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0298・練習と雑談




 こちらはジェミとアラナ。ウェンズやダルクスのように武器の扱いにまで到達していない2人は、ゆっくりと動きながら扱いを学んでいた。ゆっくりと動く事で自分の体の使い方を学ぶ。



 「それじゃ、ちょっと速いわね。もう少し遅めよ。でないと相手の体を崩せないわ。怖いのは分かるし、速く動かしたいのでしょうけど、そこをグッと堪える事が出来ないと上手くなれないのよ」


 「うーん……もう1回お願いします。何か根性なしって言われてるみたいで嫌なんで、出来れば少しでも使い熟したいね」


 「うんうん、良い傾向ね。強くなるヤツというのは、その殆どが負けず嫌いなのよ。貴女、強くなる素質があるわ」



 ジェミに関する評価は悪くなく、全員が一致して伸びしろがあると評価していた。ウェンズは小さく纏まりすぎ、ダルクスは大雑把すぎる、レレアは小器用に走りすぎという評価だ。……そして最後の一人はというと。



 「そらそら、ちゃんと避けなさい! あんたが持ってるのは刺突剣でしょうが!! それは回避と攻撃を瞬時に入れ替える必要があるのよ。何チンタラしてんの、さっさと攻撃してこい!」


 「ひっ!? ふぁっ!! あ、あぶ、ふぇえ!? ち、ちょっと休ませ、いったーい!!」


 「ゆっくり動けって言ってんでしょうが! あんたは脳味噌ついてんの? 私の言ってる事が分かったら、ゆっくり動け!!」


 「いえ、だから、ゆっく、ひぃ!! あ、あぶ、いたぁ!!」


 「だからゆっくり動けって言ってるでしょうが! いい加減に言葉を覚えろ! お前の頭の中身に刻み込め!!」



 鬼軍曹が容赦なく叩いて教えていた。しかも大人バージョンというか美女バージョンで教えている為、余計に怖かったりする。情け容赦なく罵声を浴びせる超絶美人。これ以上は何も言うまい。



 「そうそう。ナイフって攻防両方に使えるんだけど、だからこそ瞬時に切り替えないといけないの。そして長柄と戦うと厳しいという現実が、ハッキリと牙を剥いてきたわね」


 「そうですわね。木の薙刀ですけど、ここまで長さに差があると、レレア殿は踏み込めないみたいです。仕方がないのでしょうけれど、そこで踏み込まないと勝機はありませんしね」


 「……厳しい。ここまでリーチに差があると、強引に力で弾き飛ばされる」


 「懐に入り込むまでに時間が掛かってしまいますからね。そうなると力で強引に排除できますし……でも長柄の方って確実に出場されるでしょう。特に槍は確実に出てきます」


 「うん。槍は確実に出てくるだろうね。そもそもリーチのある武器の方が有利だから仕方ないけど、懐に入り込めないなら、せめて防御に徹する練習しかないよ。時間を稼げば仲間が何とかしてくるだろうし」


 「そうですわね。団体戦に出場されるのですし、無理に自分で戦って勝つ必要もありませんわ。弓が使えるなら一番リーチが長いのですが、流石に闘技大会では禁止されておりますし」


 「まあねえ。純粋に武器の扱いの大会だから、魔法も禁止されてた筈。弓は優秀な武器だけど、こういう大会では禁止せざるを得ないのよねー」


 「そうしなければ出場者はアーチャーだらけになってしまいますし、それでは弓術大会になってしまいます。我が国の大会は闘技大会ですので主旨に反してしまいますし、流石にそれは出来ないでしょう」



 弓を使った方が有利なら、皆が弓を使うだろう。体重が重い方が有利なら、皆が太ろうとするのと同じ理由である。誰しもが有利な方へと流れるのは当たり前であり、そうなるからつまらなくなるとも言える。


 別に面白くする必要がある訳ではないが、それはいつもの狩りと変わらないのか? と、問われたら、そんな事はあるまい。全員がアーチャーの探索者チームなど無い訳で、大会の為に有利な者で揃えたのでは意味が無いのだ。


 だからこそゴールダームの闘技大会では近接武器のみと決まっており、遠距離武器や魔法を除外してある。盾は除外されていない為、どういう編成にするのかも頭を悩ませるのだろう。それゆえに大会は毎回盛り上がるのだそうだ。


 ミクは見る気も無いのでどうでもいいのだが、町は確かに浮き足立っている感じはする。



 「祭りの前日は何処の国だろうと町だろうと、こんなものさ。この祭りの前日が一番楽しいとも言われるねえ。祭りの間は関係者なんて忙しいし、終わったら寂しさが残るだけ。ワクワクするだけの前日が、一番面白いというのも分かるんだよ」


 「成る程、そういうものなんだね。やり直し。私は祭りなんて参加した事も無いし、見た事も無いからイマイチ分からないよ。まあ、闘技大会については見る気ないけど。もし見たとしても本戦からかな」


 「やり直しだ。いい加減、その硬い足は何とかならないかい? 予選から見ても楽しめるだろうけど、下手な奴等を見ても楽しくないと言われりゃ、確かに、としか言えないしねえ」


 「ま、またかよ。これ体力は使わねえし、休んでもいいって言われてるけど、段々と腕が上がらなくなってきたぜ。ウェンズはどうだ?」


 「僕の方も厳しいね。盾を持ち続けるのも大変だし、剣も地味に重量があって重い。そもそも剣を重いって感じるのも久々だよ、まるで初めて本物の剣を持った時みたいだ」


 「ああ、分かる。ここまでゆっくり動いて駄目だしされると、兵士の練習に混じってたガキの頃と同じで、感じるもんがあるな。何というか、自分がここまで下手くそだったのかと自覚するっつーかさ」


 「そうだね。あの時も適当に振ってたっていうか、それで笑われてたんだっけ。それが悔しくて練習してたんだけど、まだまだ下手だったんだって自覚したよ。もっと他の部分で強くなる方法とか思ってたけど……」


 「根本部分が全く足りてねえって自覚したな。ランクはコツコツ仕事してりゃ高くなる、ランクと強さは違うんだって言われてて、負け犬の遠吠えだとか思ってたが……」


 「本当に強い人は、基本から全く違うんだって分かったね。まさかここまで自分が適当に戦ってたなんて思わなかったし、ここまで適当に体を動かしてたとは思わなかった。ここから先に進まないと、第4エリアは無理なんだろうね」



 腰を下ろして座って雑談する2人に、先程まで適当に雑談をしていたシャルが話しかける。



 「あんた達、本気で第4エリアを攻略するつもりだったのかい? それだったら止めときな。第4エリアのボスはツインヘッドフレイム5頭だ。頭が2つあり、どちらの頭でもブレスを吐いてくる相手だからね」


 「ブレスから守れるだけの盾を持つか、ボスが出てきたら即座に殺していけるだけの攻撃力がいる。つまりブレスから身を守る防御力か、それとも一撃で殺す圧倒的な攻撃力。どちらかが無いと難しい」


 「それは……」 「どっちもねえなあ……」


 「もう1つは大人数で攻略するのに便乗するかだね。ただし便乗攻略じゃ、自分達で越えたとは言えないだろうけど。とはいえ探索者なら気にするなとは思うよ、あたしは」


 「第5エリアに行けば、マッスルベアーとスチールディアー。これは高値で売れるからね。先へ進んでお金を稼いでからリベンジすれば良いだけでもある。お金貯めて良い装備買って、それからもう一度挑戦すれば済むし」


 「そうそう。何も必ず自分達の力だけで攻略しなきゃいけない訳じゃない。特に第5エリアのボスは大変だからね。合同じゃないと、高い確率で死人が出るだろうさ」


 「第5エリアのボスって、そんなに強いんですか?」


 「強いっていうか、姿が透明で見えないんだよ。【気配察知】持ちとか居ないと、まともに戦うのは難しいのさ」


 「「………」」



 第3エリアから先の難しさをようやく理解したらしい2人。ここから先は一筋縄ではいかない、だからこそ多くの探索者が消えてきたのだ。


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