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0315・グランセンドの目的




 第1エリアに進入したら素早く男のブーツから離れるミク。男はキョロキョロと周りを見渡すと、人があまり来なさそうな林に当たりをつけ、そこへと素早く走って行く。当然ミクも後ろから追い駆けているが、男には見えていない。


 林の中にある程度入ると、男はアイテムバッグを開け、中から死体を取り出して捨て始めた。



 「まったく、何でオレがこんな事をしなきゃならないんだか。確かにスラムの生まれだぜ? でもグランセンドの王都生まれなんだぞ、オレは。こんな事は2等国民や3等国民の奴等にやらせろよな」



 どうやらグランセンドでは、奪って支配した地の国民を2等や3等として扱っているようである。それ自体は普通の事なので特にどうこうと言う事ではない。


 何処かの青い星の古い時代にあったというローマ帝国でさえ、支配地の民は2等民や3等民として見下され、差別されたうえ権利も少なかったのだ。ローマに移り住む為に長い兵役を熟さなければいけなかったりと、かなりの格差があるのが普通である。


 それはともかくとして、王都のスラム民でも1等国民と言えるのだろうか? そんな疑問をミクは持ったが、答えに特に興味も無い事に気付き、さっさと男に触手を放った。



 「ぐぅぇっ!?」



 首筋に突き刺した触手から麻痺毒を注入し、体の自由を奪ったミクは、肉で男を取り込む。その後、オークの姿になったミクはアイテムバッグの中身を確認。死体などは全て出してある為、おかしな物は無かった。


 確認後はアイテムバッグを本体空間に回収し、死体を貪り喰ったら戻り、魔法陣からダンジョンを脱出。外に出たらすぐにムカデの姿になり<妖精の洞>へと戻っていった。


 ちなみにミクは透明であり続けている為、傍目からはオークが立っていても見えていない。なのでミクが見つかる可能性は極めて低かったりする。


 それでも念を入れているのは、ミクが知らないスキルで見られている可能性が否定できないからだ。スキルが無ければ気にもしないのだろうが、スキルの中には意味不明なものもあったりするので注意を払っている。


 3人部屋へと戻ったミクは、すぐにレティーを本体空間に入れたら窓から外へ。ピーバードになって飛びながら、本体空間ではレティーが脳を食って情報収集。その後、本体は死体を貪り喰った。


 要らない物は飛びながら捨て、それが終わったら再び<妖精の洞>へと戻る。適当に森に捨てたので、虫か何かが食うだろう。骨も粉砕して捨てているので気付く者もいない。


 宿の部屋へと戻ったミクはレティーを出し、精査した情報を聞いていく。



 『先ほどの男はグランセンドの影の部隊。いわゆる工作部隊のようです。ここゴールダームに来ているのは、<槍のグルム>の護衛と同時にゴールダームの状況を探る為ですね』


 『まあ、そんなところだろうと思ってたけど、いちいち工作活動が好きな国だね。そういうのはカムラだけかと思ってたよ。あそこもはかりごとが好きな国だから、影響が与えられずに困ってるんだろうけどさ』


 『大した能力の者ではありませんが、計画は知らされていたようです。まあ、計画と言っても、<槍のグルム>が優勝して名をとどろかせるというだけのようですが』


 『今のところゴールダームまでは進出していないみたしだし、となると大々的に工作活動をする訳にはいかないんだろうね。特にゴールダームが中心となって、反グランセンド連合なんて作られたら堪ったもんじゃないだろうし』


 『ですね。今はゴールダームでグランセンドの名を広めようというところなのでしょう。案外そこからカムラやドルムへの攻略を考えているのか……』


 『考えられるのは、ゴールダームと両国の切り離し? 特にドルムは食料を買ってるし。……でも、それって無理だよね? ドルムは食料が要る、ゴールダームは売って鉄などを買いたい。お互いに利益がある以上は止められないと思うけどね』


 『それはそうですが、交渉役の者をそそのかしたりするのかもしれません。食料はもっと高値で売れるとか、鉄や石炭などはもっと買い叩けるとか。そんな事を耳に入れる可能性も……』


 『そうやって両国の仲を険悪にしていく、か。……可能性はあるけど、今はそれよりも遥かに前の段階だし、仮にそういう事があっても私達が関わる事じゃないね。この国が何とかするべき事だ』


 『ええ。少なくともグランセンドの者達は、今回に関しては名を広める事が目的のようです。それも良い意味で名を広めるという事ですね』


 『ま、その程度なら放っておいても良いんだけど、できれば今のタイミングで<槍のグルム>とは戦っておきたいなぁ。今の内に始末しておきたいし、槍の神の名を持つスキルがどんなものか見てみたい』


 『だとすれば帰りに襲うとかはどうでしょう? 馬車を襲えば徒歩で移動するしかなくなりますし、そうすれば野営は確実では?』


 『ゴールダームと村か町の中間地点辺りで壊せば、どっちに行くにしても苦労しそうだね。それとも途中で車輪を切り落とそうかな。透明な触手なら見られる事も無いだろうしさ』


 『とりあえず闘技大会が終わるまでは何も出来ませんね。いきなり出場選手が居なくなったら怪しまれますし、ゴールダームとの外交問題になりますよ』


 『となると、ゴールダームを出てからの方が良いかな? ま、そこまで長い訳でもないし、後2~3日で終わるでしょ。予選で大分減ってるみたいだから』



 そこで話を止め、後は朝が来るまで瞑想を始めるミク。レティーも再び意識の大半を手放して休息をとるのであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 朝。いつも通り誰かが起きてくるまで待ち、起きたら挨拶をして待つ。今日はアレッサが一番早かったが、ティアもセリオもそこまで変わらなかった。


 準備をして食堂に行き、大銅貨12枚を支払って朝食を頼む。待っている間にミルクカウの乳が入った樽を出すと、皆が大喜びで飲み始めた。どうやら思っていたよりも、冷たいのが美味しかったらしい。



 『美味しいよ、これ前にも飲んだけど、やっぱり美味しい!』


 「そうね。冷たいからシャキッとするっていうか、朝から冷たいのも良いわ。特にこの時季は」


 「ですね。美味しいですし、栄養も豊富なんですよね? 今日はレティーも飲んでいるくらいですから」


 『そうですね。血ではありませんが、それでも私が美味しいと思うくらいには栄養が豊富です』



 そんな皆を見つつ適当に時間を潰していると、シャル達がやってきた。早速ドンナがミクの前に飛び、自分にも飲ませろと言ってきたので深皿に注ぐ。流石に説教をされたからか、樽に突撃はしなかったようだ。



 『相変わらず美味しい! 冷たくてサッパリしてるのに、栄養が多くて味も美味しい。これは本当に素晴らしいよ!』


 「そうかい。まあ、美味しいのは分かるけど、そこまで興奮する事かねえ?」


 「ま、誰だって美味しい物には、あんなものでしょ? お酒とかなら同じように食いつくでしょうに」


 「そうね。人によって食いつく物が違うだけよ」



 イリュとカルティクにそう言われ、何となくで納得したシャル。ミルクカウの乳にあそこまで喜ぶ理由は、シャルには理解できない事であった。


 朝食が運ばれてきたのでミク達が食べ始めると、ドンナが早く食事がしたいと騒ぎ出す。仕方がないので干し肉を上に置くと、それを見つけたセリオが自分も欲しいと言い出した。


 仕方なく与えていくものの、既に食事が来てるんだから食べるように促す。シャル達も料理が運ばれてきたので食べている、にも関わらず干し肉を欲しがるセリオ。


 妙な成分が含まれてるんじゃないかと怪しむミク。別にそんな物は含まれておらず、単に飢えた時の影響と甘えているだけである。


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