが入ってるけど、この赤いの美味しいね。僕こっちの方が海老より好きかも』


 「それは蟹だよ。海老と戦って干し身を作ってたら、何故か巨大な蟹が現れたの。高さ4メートル、横幅10メートルの、お前どうやって動いてるの? と言わんばかりのヤツが」


 「うぇ……何その巨大生物は? 幾らなんでも大きすぎでしょうが。何ていうか限界を超えてそうな大きさだし、自重で普通は潰れない?」


 「言いたい事は分かるんだけど、動きは驚くほど鈍重なヤツだった。そのくせ、ハサミを振り下ろすのだけは異様に速いっていう訳の分からないヤツ。腕も足も引き千切って、最後には甲羅も剥がしてやったけど」


 「えっと……生きながらに解体をされたのですか? ………それはそれでどうなのでしょう?」


 「その後に酒の神に教えてもらった甲羅焼きで食べたけど、私の感覚がおかしくなったかと思うほど美味しかったよ。人間種の踊り食いと同じぐらい美味しかったのにはビックリしたけどね」


 「「………」」



 アレッサとティアは人間種の踊り食いと同じと聞いて勘違いしたらしく、2人して固まっている。そして聞こえている筈だが興味の無いセリオはおかわりをするらしい。ミクがおかわりを入れたら再び食べ始めた。



 「人間種の踊り食いと同じ味じゃないよ? 同じぐらい美味しいって事だから、勘違いしないように」


 「あ、ああ……そうよねえ。蟹なのに人間種の味ってかなり嫌だし、わたし達は今食べてるし。それが人間種の味って思うところだった。危ない、危ない」


 「冷静に考えれば同じ筈がないのですが、まさかの可能性はありますからね。味を知りませんから分かりませんが、知りたくもありませんし」


 「そりゃね。わたしだって知りたくないし、頭のおかしいのくらいでしょ。知りたい奴なんて」


 「でも同族食いをする種の生き物はそれなりに居るけどね? 人間種も古い時代には同族食いをするらしいし、別におかしな事とまでは言えないんじゃない? 今はしないだけで」


 「えー……古い古い先祖って、同族食いをしてたの? ……マジかー」


 「でも、そいつらが居ないと今のアレッサも居ないかもしれないから、難しいところじゃない? もちろんアレッサの遠い祖先が同族食いをしていたかは定かじゃないけどさ。飢えてるなら喰うでしょ」


 「まあ、昔に今の倫理なんてありませんし、今では禁忌でも古い時代はそうではなかったかもしれません。今の感覚で古い時代の事を語るのはナンセンスです。そう、私の教師が言っておりました」


 「それは正しいね。昔には昔の秩序がある訳だし、今とは違うんだからしょうがないでしょ。むしろ食われては堪らないって警戒してただろうし、だから今より腐った奴等は少なかったかも?」


 「ああ、そういう可能性もある訳ね。でも、同族食いの時代はちょっと……」


 「でもアレッサ殿って元々はヴァンパイア・ロードですわよね? その割には私より拒否反応が強いようですけど……」


 「………そういえば、そうね? かつては人間を襲って血を吸ったりしてた筈なんだけど、何だか遠い過去というか、自分じゃない自分がやってたって感じ? 何ていうか、すっごく他人事に感じてる」


 『おいしかったー! ごちそうさま!!』


 「おっと、話してないでさっさと食べてしまいましょうか? 微妙な話題もあったから、そこまで休憩にならなかった気もするけど」



 アレッサとティアも急いで食べ、終わったら少し休憩とトイレに行った。ミクは後片付けなどを済ませたらテーブルを本体空間へ。十分に休憩がとれたら、椅子も本体空間へ仕舞い、今度は南西へと移動して行く。


 【身体強化】をしているので速く進めるが、その分魔物と早く出会う訳でもあり、戦闘はともかく血抜きに時間が掛かっている。当然レティーがやってくれているから速いのだが、それでも積もると大きなロスになっていた。


 改善するのは難しいとしか言えないので、そのロスは受け入れつつ先を急ぐ。すると南西の方角でようやく階段を発見。南西の突き当たりにポツンとあったのだが、周りの雪と比べて一段低い。なので遠くからでは見えないようにしてある。


 厄介な形で階段があるなと思いつつ、3階を見てから帰ろうという事で3階へと進んでみる。すると、再び猛吹雪の階層だった。試しに階段近くを掘ると、またもや2本の棒を見つけた。



 『僕が間に立つ! ………ふぅおおおお!! また壁が出てきた!!』



 階段を下りた正面を北と考えた場合、今度は東北東の方角へと壁がせり上がっていく。ミク達はその壁の間を走って行くと、予想通りに<ユキフラシ>が居た。どうやら奥の方に池もあるらしい。


 それを見たミク達は各々武器を手に取り、一気呵成に攻め立て始めた。ミクは長巻だが、これは<ユキフラシ>にウォーハンマーは相性が悪そうだったからだ。


 3人全員が刃物で攻撃し、切られる度にグニャグニャと体を動かす<ユキフラシ>。のた打ち回っているように見えるが、反撃らしい反撃はしてこない。どうやら接近距離で戦っている相手に対する反撃手段は少ないようだ。


 しかし耐えかねたのか、ミクに対してし掛かり攻撃をしてきた。おそらく長巻が一番広範囲を斬り裂いているからだろう。しかし最強の肉塊を狙っても当たる筈も無く、あっさりと回避されたうえチャンスとして総攻撃を受ける。


 結局、し掛かり攻撃の後は碌に動けず、そのまま切り刻まれて細かくされた<ユキフラシ>。まるで残骸のような哀れな姿になってしまっている。



 「おつかれー。こいつ正面から真面目に戦うと凄く面倒臭いわね? 体が大きいから削るのに時間が掛かるし、あのし掛かり攻撃を受けたら、普通は死ぬわよ。でも、それ以外に特に攻撃は無かったし……総評では変なヤツってとこ?」


 「そうですね、変な魔物で良いのではないでしょうか。もともと雪を吐き出すという、よく分からない魔物ですし。近接戦闘ではし掛かりに注意というだけです」


 「おつかれ。多分だけど、私が一番大量に斬り裂いてたからし掛かってきたんだと思う。逆に言うと、大量に斬り裂いている奴から離れれば、被害は最小限に出来るんじゃないかな」


 「でしょうね。……セリオはあんまり活躍出来なかったけど、相性が悪いから仕方ないわよ。ブヨブヨだし、体当たりの威力を受け止められてた感じだったから」


 『むー………納得いかない! もう1回戦う!!』


 「いや、倒したから居ないわよ。下に行けばまだ居るかもしれないし、復活したらまた戦えるだろうから、その時に頑張りなさい。あと、その時までに良い方法を編み出しておかないとね」


 『突撃じゃだめ……?』


 「流石に無理でしょう。先程も言ってましたが、あのブヨブヨの体には体当たりは効きません。小型ならそれでも効くかもしれませんが、あれだけの大型だとどうにもなりませんよ」


 『そっかー………』



 流石に相性が悪すぎて、どうにもならないだろう。1つの方法に固執しない方が良い事も含めて、色々と教えていった方が良いなと思うミクであった。


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