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0310・第7エリア・2階の東西南北終了




 昼食を食べて英気を養ったミク達は、カマクラを出て順番に用を足し、壊したら今度は東へと進む。【身体強化】で走っているので進むのも早く、セリオが撥ね飛ばしてもいちいち驚かなくなったので、素早く血抜きを行って収納していく。


 東に走っても階層の端に着いてしまったので戻り、今度は西に走って進む。このままだと2階は斜め方向が有力という事になるが、1階が西だっただけに可能性は高そうである。


 そのまま走り続け、遂に階層の端に辿り着いてしまった。一応左右を確認しつつ走ってきたが、斜め方向の階層の端ギリギリであれば、目視で確認するのは難しいというか、肉塊でも不可能だ。それだけ離れている。


 20キロ四方のギリギリなので、思っている以上に距離は長い。それはともかく、ミク達は走って戻りながら、明日は斜め方向に進もうと話し合う。あの1階を越えたからといって、そう甘くはないらしい。


 2階もなかなかに厄介な仕様になっていると思われる。1階への階段まで戻ってきたが、もしかしたらと思い【火球】を連射し、派手に雪を吹き飛ばす。しかし階段の近くには何も無かった。



 「東西南北に行って何も無かったからね。怪しむ気持ちは分かるけど、やっぱり2階は自力で突破しろって事か。1階と違って目印はあるし、迷うって事は無いからいいけど……」


 「明日も調べて無かったら、間違いなく雪の下に階段があるでしょうね。怪しい場所というのであれば、林の中を調べる必要があるでしょう。木々が邪魔で見えてないだけかもしれませんし」


 「それはね。一応は地形の確認なんかもしてるから、進路から逸れるものは調べてないし、そっちの可能性の方が高いかな? まあ、虱潰しらみつぶしに探せばいつかは3階に行けるでしょ」


 「もちろん行けるでしょうが、雪の下にある場合、ミク殿が再び灼熱地獄を作りかねませんよ? 私はそっちの方が怖いです」


 「あー……んー……ま、大丈夫じゃない。なるようにしか、ならないわよ」



 言われている本人はスルーしている。アレッサもティアも喋りながらチラチラとミクを見ていたが、最後までミクが反応する事は無かった。そしてそちらの方が怖い2人。


 ミクとしては広域破壊は2度とする気が無いのでやらないのだが、代わりにイリュに魔法陣を教えてもらおうと思うのだった。


 1階の魔法陣から脱出したミク達は、真っ直ぐに<妖精の洞>へと戻る。3人部屋に入り、防寒具を脱いで一息吐くと、暑さが和らぐまでしばしゆっくりと休む。


 暑さもマシになり、十分に涼んだら探索者ギルドへ。そして解体所に持ち込むと驚かれた。



 「今までは多くなかったが、今日はまた多いな。狼が15頭に、狐が18頭か。とんでもないほど狩ってきたが、何かあったのか?」


 「今までは1階で猛吹雪の舞う中だったんだけど、2階に進むと一転、夜じゃないうえ天気が良くて晴れてた。だから魔物と戦いやすくてね、それでこの結果になったんだよ」


 「それに1階だと1頭ずつ出てくるんだけど、2階だと複数出てきて連携してくるの。狼が前衛で、狐が後衛って感じかな? そうやって攻めて来るから意外に侮れない」


 「噛みつきにくる狼が前で、逃げ回って魔法を乱射してくる狐が後ろか。なかなかに面倒臭い形だな。流石は第7エリア、難易度が高くて厄介そうだ」


 「そうですわね。現在そこを少しずつ攻略していますの。急いではいませんけど、なかなか階段が見つかりません。焦ってはいませんが、厄介な事です。もしかして雪の下なんじゃないかとも言っているくらいなのですよ?」


 「雪の下ってのも大変だなぁ。本当にそんな所に階段があるなら、悪辣あくらつな事このうえないぞ。まあ、ワシらは五体満足で帰ってこいって言うだけだ。大きなケガをしなけりゃ何度でもやり直せるからな」



 そう言って親方は木札を渡してきたので受け取る。もちろん親方のアドバイスを聞くフリはした3人。どのみちミクが大きな怪我を負う事など無いし、アレッサとティアに何かあっても、好きに治せるのもミクなのだ。


 だからといって命を粗末にする2人ではないが、復活する、または蘇生させられる事もまた確信している。おそらくミク自身が納得するまでは、自分達に何かあっても無理矢理に蘇生させられると2人は思っていた。


 そしてミクは2人から要望が無い限り、復活させるつもりだ。十分に生きたと納得したなら放置するが、納得できていないのであれば生かす。元々そういうつもりで血肉を与えているのだ。


 ギルドの受付嬢から報酬を貰い、1人小金貨6枚と大銀貨10枚に分けて収納し、帰り道でミクは周りに聞こえないように、先ほどの話を2人に伝えている。



 「まあ、今のところは納得できるほど生きてないし、ようやく頭がおかしくない形で生きてるんだもの。後どれだけかは分からないけど、十分に生きるまでは死ぬ気は無いわ」


 「私も同様です。流石に我が国が無くなったならば考えますが、それまでは生きていようと思います。王太子殿下の玄孫やしゃごに会うのも面白そうではありますし」


 「向こうは言われても理解できないでしょうけどね。それでも間違いなく自分の祖先だけど、古すぎて曖昧なんじゃない? 私も面白そうだとは思うけど」



 <妖精の洞>へと戻った3人は、夕方近くだったので食堂へと向かい、注文をしていく。大銅貨12枚を支払い席に着くと、イリュがやってきて話し掛けてくる。そして同じタイミングでシャルとカルティクが帰ってきた。



 「おかえりー。ちょうどシャルもカルも帰ってきたみたいだけど、ここ最近どうなの? 第7エリアには行ってるみたいだけど、進展は無し?」


 「いーえ、今日は2階に行ったわよ。ただし2階もまた、すんなりとは突破させてくれないけどさ」


 「第7エリアともなれば簡単じゃないでしょ。私は今日も闘技大会を見てたんだけど、何だか妙な女がこっちに悪意を向けてくるのよねえ。敵意ではあるけど殺意ではない感じ。対抗心? が一番正しいのかしら?」


 「女? ……それって右手に槍を持った女じゃなかった? 何かスれてる感じの、良く言えばワイルドな感じの風貌をしてる……」


 「そうそう、そんな感じの女だったわ。となるとミク達にも悪意を向けてたって事? なかなかの自殺志願者ねえ」


 「悪意というか、何というか……そいつ、わたし達が防寒具を着ているのを見て笑ってたのよね。そのままついてきてさ、ダンジョン前で大きな笑い声を上げたんだけど、周りから冷ややかな目で見られてたわよ」


 「あー、そりゃそうだろうさ。第7エリアに行くって気付かれてるだろうし、防寒具を着て第7エリアに行ってるんじゃ寒い所だって分かるだろうからねえ。それを知らないヤツとバカにされても仕方ないよ」


 「朝に居る奴等ってだいたい似通ってるからね。更にはそいつらの口から広まっていくし。となると第7エリアに突入している者が居るっていうのは簡単に広まるのよ。ここはゴールダームだしね」


 「世界最高難易度のダンジョン、とされてる場所だ。そこの攻略なんだから、噂にのぼるのは当然の事さ」


 「それはそうなんだろうけど、闘技大会に出てるその女、面倒臭そうな絡みとかしてこないでしょうね? 何だか嫌な予感がするんだけど」


 「言いたい事は分からなくもないけど、闘技大会に出ていない私達に絡むのは無理でしょ。襲ったら唯の犯罪だし」


 「そこはまあ分からないけど、なーんか絡んで来そうな気がするのよねー」



 何かの予感を感じているのだろうか? そんなアレッサの言葉をスルーしてセリオに干し肉を食べさせているミクであった。


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