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0296・夜のダンジョン




 ミルクカウの乳を飲みながら待っていると、シャル達がやってきて注文をする。ドンナが樽の中に突撃しようとしたので素早く防ぎ、テーブルの上にあげて深皿に入れてやった。


 レティーは飲もうとすらしていないのに、何故ドンナは突撃するのだろうか? そんな事を思いつつ、雑談を続けるミク。



 『おおーっ! 昨夜も飲んだけど美味しいー! 朝のは冷たくて、これも良い。昨夜と違ってサッパリしてる!』


 「すまないねえ、ミク。まさか樽の中に突撃しようとするとは……ドンナ、樽の中に突撃したりするのは止めな。他のヤツの迷惑になるからね」


 『この体に感じる冷たさが素晴らしい! 暖かいときはまろやかな感じがしたけど、冷たいとシャキっとして、これは……』



 シャルがドンナを鷲掴わしづかみにし、持ち上げて説教をし始めた。まあ、当然の措置だろうと思いつつ、イリュやカルティクがミルクカウの乳をコップに入れて飲むのをボーッと見ているミク。



 「うん、昔飲んだ味とは違うと思うけれど、確かに記憶の中にあるミルクカウの乳と似ているわ。それにしても、冷たいと確かにサッパリして美味しいわね。これはこれで素晴らしいわ」


 「美味しい! 多分だけど昔飲んだ物よりも美味しいと思う。私も朧気おぼろげに記憶はあるけど、こんなに美味しかった記憶が無いのよね。いやー、それにしても美味しい。ここ最近、ゴールダームでは美味しい魔物が居ないから」


 「あのデカイ海老は? あれは結構美味しかったと思うけど? それと亀。あの亀肉も美味しかったし、今日の夜は第5エリアと第6エリアで美味しい肉を獲ってこようかな」


 『美味しい肉! 肉なら僕も戦う! そして僕の分を作ってもらうんだ』


 『あー、ズルイ! スライムの私達じゃ倒せない! それはズルイ!!』


 『いや、知らないよ。そんな事を言われても困るし……』


 『ズルーイ! ズールーイー!!!』


 「あーあー、分かった、分かった。今日の夜に行くから連れてってあげるよ。なんかさ、我儘わがままを言う為に全方位の【念送】を使ってない?」


 『………』



 スライムなので口笛を吹いている訳でもない筈だが、少なくともそっぽを向いている気はする。何故かは分からないものの、そういうオーラというか雰囲気は出ているのだ。なんとしても誤魔化してやろうというオーラが。


 そんなドンナを呆れて見ていると、<大地の剣>の5人がやってきた。どうやら疲労困憊で帰ったからか、特に2人は完全に筋肉痛のようである。その2人にミクが注いでやり、コップに入れた乳を渡す。



 「あたた、おはよう……って、これなんですか? ……ミルクカウの乳? 変な物を飲んでますね。何なのか知りませんけど」


 「えぇーーーっ!? こ、これがミルクカウ? ………お、美味しい。凄く美味しい。痛みを忘れそうなぐらい」


 「何を大袈裟な事を言ってるのよ。ハチミツとかそんなんじゃないんでしょ?」


 「ミルクカウの! 乳は! 一杯で! 小銀貨2枚もするんです!!」


 「「「えぇーーっ!?」」」



 驚くウェンズとダストンとジェミ。しかしその横で、聞こえるか聞こえないかの声でレレアがボソッと呟く。



 「……それは本国の平民値段。貴族相手だともっと高い」



 そしてそんな声を逃さず聞いている肉塊とブラッドスライムとワイズライノ。とはいえ、何かを言う事もなくスルーした。言う意味も無いし、言ったとしても誰も得をしないだろう。


 食事が運ばれてきたので食べ始めると、慌てて注文する<大地の剣>。随分と騒がしかったが、やるべき事はやっておくべきである。ミク達も急いでないから良いが、待たせるというのは良い事ではない。


 食事が終わった後も雑談をし、<大地の剣>の食事が終わったら王都の外へ。昨日と同じく練習をし、昼になったら<妖精の洞>へ。食堂で注文し、大銅貨12枚を払って、料理を待つ。


 流石に2日目だから大丈夫だろうと思ったら、今日もセリオを撫でて喜ぶレレア。本当に小動物に弱いようだ。


 昼食が運ばれてきたので食事を始めると、名残惜しそうにレレアは離れる。明日もう1日あるのだが、明日もする気だろうか?。


 食事が終わると再び王都の外へ。【身体強化】を教えているものの、明日もコレで終わるだろう。せめて最低限には整えたいが、難しいのが実情だ。それでも基本的な部分を駆け足で詰め込んでいく。


 夕方近くになり解散。今日も元気に倒れているが、それは全力を出した証だ。むしろ元気な方が駄目なのだから、それで良いと言いつつ回復するまで待つ。


 <大地の剣>が立ち上がると、一緒に王都の中に行き、ミクは南東の店が並ぶ区画へ。保存食を幾つか買いに行くので、アレッサとティアもついていく。


 ミクは保存食を見て回り、いつもの大麦パンを購入しつつ、他に何かないかと探す。しかし思ったような物は無く、仕方なしに小麦だけを買って帰る事にした。全部で中銀貨1枚で済んだので、おそらく安かったのだろう。


 そのまま<妖精の洞>に戻り、ミクは食堂へと行く。注文をした後で大銅貨12枚を支払い、席に着くと先に戻ってきて酒を飲んでいた3人と雑談をする。


 途中から段々と酔っていく3人と適当な会話をした後、運ばれてきた食事を食べたら部屋へと戻っていく。酔っ払いに付き合うのも大変なのだ。


 いつも通りに綺麗にした後、夜になるまでゆっくりと待ち、夜になったらレティーとセリオとアイテムバッグを本体空間に移し、ムカデの姿で窓から外へ。


 シャルの部屋に行ってドンナを回収したら、オークの姿で第5エリアのショートカット魔法陣に乗る。誰かに見られていても大丈夫なようにオークの姿にしたが、誰も見ていないであろう事は確認していた。


 そのまま第5エリアを進み、マッスルベアーとスチールディアーの出る5階以降へ。オークの姿でいるからか魔物が困惑している気がするが、立ち上がり吠えて威嚇してくるマッスルベアー。


 ふとした思いつきで、ミクは触手を使い股間を攻撃する。しなった触手が鞭のように直撃し、股間に凄まじい衝撃を受けたマッスルベアーは、痛みに悶絶するどころか泡を吹いて気絶。流石の威力にミクも唖然とする。



 (えー………。完全に泡を吹いて失神してるんだけど? 私の予想では強い痛みに悶絶して、滑稽な踊りでも見せてくれると期待してたんだけどなぁ)



 何を期待してるんだ、何を。そう言われるような予想をしつつやらかしたミク。失神させたまま本体空間に移動させ、殺すと同時にドンナに血を飲ませる。それが終わると分体側に移し、肉だけをゲットして残りは捨てた。


 エクスダート鋼の材料だが、大量に売ると怪しまれるので売る事は止める。唯でさえ前に大量に流した事があるのだ。これ以上はマズいだろう。


 試しに作ってみたマッスルベアーの干し肉はそれなりに美味しかったものの、その程度でもあった。それはスチールディアーも変わらずであったので、第5エリアをさっさと出る事に。


 美味しい肉なら干し肉にしても美味しい。そう思ったが、そこまで甘くはないようだ。そんな事を考えつつ、第5エリアを出たミクは第6エリアへ。


 今度は北へと行き海岸線に出ると、亀を探す。とりあえず出てきたマーマンは殴り殺し、ビッグクラブは触手で貫く。蟹も美味しいわけではないので捨てていき、亀を探して歩くミク。


 見ている方向に発見したミクは近付き、亀の噛みつきよりも速く首を握る。その後は引き千切って倒すと、亀を本体空間へ転送。レティーとドンナが仲良く血を飲んでいく。


 喜んでいるので、やはり亀の血は美味しいらしい。


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