0316・闘技大会の日程
朝食を終えたミクは、横のテーブルに入るイリュに聞いてみる事にした。ミクは闘技大会に興味が無かったので、日程など知ろうともしなかったのだ。興味の無い事に関しては、とことん関わらない肉塊。
しかしグランセンドの連中の事もあるので聞いておいた方がいいと判断したのだ。いつ襲うかという事も考えねばならない為でもある。
「イリュ、闘技大会っていつになったら終わるの? 私日程を全く知らないんだよね。そもそも予選のやり方とかも知らないくらいだし」
「全然知らなかったというか、興味が無かったのね。とりあえず言っておくと、団体戦の予選は昨日終わったわ。個人選と違って団体戦は、1試合1試合を順番にやっていくしかないからね」
「個人戦も含めた決勝は今日からだけど、個人戦の予選は一日目で終わってるわ。何故なら30人を集めたバトルロワイアル形式で、残った1人が決勝トーナメントに進出するの。稀に有力なヤツが落とされたりして敗退するのよねー」
「30人も居れば会場は手狭になっちまうからねえ、あれじゃ他のヤツに押されて出る可能性もあるよ。それに盾に押されて出される可能性もある。決勝では外に出ても中央に戻されるだけらしいけどね」
「そうよ、決勝では戻されて再び始まるんだけど、予選だと落ちた時点で負け。参加者が多いから仕方ないんだけど、稀にあるのは狙ってやってる連中が居るからよ」
「お金で雇われたとか言われてるわね。本当かどうか知らないけど、昔からそんな事を言われ続けてるわ。明らかに特定の1人を落とそうとしている連中が居るのよ。そういうのは動きで分かるから」
「試合に関係ない動きは、怪しいから目立つだろう。素人でも分かるんじゃないかね? あいつら変だって」
「盾で守りを固めて押し出したり、数人で囲むような形で押し出したりとかね。でもある程度の人数になるまで、こういう事も無い訳じゃないから、強弁されると反論し辛い部分はあるのよ」
「ミクの質問に答えておくと、明日が決勝よ。ちょうど昼過ぎから最後の試合で、その後に優勝者を讃えて賞金を渡して終わり。そんな感じね」
イリュの言葉に頷いた後、頭の中で色々と計画をシミュレートしていくミク。それを見て奇妙に思ったイリュは聞いておいた方が良いと判断し、ミクに聞いてみた。
「ミク、悩んでるみたいだけど、何かあった?」
「ん………まあ、いいか。昨夜、夜に妙な動きをしている連中が居たの。追跡するとグランセンドの連中が泊まっている宿に入っていったから、後をつけたんだけど、途中の部屋から黒ずくめの奴等が出てきて殺された」
「黒ずくめの連中ねえ……」
「そいつらはグランセンドから来ている連中で、殺されたのは唯の泥棒。殺した連中をアイテムバッグに詰めたら部屋に戻ったから、追い駆けて部屋に入ったら、それなりに色々と聞けたよ。4神将の残り2人とかね」
「4神将って、確かグランセンドの神の名を持つスキルを持つ4人だったかい?」
「そう。後の2人は<戦のサイモン>と<弓のカーフェン>というヤツ。<戦のサイモン>は【戦神の杖】というスキル、<弓のカーフェン>は【弓神の一矢】っていうスキルなんだって。おそらく<戦のサイモン>のスキルは指揮系スキル」
「指揮系スキルとは厄介なものを……。個人のスキルは本人だけなんだけど、指揮系のスキルは多人数に影響を与えるんだ。神の名を持つスキルなら、どれだけ見通してくるか分からない」
「それって真正面から戦っても厄介なんじゃないの? そう簡単には勝てないっていうか、シャルでも勝てないんじゃない?」
「あたしなら、そもそも戦わないね。そいつが居る戦場はひたすら防戦をさせて少しでも戦死者を減らしながら後退を続ける。その間に別働隊が、違う場所を狙えばいい。幾ら神のスキルで指揮系だと言っても、そいつ1人しか居ないんだ。ならば幾らでもやりようはある」
「そいつ1人を一ヶ所に釘付けにしておけばいいって事ね。それなら何とかなると思うわ。それで守りを固めても、向こうは厄介な事をしてくるんでしょうけど」
セリオが暇なのか食べ物をせがむので、海老の身の干物を出すミク。思っているよりも風味や味が濃くなっているので、美味しそうに食べるセリオ。そして横から自分も食べようとするドンナ。
流石にセリオの分を横から食べるのはどかと思うのでドンナにも渡す。右手でセリオに食べさせつつ左手でドンナに与えていると、ティアがやりたがったので交代する。そして他の全員も海老の干し身を欲しがったので出した。
「これがあの巨大な海老の干した身ねえ…………あ、これ美味しい。妙に味が濃くなってるし、風味も強い? でも嫌な臭いじゃないから、美味しさは損なってないし、何より巨大な身だったから沢山あるんじゃないの?」
「それなりにはアイテムバッグの中に入ってるよ。そういえばイリュの言ってたミードだけど、今の内に渡しておこうか? まだちょっと早いと思うけど、発酵は順調にしてるし」
「いえ、出来てからでいいわ。出来る前に渡されて、私が持ってたから失敗ってなっても困るしね。しかし、あの巨大な海老がこんなに美味しくなるなんて思わなかったわ」
『大きな海老、僕も戦ってみたい!』
「流石にセリオだと厳しいかな? あそこの巨大海老は本当に大きいからね、セリオだとハサミで挟まれるよ。だからといって、どうにかされるとは思わないけれども、ハサミで挟まれて固定されたら決着がつかないと思う」
「「「「あー………」」」」
想像して納得できたようだ。セリオも大きいがあの巨大海老のハサミも1メートルくらいあるのだ。2つを上手く使われたら、身動きが出来なくなる恐れも十分にある。なので戦わないように言うミク。
セリオは不服そうだったが、それでもミクに反発まではしない。実際に動けなくなったら困るからだ。
モグモグしていると美味しいからか、すぐに忘れて夢中になっている。実際に戦わせた方が早い気もしないでもないが、わざわざ行くのが面倒臭いという思いもあるらしい。
話す事も無くなったミクは、アレッサとティアに第7エリアへ行く事を伝えて部屋に戻る。3人部屋で着替えたら、ダンジョンへと移動して第7エリアへ。
まだ壁は出ていたので進んでいき、階段を下りて2階へ。今日は北西、北東、南西、南東を調べていく。ここまで調べれば何処かに階段があるだろう。そう思っているのだが、雪の下という可能性も捨て切れない。
そんな予想もしながら、まずは北西に進んで行くミク達。もはや狼も狐も簡単に蹴散らせる魔物でしかなく、セリオが楽しそうにぶつかっていく。撥ね飛ばされて吹き飛ぶ魔物は可哀想だが、セリオの運動にはちょうど良い相手だ。
そのまま【身体強化】で突き進んで行くも、北西には階段は見当たらなかった。一旦引き返し、次は北東へと進む。同じように蹴散らして行って進むものの、階段らしきものは見つからず、再び上り階段まで戻る事に。
ようやく戻ってきたミク達は、一旦テーブルと椅子を出して休憩する。ついでにトイレ用のカマクラも作っていき、皆の手伝いもあってそれなりの時間で完成した。
今日の昼食は、野菜と海老と蟹のスープに大麦パンとハチミツだ。ハチミツを出すのをすっかり忘れていたのを反省し、今日の昼食には出したミク。
今までは出していなかったからか、早速セリオが食いついたようだ。




