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0295・再び乳搾りへ




 <大地の剣>と別れて<妖精の洞>へと戻ってきたミク達は、食堂へと行き注文をする。テーブルの上に乗っているセリオを撫でているアレッサとティア。それを見ながら注文をとっている店員。


 大丈夫なのか気になるところではあるが、大銅貨12枚を払ったミクは放置する。注文が間違っていた時に怒ればいいやと思いながら。



 「それにしても下手くそな連中だったわね。あの程度の実力で、よくトレントが倒せたと思うわ。おそらくはマジシャンの攻撃力で突破したんでしょうけど、ゴブリンの森は越えられても、その先はカルの言う通り無理ね」


 「ああ。あの実力じゃ、とても第4エリアは攻略できない。ツインヘッドフレイムも然る事ながら、そもそもそこまで行けるのかすら疑問だよ。金を稼ぐ事は出来ても攻略は無理だね」


 「そもそもツインヘッドフレイム自体が弱くないもの。永く、多くの探索者を足止めしてきたボスよ? 簡単に倒せるなら誰も苦労はしないわ。もちろん全く苦労しない者も居るんだけどさ」



 何処かの肉塊はつまらなそうに殺しているが、それでも気を抜く事まではしない相手である。ブレスというものは、本来それぐらいに厄介なのだ。使わせないように立ち回り、使われる前に倒しているから楽勝に見えるだけである。


 もちろんそれが出来れば一番良いのだが、残念ながらそれが出来るのは僅かな人物だけである。それでもボスが出現して即座に【身体強化】をして襲いかかれば、勝機は十分にあるだろう。そこまでの技術があれば。



 「そうなのよねー。あいつらには、そこまでの技術が無いのよ。戦闘技術だけじゃなく【身体強化】の技術も無いどころか、今日教えたばっかりなんだもん。あれで、どうやって第4エリアを攻略する気だったんだか」


 『僕でも上手く【身体強化】できるのに、あの人達下手だったねー。もっと練習しなきゃ駄目だよ。レティーなんて僕よりも上手く使えるんだよ?』


 「「「「「えっ!?」」」」」


 「あれ? 知らなかったの? レティーは普通に【身体強化】が使えるし、それで体当たりすると結構な威力が出るよ。そもそも私の血肉の所為か、かなりの耐久力と防御力を持ったみたいで、とにかく頑丈なの」


 『そうですね。かつてのスライムとしての脆弱さが嘘のように体が強くなりました。それはドンナも変わりませんよ?』


 『私も頑丈だけど、わざわざ痛い思いする必要もないから、発揮する場なんて要らない』


 「まあ、発揮してくれとは思わないけど、まさかそこまで頑丈だったとはねえ」


 「それはともかくとして、今日の夜、寝静まってからドンナを連れて第5エリアに行ってくるから。レティーもそうだけど血を飲んでないからね、行って血を飲ませておくよ。ついでにデカイ海老でも採ってこようかな?」


 『私としてはミルクカウの乳でも良いのですが……。あれは栄養があって美味しかったですから』


 『むっ!? それ知らない! 何か知らないけど、私も食べる!!』


 「ミルクカウって事はドルム近郊のダンジョン、第4エリアだね。別に飛んでいくのは容易いし、すぐに着くからいいけど、ついでにランサーブルの干し肉とチーズモドキも追加で作っておこう」


 『干し肉! 僕も食べますから、連れてって下さい!』


 「いや、連れて行くけど、多分寝てるんじゃないかな? 私の血肉が混ざってるとはいえ、セリオは普通に眠るみたいだし。それはレティーもドンナも変わらないけどね。本当の意味で休まないのは私ぐらいだよ」


 「わざわざドルムまで行くのは大変だけど、ミクなら飛んでいくからすぐか。すまないけど、ドンナを頼むよ」


 「分かってる。任せておいてよ」



 夕食が終わり部屋に戻った3人は、多少雑談をした後でベッドに横になる。ミクが綺麗にしてから再度寝かせ、レティーとドンナとセリオもミクのベッドに寝転がった。ミクもベッドに寝ると、夜になるまで待つ。


 2人も眠り、町も寝静まった頃、ミクはレティーとドンナとセリオにアイテムバッグを本体空間に転送し、ムカデの姿になると窓から出て屋根の上へ。そこからピーバードになりドルム地下王国の王都ドワンへ。



 ◆◆◆



 ドワン近郊のダンジョンに着いたミクは、すぐに美女の姿に戻り、服を着た後で第4エリアへと入る。草原が見えるとすぐに移動を開始し、突っ込んできたランサーブル4頭に触手を突き刺して殺す。


 すぐに本体空間に送り、レティーとドンナに血を飲ませた。セリオは本体の上の方に運ばれ、そこですやすやと眠っている。血を飲み終わった死体は解体され、要らない物は分体の方に送って捨てておく。


 本体が干し肉作りをしている最中に、分体はミルクカウを捕獲。樽の中に乳を搾って入れ、終わったら解放する。



 「モー………」



 相変わらず哀しい声を響かせながら去っていくミルクカウ。乳を搾りきられるまでは狂ったように暴れる癖に、乳を搾りきった途端にアレである。これが天然のミルクカウなら申し訳なさも湧くだろうが、ダンジョンの魔物では何も思う事は無かろう。


 肉塊はそんな事すら思わず、黙々と乳を搾っている。既に1つの樽はいっぱいになり、本体空間に送り済みだ。レティーとドンナが美味しく飲んでいるみたいだが、ドンナがミルクカウの乳にハマった気がする。


 面倒臭い事を言い出さなきゃいいけど……。そう思いながらもランサーブルを倒して本体空間に送り、血を飲ませては要らない部分を捨てる。ミルクカウからは乳を搾り、樽を一杯にしたら本体空間へ。


 流石に満足したのか乳を飲む事はないが、それでも1樽は飲みきったレティーとドンナ。今は本体の干し肉作りとチーズモドキ作りを見学している。ドンナに関しては、微妙につまみ食いをしているのだが、本体も目くじらは立てていない。


 夜の時間をいっぱいに使い、十分な干し肉とチーズモドキと1樽の乳を手に入れたミク。冷やして【浄滅】を使えば腐敗は防げるだろうと思い、セリオに飲ませてやるつもりで1樽確保しておいたのだ。


 ダンジョンを出てピーバードの姿になると、ゴールダームの王都に向かって飛ぶ。空高くを飛んでいると、再びドラゴンを見かけたがスルー。ゴールダームへと無事に戻った。


 <妖精の洞>の屋根に乗り、ムカデの姿になってシャルの部屋へ。ドンナをベッドの上に置くと、3人部屋へと戻る。そしてベッドの上にレティーとセリオを出すと、寝転がって瞑想の練習を始めるのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 大凡おおよそ2時間ほどで朝となり、起きた2人に朝の挨拶をする。いつも通り準備を整えて部屋を出ようとすると、アレッサが寝ているセリオを抱いて出た。ちょっとティアが羨ましそうにしている。


 ミクは何も言わずに食堂へと移動し、注文した後に大銅貨12枚を支払う。テーブルの上でセリオを寝かせていると、どうやら起きたようだが……。



 『ふぉっ! お肉! 僕の肉!! …………僕のお肉どこ?』


 「はい、おはよう。また全方位に【念送】使ってるから、気をつけるようにね。後、もう朝だから干し肉作りは終わってるよ」


 『………』



 愕然とした顔なのは表情から分かるが、そこまでか? と思いつつ、ミクは木で作った深皿と樽を出し、ミルクカウの乳を入れていく。それを見ているセリオの目が、段々と輝いていくのも分かった。


 随分と表情が豊かだな?。



 「これが昨日言ってたミルクカウの乳ね。冷やして【浄滅】を使ってるから、お腹を壊すなんて事はないよ。流石に安全の為には、今日中に飲んでしまった方が良いと思うけどね」


 『ほぅぁぁぁっ!! コレ美味しい! 凄く美味しい!! ミルクカウの乳凄い!!』


 「そっかー、美味しいを通り越して凄いかぁ。……うん、前に飲んだのと違って冷えてるとスッキリしてるね」


 「そうですね。これもまた美味しいです」



 どうやら冷えた物も好評のようである。


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