0299・再び第7エリアへ
昼になったので練習を止め、今日の練習は終わりにした。半日含めてゆっくり休めば、明日には十分回復しているだろう。そう思ったのでここで終わりとなった。
ウェンズは依頼の報酬を払おうとしたが、ミクは一回奢るだけでいいと言って<妖精の洞>へと戻る。本当に良いのかと困惑しているようだが、ミク達にとっては構わないのだ。
6人とも稼ごうと思えばあっさり稼げるし、そこまで稼ぐ事に苦労をしない。アイテムバッグがあり持ち運びも楽で、十二分に強い肉体も持っている。普通の探索者から金を取る必要も無いのだ。
<妖精の洞>に着いた面々は食堂に移動し、注文をしたら席に座る。ウェンズが代金を支払い、<大地の剣>も座ったようだ。レレアは相変わらずセリオを撫でているが、あれは不治の病に違いない。
セリオは全く気にしていないというか、撫でられても殆ど反応をしないのだ。鎧のような皮膚をしているので、外側を撫でられた程度では、殆ど何も感じないのかもしれない。
いわゆる毛皮というか、モフモフでもないのに好むレレアは、若干ズレた感じではあろう。爬虫類好きに通じるものがあるのかもしれないが、そこは本人の好みなので、やはり不明である。
昼食を食べ終わった後は<大地の剣>も宿に戻って行き、ミク達も3人部屋へと戻る。休むのかと思ったら、アレッサとティアは本体空間へと送られ、そこで特訓となった。レティーとセリオはベッドの上に居る。
◆◆◆
「いたたたた………前よりマシとはいえ、痛い事には変わりないわ。あれだけ偉そうに語っておきながら、あの5人より下手だったら凹むけど、流石にそれは無くて良かった」
「痛いのは痛いですけど、動きは5人よりも良かったです。まあ、比べてはいけないのでしょうが。あの5人は睡眠学習を受けたりしていませんし、私達の方が上手なのは当たり前とも言えますので……」
「まあねえ。日々練習ではあるんだけど、狩りもあったりして、色々練習時間がとれないっていうのもあるから、そこは仕方のないところでもあるのよ。それでも意識して動くようにすれば、上達はしていくと思う」
「まずは間違ってる事を意識して直す、かぁ……。明日から、頑張ろうっと」
「明日は久しぶりに第7エリアですか?」
「そうだね。別に闘技大会の予選なんて見る気ないし、明日は第7エリアの攻略かな? 前に行った方角がどっちなのかは分かってないんだよね、困った事に」
「まあ、夜の雪山で猛吹雪ですもの仕方ありませんわ。あの一面『お腹減ったー』真っ白……そうですわね、食堂に行きましょうか」
そこまでお腹が減る筈はないのだが、どうも飢えていた事と、娯楽としての食事を楽しむようになったらしい。元は飢え死にしかけていたので、ミク達もセリオに強く言う気は無いようだ。
ある意味で当然とも言えるし、ある意味では甘やかしているとも言える。どのみち太らないのだし、お金も還元する必要があるので、多めに食べるくらいは大した事でも無い。
食堂に移動して注文し、大銅貨を12枚支払ったら席に座る。適当に雑談しているとアレッサが酒を求めてきたので出す。ついでにティアも飲むらしい。セリオも飲みたがったが、ミクは食事の後にするように言った。
セリオはすぐに飲みたがったものの、別に飲めない訳ではないので了承し、運ばれてきた食事を美味しそうに食べている。禁止したところで反発するだけだし、アルコールの悪い影響など無いので飲ませる事は構わない。
ただ、食事の前に加減を知らずに飲むと、すぐに寝てしまうと思ったからであり、だからこそミクは食事の後にするように言ったのだ。
夕食を食べた後、セリオは深皿に入れられたミードを恐る恐る舐めていく。特にどうこうとは思わなかったらしいが、舐めていると段々効いてきたのだろう、頭が左右に揺れるようになってきた。
セリオは賢いのか、その時点で飲むのを止め、テーブルの上に転がる。どうやら眠気が襲ってきたらしく、既に半目状態になっていた。
「意外と言ったらなんだけど、本当はあんなに大きいのに、この程度の量のお酒で酔うんだね? 不思議と言うか何と言うか……」
「今は小さいから簡単に酔うのか、それとも元々ワイズライノはお酒に弱いのか。果たしてどちらなのでしょうね?」
「さてね? 少なくともセリオはそれぐらいで眠たくなっちまうって事だろ? ミクも試しで飲ませる為にそこまで入れてなかったみたいだし、良かったじゃないか。多く入れてたら無駄になって、勿体ない事をするとこだったよ」
「まあ、そうだけど、それぐらいは仕方ないんじゃない? それよりもミクが凍らせてくれてるけど、やっぱり味は落ちてるね。それでも美味しいのは凄いけど、出来立てよりは美味しくない」
「それは仕方ないでしょ。むしろお酒が長く保存できる方がありがたいわよ。エールとかも長く保たせる事ができそうだし、凍らせるのは悪くない方法よ。アイテムバッグを持ってないと無理だけど」
「あたしも適当な酒を買ってきて凍らせておくかね? そうすりゃキンキンに冷えた酒が飲めそうだし、暑い日は楽しめそうだ」
「フィグレイオよりは暑くなるとはいえ、ジャンダルコやエルフィンほど暑くなったりしないわよ? ゴールダームは意外と言ったらなんだけど、近くに遮る物は少ないからね。風がそれなりに吹くし」
「ジャンダルコは砂漠、エルフィンは森。片方はとんでもなく暑く、もう片方はジメジメしてるのよ。砂漠は仕方ないにしても、何故森に住むのか理解できないわね。暑苦しくないのかしら」
「あいつらの根性と同じで、ジメジメしてるのが好きなんじゃない? 知らないけど」
成る程と納得して笑いつつ、寝てしまったセリオを抱いて部屋に戻るミク。アレッサとティアを綺麗にして部屋も綺麗にすると、ほろ酔い気分のまま2人はベッドに寝転び寝てしまった。
ミクもベッドに寝転がると、瞑想の練習を始める。未だに休んでいるかどうかは不明らしい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌朝。日の出と共に目覚めたセリオ。またもやダンジョンにいけなかった事にガッカリしていたが、昨夜はダンジョンに行っていない事を話すと、胸を撫で下ろしている。
まだ朝早いので【浄滅】を使った後、適当に干し肉を与えて齧らせておく。適当に過ごしていると、アレッサとティアも起きたので朝の挨拶をし、準備を終えたら食堂へ。今日はアレッサがセリオを抱いているようだ。
いつものように注文をし、大銅貨12枚を支払うと席に座る。適当に雑談をしていると運ばれてきたので、3人と1頭は食事を始めた。シャル達は未だゆっくり寝ているらしい。
食事を終えたミク達は、部屋に戻って防寒具へと着替える。暑いので、すぐに宿を出発してダンジョンへ。周りから色々言われるものの無視し、第7エリアへのショートカット魔法陣に乗る。
久しぶりの夜の雪山に到着すると、セリオが大きくなると言うのでアレッサは地面に下ろす。少し離れた場所で大きくなり、4メートルもの大きさになったら出発。
ミクは魔法陣の形から東西南北を決め、前回に進んだ方角を北と決めた。今回は真反対の南へと向かう。前回と同じように雪道を踏みしめて歩いていくと、ある程度進んだところに魔物が居たので、【火弾】を使って炙り出す。
慌てて出てきたのは、前回と同じく白い狼だった。そして早速突撃するセリオ。しかし今回はあっさり回避され、逆に噛みつかれてしまう。
「あ! 危な、い……?」
噛みつかれたかに見えたセリオだが、白い狼の牙は食い込むどころか皮膚の表面を滑っているだけで、完全に無意味であった。むしろセリオに対してジャレついているようにしか見えない。
必死になってセリオに噛みつこうとしている白い狼は、何だか哀愁を漂わせていた。




