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0294・練習1日目終了




 昼食の時間になったので一旦王都に戻り、<妖精の洞>へと歩いて行く。その道中も「疲れた」だの「何で私だけ」という言葉が聞こえてくると、その度にイリュがアラナを睨む。そして愚痴は止まるのだった。



 「………やはり暴力は全てを解決する」


 「「しないよ!」」 「しねえよ!」


 「何だって急にあんな考え方になったのかしら?」


 「多分今まで散々悩まされてきたんでしょうね、そこの甘ったれに。その悩みが暴力で解決されたからこそ、そう思うんじゃない? 気持ちは分からなくもないわ」


 「………」



 どうやら自分が周りにどう思われていたか、段々と理解してきたらしい。急に黙ったかと思えば、キョロキョロし出す。



 「なに? やっと気づいたの? 甘ったれなヤツなんてチームに置いておく筈ないでしょ。今までは上手くいってたからといって、これから先も変わらないなんてあり得ないのよ。チームにお荷物が1人居ると、それだけ死亡確率が上がるの。それを分かってる?」


 「貴女の所為で死亡する仲間が出かねないという事です。その時に貴女は責任をとれますか? そうなっても誰かが悪いで済ませるのですか?」


 「………」



 命が掛かっている事に関して、シビアになるのは当然の話である。失われてしまえば終わるのだ、誰しもそこから遠ざかろうとするのは自然な事であり、その為に邪魔なものを切り捨てるのも自然な事だ。



 「いい加減、ここらでそろそろ気づけと言ってるのさ。邪魔者が切り捨てられるのは当たり前だとね。チームの雰囲気を悪くするヤツも同じさ。和気藹々としなくちゃいけない訳じゃない、チーム仲の良くない奴等も居る。だけどね、他人の邪魔はしないんだよ」


 「他人の足を引っ張るヤツっていうのは、何処ででも嫌われるの。貴女がやってる事は、何処ででも嫌われる事なのよ。自分が正しいと思う事と、他人が不快に思うかは別。幾ら自分の中で正しいと思ってても、それで他人を不快にさせるヤツは認められない」


 「仮に表では笑顔で付き合ってくれていても、裏では随分とけなされて見下されてますよ? そんな事は当たり前ですし、他人を不快にするような人が受け入れられる事はありません」


 「………」



 シャル、カルティク、ティアから怒濤の攻撃を受けて、流石に凹むアラナ。特に今まで自分のやってきた事なので、尚の事、心にクるのだろう。されど自業自得である。とある調子に乗っていたランク11を思い出すのは気のせいだろうか?。



 「あんたもそのうち悶絶する事になるわよ。<影刃>って呼ばれてるカルティクに対抗心を燃やしてた女も、現実を理解したら、今までの行動と言動が恥ずかしくなって悶絶してたからね」


 「今は分からなくても、そのうち悶絶するときが来るわ。とにかくその性根だけは叩き直してあげるから覚悟しなさい」


 「………はい」



 <妖精の洞>に着いた一行は食堂に入り注文をしていく。ミクは大銅貨12枚を支払うと席に座り、適当な雑談をしている。セリオもテーブルの上に居るのだが、何故か色々な人物から触られていた。


 本人は特に気にしていないものの、どうしても触りたいらしい者達が順繰りに撫でたりを繰り返す。特に酷いのレレアだ。



 「レレアって小さな動物好きなの? やたらに触ってるけど、そんなレレアを初めて見るからさ。ちょっと気になっただけで、別に文句を言ってる訳じゃないから!」


 「そう………」


 『おねーちゃん、さっきからずーっと触ってるね? 別にいいけど、飽きない?』


 「飽きない」



 そう言いながらも撫で続けるレレア。処置無しとして呆れるジェミ。そこまでかと思うも、感性は人それぞれであり、嵌まる人は嵌まるのだろう。話しかけたり撫でたりを繰り返していると、料理が来たので早速飛びつくセリオ。


 食事となったので渋々離れるレレア。このチーム、何だか駄目なヤツが多いなと思うミクであった。尚、セリオは周囲など全く気にせずに食事をしている。


 昼食後、再び王都の外に出て練習の開始。アラナは「ひーひー」言いながら鬼軍曹に扱かれているが、その御蔭か他のメンバーから愚痴は聞こえてこない。文句を言おうものなら、間違いなく同じ目に遭わされるからだ。


 【身体強化】は比較的簡単に使えるようになったが、問題はここからとなる。他の多くの探索者もそうだが、【身体強化】を高いレベルで使い熟している者をミクは見た事が無い。


 唯一優秀だと言えたのが、【剣神の導き】なのだからお察しレベルである。それらを1つ1つ丁寧に教えていくミク。アレッサやティアを叩くものの、教え方そのものは丁寧だったりするのだ。


 だからこそ2人は余計に叩かれる事を嫌がるのだが、教え方は丁寧なので分かりやすい。ただし、それが出来るかどうかは別である。



 「うぐぉーっ、上手くいかねー! 何でこうなるんだ? 言われた通りにやってるのに全然だぞ!」


 「僕の方も全く上手くいかないよ。【身体強化】が使えると思ってたけど、全く使えてなかったみたいだ。というか、こんなに難しいものだとは思ってもみなかった」


 「確かに今までとは違う強さが出せるけど、だからこそ戦い方が完全に変わっちまうぜ? 1から組み立て直さなきゃなんねーけど、これはもう仕方ねーな」



 ダルクスがそう言いながら見ている先にはジェミがおり、そのジェミはミクと稽古をしていた。左手に直径60センチのラウンドシールドを持ち、右手に双節棍を持っていて振り回している。



 「あいたぁ! いたたたたた………。これ、使うの難しいんだけど!? 本気で使える武器なのか怪しいっていうか、本当に武器なんだよねコレ!?」


 「そうだよ。それは立派な武器。遠心力で敵にブチ当て、間が鎖だから手に衝撃が殆ど来ない。更には打撃武器だから万人向けとして使える。使い熟すには練習が必要だけど、それはどんな武器でも変わらない」


 「メイスは練習しなくても殴れば良かったんだけど!」


 「それでも立ち回りをはじめ、色々な事は練習しなきゃいけない。そもそもマジシャンは魔法を使えばいいっていうポジションじゃないよ。それ以外にも出来る事はいっぱいある」


 「それはそうだけど……」


 「出来るようになっておかないと、死ぬかもしれないからね。せめて出来るようになりなよ。生き残る確率は上がるし……死にたくないんでしょ?」


 「当たり前じゃない! 死にたくないのは誰だって一緒でしょう!!」


 「そうかな? それ以外にも何かありそうだけどね? ……ま、詳しくは聞いたりしないけど、死にたくないなら平時に練習して備えておくべきだよ。追い詰められてから後悔する前にね」



 ミクの言葉を聞き、一層熱が篭もるジェミ。彼女の過去にまつわる事が原因ではあるものの、それで努力できるなら何でもいい。そしてその熱にあてられるように、他のメンバーも励むのだった。



 ◆◆◆



 その結果、倒れ伏して動けなくっているが、それは全力で努力した証でもある。明日は筋肉痛かもしれないものの、それはそれで仕方ないだろう。ポーションを使えば治せるが、無理に治しても意味は無い。


 息が整い、多少の体力が回復した段階で、ミクが【浄滅】を使って綺麗にしておく。盾と双節棍に関しては、唯の手製なのでプレゼントした。そもそも余っていた物を使っただけなので気にせずともいい。そう言っている。


 実際に盾はトレントの木の上から、エクスダート鋼を貼り付けた物であり、双節棍はウィリウム鋼で出来ているだけだ。もちろんミクは説明などしていない。どうせ今までに手に入れた物を使っただけなのだから、元手はタダである。


 ウィリウム鋼? 当然、<剣のレーグス>の持っていたアレも使った物だ。泉下で怒り狂っているかもしれないが、肉塊には聞こえないので、どうでもいい事でしかない。


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