0302・ダンジョンに関する雑談
『美味しかったけど、パンだけじゃ満足できないよ。そろそろ夕方だし、食堂に行こう!』
「そうだね。そろそろ食堂に行って夕食を食べようか。蒸しパンとか揚げパンを食べた程度じゃ足りないだろうし、いつもの食事も食べられるでしょ」
「まあ、食べられるし、お腹いっぱい食べたところで太らないんだけどね。そこは感謝してる」
「ですね。お腹いっぱい食べても太らないって、地味に凄い事だと思います。ありがたいですけど、バレると面倒な事を言ってくる者が多そうですので、黙っておくのが最良でしょう」
「それはねー。わたしはそうなる前にヴァンパイアになっちゃったけど、順調に成長してたらそういう風に悩んだのかな? でも、田舎じゃお腹いっぱい食べられる事なんて無いけどね」
『そーなんだー、大変だねー。僕も草が少ない季節は、大変だったよーな気がする』
「でしょうね」
食堂に着いたので注文をし、大銅貨12枚を支払って席に着く。適当な雑談をしていると、シャル達が帰ってきたらしく、注文をしてお金を支払った後、席に着いたので話しかける。
「今日は何処に行ってたのか知らないけど、稼げた?」
「今日はダンジョンに行ってないよ。闘技大会の予選をウロウロしてただけさ。特にめぼしい奴等は居なかったから、今年は大した大会にはならないんじゃないかね?」
「<大地の剣>の連中はねえ……今日の予選は突破できたけど、明日はどうなる事やら。ゴールダームの探索者は【身体強化】の出来る者が多いから、覚えたばっかりの連中ではね」
「それでも連携はまあまあだから、運が良ければ本戦に出られるんじゃない? あくまでも運が良ければだけどね」
「現実を知る事が出来て、却って良かったんじゃないかい? あの連中は若いんだから、まだまだこれからさ。といっても若年部門じゃ、そこまで若い訳じゃないんだけどね」
「無差別の方も微妙よ。毎年と変わらない連中が順調に勝ちあがってるくらいで、特に波乱が起きるような顔ぶれではないわね。つまらないと言えば、つまらないわ」
「当たり前に強いと言うよりは、単に誰も強くなってないから同じ結果という感じよね。次のエリアに挑戦しようという連中は増えたけど、実力が伴った挑戦でもないから消えていってるのも居るし」
料理が運ばれてきたのでミク達は食べ始めるが、前に言っていた通り、先へ進もうとして死んだ者達も多いようだ。それは仕方のない事ではあるが、かといって戦力という意味では落ちてしまう事でもある。
「ラーディオンも困ってるでしょうね。若いのは入ってくるけども、ある程度の実力があって安定していた奴等が消えていってるから。中にはそれなりにギルドに貢献してくれていた者達も居るでしょうし」
「だろうねえ。それでもエクスダート鋼の材料を確保する連中に変動は無いんだろう? あいつらはそれだけで安定して儲けられるんだからさ」
「多分そうだと思う。私もハッキリと把握している訳ではないけれど、エクスダート鋼に関する文句を聞いた記憶は無いわね。多分だけど第3エリアの薬草関連じゃないかしら、減っているのは」
「あそこに薬草なんてあったのかい?」
「あるわよ。といってもポーションの材料とかじゃなくて、腹痛の時の薬草とか、熱が出た時の薬草などね。そういう薬草は第3エリアに割と生えてるのよ。ああいうのも大事だから」
「それはそうでしょ。むしろポーションとかよりも大事じゃない? 基本的に庶民が使う薬なんだし、むしろお金よりも皆の生活の為でしょ? 毎日せっせと採ってきてくれるのは助かるんじゃないの?」
「ええ。特に第3エリアは犯罪者が多いエリアだから、あそこで安定して採ってこれるっていうのは大きいのよね。私達みたいなのが巡回してるとはいえ、全部を見回れる訳じゃないし」
「20キロ四方だもの、1階層の大きさがどうしてもねえ……。その中で採取するのがどれだけ居るか考えたら、全部を助けるのは無理ってなるわよね。ゴブリンまで居るんだし」
「それがね、最近の犯罪者の中には、ゴブリンに殺される者も増えてきたみたい。どうも裏の連中や闇の連中は、相互に利用してたらしいのよ、魔物を片付けるのにね。それが機能しなくなってるみたい」
「裏の奴等も結託してたんだけど、誰かさんの所為で人数が減って手が回らなくなってきたと。それで綻びが出てるって事だね。一方的に犯罪者どもが探索者を誘拐するっておかしいとは思ってたけど、裏でそんな協力関係を作ってたのかい」
「あくまでも近くに寄ってきたら協力するって感じだったらしいけどね。それでも、裏の連中の方がしっかり協力し合うっていうのも……それはそれでどうなのか、と思わなくもないわ」
「言いたい事は分かるけど、犯罪者ほどそうじゃない? 自分達が罪を犯していると分かっているからこそ、そういう連中で協力し合うのよ。数が少ないから」
「数が少ない連中だからこそ、持ちつ持たれつになるのかしらねえ。まともな連中が協力すれば対抗出来るのに、ライバル視していたり、面倒臭がって協力しないと」
ミク達は食事が終わったが、話し合いは続いているので部屋には戻らないようだ。ミクはランサーブルの方の干し肉を出し、セリオに食べさせている。
「まあ、そういう事ね。それでも犯罪者が減ってる分、第3エリアから得られる素材は増えてる筈なのよ。ラーディオンが頭を痛めてるのは、おそらく第3エリアに行く者自体が減ったからだと思うわ」
「トレントも倒し方が分かったり、合同で組めば突破できるものね。そして第4エリアはランサーブル。お金稼ぎにはもってこいの魔物となるわ。お肉の値段が下がったとしても、十分な儲けよ」
「薬草よりもそっちを狙うのは、生活を考えれば分からなくもありませんわね。沢山採ってもそこまで稼げないものと、1頭倒せば生活できる魔物。どちらを取るかと言われれば……」
「1頭で大銀貨2枚だからねー、チームでも十分な収入だもん、そりゃ進むよ。トレントさえ倒せるなら、絶対に第4エリアに行くでしょ。……ランサーブルに勝てるかは知らないけど」
「そこなのよね。諦めて第3エリアに戻ってくれるなら良いんだけど、意地でも狩ろうとして誰か死んだら、それだけで解散という可能性もあるのよ。そうすると探索者自体を辞めてしまう場合もあって……」
「そうなると人員がチーム分減る事になるわ。とはいえ探索者に採ってこいと命じる事は出来ないし、小坊主も悩ましいところねえ。かといって、薬師から突き上げも来るでしょうから、最悪はギルドからの依頼しかないでしょう」
「ミクの御蔭で儲けてるんだろうし、ギルドから依頼しても問題ないんじゃないかい? 特に最前線の獲物なんて高く買うだろうさ、国の研究機関が」
「でしょうけど、それは何度もある事ではないでしょうしね。狐の方が安定した収入になるんじゃないかしら。服飾の店なんかが高く買いそう。ミク達か私達しか獲ってこれないでしょうけど」
「これの事?」
そう言って、ミクは今日狩った狐の毛皮を取り出す。実は解体して綺麗にし、乾燥させて揉みこんで柔らかくしておいたのだ。十分な毛皮となっているし、尻尾付きでもある。
「おー!! これは凄いわね、フワッフワじゃない。これなら安定的に儲かるでしょう、私も欲しいぐらいよ!」
「今日ギルドに行かないと思ったら、ミクはこれを作ってたの? 何で?」
「いや、レティーとセリオが寝るのに丁度良いかと思って」
「「「「「………」」」」」
それだけの為に、小金貨を捨てたのか? と言わんばかりの顔をしている5人であった。




