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0028・地下道への一撃




 先ほどの連中を本体空間に転送したミクは、改めておかしくなっている連中も転送していきながら、スラムの南の端を目指す。スラムの南の端とは聞いたが、それでもそれなりの広さはある。


 単純計算で1区画5キロ平方メートル。その3分の1なのだから約1.6キロほど。つまり東西に1.6キロの何処かという事になる。そこを探さなければ行けないので、ミクは南の端の建物に総当りで侵入していく。


 幾らでも起きていて活動できる肉塊らしい強引さだが、出来るなら一番良いやり方でもあろう。どのみち調べておく事は無駄ではないのだ。


 侵入しながら建物の中を把握する。中にはスラムの住民が勝手に住み着いている建物であったり、死体が放置されて白骨化していたり、殺し合いの真っ最中の所もあった。そんな中、ついにミクは<風見鶏>の本拠を発見する。


 何故分かったかと言えば、単純に<風見鶏>の連中が名乗っていたからだ。普段からアジトで酒盛りをしているらしく、愚痴の最中に溢したのだ。



 「どいつもこいつも、オレ達<風見鶏>をバカにしやがって。自分達は手を汚さないのがカッコイイとでも思ってるんだろうぜ。自分達には実行する能力がありません、って言ってるようなもんじゃねえか」


 「それだけじゃねえ。どうせゴールダームにビビってんだろうぜ、オレ達を前面に押し出して自分達は逃げてんだからよお。そんな根性無しが何様のつもりだってんだ」


 「あまつさえ、オレ達が作った地下道を使ってんだぜ? なに考えてやがんだろうな、あのバカどもは?」


 「何も考えてねえんだろ? 所詮は嫌がらせで済ませてる程度の奴等だ。本気でゴールダームを転覆させる気なんてねえんだよ。奴等いっつも口だけだからな。威勢の良いチンピラと何処が違うってんだ」


 「次の仕事はカムラのお偉いさんを撤退させる仕事だ。それにしてもカムラのお偉いさんとやらはマズくねえか? スラムの住民に変なもん使ってるぞ。アレ、絶対にヤベー薬だろ」


 「んなもんは分かりきってるっての。あいつら自分達の国じゃねえからってメチャクチャやりやがる。まともじゃねえ奴等だからな、カムラの暗部なんじゃねえか? ま、こっちにゃ手は出してこねえよ」


 「オレ達が居なくなったら困るうえ、一度でも穴が見つかったらスラムを総浚いされるからな。そうなると他の国を敵に回す。カムラっていっても、1国で他の国の工作員どもとは戦えねえ」


 「それだけじゃなく、ゴールダームからの輸入品も吹っ飛ぶかもしれねえからな。そうなると暗部の失敗ってーのはデカイ事になる。そんなもん引っ被りたくはねえだろ」


 「あそこは暗闘の多い国だからな。たとえ暗部の奴等っつっても失脚はあるだろう。甘く見る必要はねえが、無意味に敵を大きく見てもしかたねえ。オレ達にとって重要なのは金だ」



 どうやら怪しげな薬を投与していたのはカムラ帝国の手の者らしい。レティーも本体に報告しているが、どうやら間違いは無いようだ。わざわざ新しい毒の実験を行いに来たらしい。


 カムラ帝国が行っていた毒の実験は新型の物で、自白剤にも使える物らしく、どうやら麻薬のような成分を含んでいるようだ。そして耐性とは、その麻薬部分に対する耐性らしい。


 本国での実験で1人だけ耐性を持つ者が居たらしいのだが、毒の方に耐えられず死亡した。それで毒の部分を薄め、麻薬成分に耐えられる者を探していたようだ。その者を拉致して実験をするつもりだったのだろう。


 スラムの多くの者で実験したが、耐性を持つ者は居なかった。もしかしたら耐性を持つ者は相当珍しいのかもしれない。そんな事を思い始めながらも実験を繰り返していた。それがさっきの怪しげな奴等の正体のようだ。


 ミクはそんな事を聞きつつ、<風見鶏>の連中を肉で覆い転送していく。順番に転送していくが、まだの者は触手で首を絞めている。なので抵抗する事などできない。ついでに切り裂く事も不可能だ。


 男達は首を絞められながら、転送されるのを待つしか出来ないのだった。


 <風見鶏>の連中を本体空間に送ったミクは、アジトを詳しく調べていく。ついでに金品なども強奪しつつ、地下道の探索を行う。


 金が重要と言っていた割には大した金額がなかった建物を調べていると、暖炉の中に地下への階段を発見。中には薪が積まれていたり灰が見えるので、一見しただけでは地下への入り口が分からないようになっている。


 暖炉の奥の壁は鉄板になっているのだが、そこに穴というか窪みがあり、対応した道具があれば引っ張って開けられるようになっている。ミクは無かったので触手で強引に開けたが。


 階段は当然下りていくものなのだが、大雑把な螺旋階段のようになっている。どちらかというと丸じゃなくて四角い螺旋階段という感じだ。


 そうやって下りていった先に、南へと向かう真っ直ぐな道があった。その道を進んで行くと、今度は西へと道が曲がっており、そちらへと進んで行く。結構な距離を進むと、今度は上に上がる階段があった。


 その階段を上がって行くと、天井が鉄板で塞がれている所まで来た。おそらくこの蓋を開けると地上なのだろう。そう思い蓋を開けると、そこは森の中だった。


 つまりゴールダーム西の森の中から、ゴールダームのスラムの中まで繋がっていたという事だ。そしてこのルートなら、違法な奴隷もゴールダームの外に出せるだろう。



 (とりあえず外に繋がるルートは確認できたし、一旦スラムに戻って壊れた連中を喰らっておくか。壊れている以上、神どもも文句は言わないだろうし。……おっと、せっかく森に居るんだし、糞と尿を捨てていこう)



 ミクは喰らった連中の腸や膀胱の中にあった糞や尿を、森の中に適当に捨ててから戻る。既に鉄板の蓋は戻していたので、今度はピーバードの姿で飛んで戻った。


 地下道を進むよりも遥かに早く戻ったミクは、再び蜘蛛の姿になり、スラムの中の壊れている連中を喰らっていく。既に廃人のようになっている以上、治る見込みもゼロであり、喰らってやる事の方が慈悲であろう。


 既に深夜も更けている。地球の時間だとAM2:00といったところだろうか? そんな時間なので、スラムでさえ活動している者は殆どいない。そんな中、ミクは音もさせずに壊れている者達を喰らっていく。


 今日1日でかなりスラムも綺麗になったと思われる。まだまだ腐った者達は、この1.6キロの中に居るだろうが、それはこれからの事であり、今喰わなければいけない訳でもない。


 外に居る喰える者達は全て喰らったので、ミクは再び<風見鶏>のアジトに行き、地下道へと入る。そして地下深くに下り、ちょうど空堀の真下と思われる位置に来たら、天井に向かって【土弾】の魔法陣を展開した。



 (おそらく私の魔力なら一撃で貫通してしまう。地下道を壊して発覚させればいいんだけど、全力を出すのはやりすぎになる。どれぐらいセーブすればいいか分からないけど、一回しか出来ない。慎重に魔法を使おう)



 ミク自身の魔力を使った【土弾】は、初級魔法でありながら地下道を破壊するには十分だった。上にある空堀にまで到達した一撃は、それだけで地下道を崩す。


 ドゴォン!!! ゴゴゴゴゴゴゴ!! そんな音をさせながら空堀は崩れ落ち、その崩壊音はゴールダームの住民の知るところとなった。


 ミクは素早く地下道を駆け抜けて暖炉から外に出ると、さっさと<妖精の洞>の部屋へと帰還した。


 既に誰も居ない部屋にレティーを転送し、ついでに自分の下着も転送して着ると、ベッドに寝転んで関わりを最低限にする。後は短い時間とはいえ、本体空間で遊ぶのだった。


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