0293・5人の練習
「そもそも1チームにマジシャン2って継戦能力が低いわよね? 何でそんな編成になってるのか分からないけど。もしくは2人とも武器を使ってる?」
「私はメイスを使ってます。武器を振るの下手なんで、あくまでも簡単なヤツですね。でも力が無いからか、あんまり威力が出ないので、戦力としては……」
本来は口調の荒いジェミだが、流石にバケモノ揃いの中では丁寧な話し方になるらしい。仕方がないとはいえ、ちょっと話しにくそうに話している。
「私は刺突剣ですね。軽くて使いやすいのと、刺せば済むので楽なんで使ってます。これも威力はそこまで出ませんけど、それでも牽制にはなりますし、重い物を持つと疲れちゃうので」
「何だか戦いを舐めてるとしか思えないヤツが居るねえ……。で、そっちのアーチャーは?」
「私は……弓矢で。接近されたらナイフで戦います」
「レレアのナイフ使いは上手いんですよ、更には近接戦闘も嫌がりませんし回避も得意です。となると……やっぱり穴になるのは2人ですか?」
「そのうち役に立たないのは、アラナって方だね。ジェミの方は根性がありそうだから何とかなるけど、根性の無い面倒臭そうな方はどうにもならないかもね。こういうのは本人のやる気が全てだ」
「むっ。やる気はありますし、他人にどうこう言われる筋合いはありません」
「そういうヤツほど、自分がマヌケなのを理解していないのさ。自分より上手いヤツに話を聞いたりして上手くなっていくもんだ。自分1人の努力だけで強くなれるヤツなんて居ないんだよ」
「………」
アラナは明らかに不服そうな顔を隠そうともしていない。だが、こういうヤツには何を言っても無駄なので、シャルはそれ以上を言うのを止めた。自分を省みず、チームのお荷物になる者の末路は追放しかない。
本人がそれに気付いているのかは知らないが、甘ったれていられるほど探索者というのは甘くない。小さな不満がやがて大きな罅を生み、そしてチームを崩壊させる。誰だってお荷物を抱えたまま戦う事はできない。
「むしろジェミが盾を持ったら良いと思うよ。それと武器はフレイルね、もしくは双節棍でもいいけど。それでいけば問題は無いんじゃない?」
「フレイルは分かるけど、双節棍って何?」
「フレイルは棒の先端から鎖が出ていて小さな棒に繋がってるでしょ? 双節棍は棒の先端から同じ長さの棒に繋がってるの。それを双節棍って言ってね、手に衝撃が殆ど来ないのと、遠心力で威力が上がる武器」
「ふーん……。ミクはそう言ってるけど、どうする?」
「私が盾? んー……持てるような気がしないんですけど、大丈夫ですかね? 私非力だから困ってるんですよ、何で重装備を薦めるんです?」
本気で悩んでいるのか、ちょっと言葉使いが崩れているジェミ。とはいえ誰も気にしていない。言葉使いが荒いかどうかではなく、大事なのは相手に対して礼儀があるかどうかである。
もちろん礼儀の中に言葉使いも入るのだが、育ってきた環境もあるので、探索者の間ではそこまで口うるさくは言われない。
「盾と言っても、持たせるのはラウンドシールドだね。それも小さ目のヤツ。出来ればガッチリ守るんじゃなくて流す技術を持つ感じだよ。防ぐのは相当厳しいし、最初から期待してない。下手に防ぐと危険な事も多いからね」
「盾は分かりました。でも、そのよく分からない武器は……」
「別に駄目なら他の武器でもいいけどね。メイスが非力だから駄目だとなると、魔物に大きなダメージを与える武器はそこまで多くない。ちなみにだけど、大した事の無いダメージなら魔物は怯みもしないよ?」
「それは………」
「確かにそうだな。オレの攻撃でも、ものともしないっていう魔物は居たし。現にランサーブルが、もうそんな感じだからなー」
「アタッカーは足を潰しなさい、足を。何で普通に攻撃してんの? っていうか、あんた武器なによ?」
「いえ、剣ですけど………?」
「アタッカーなら、もっと重量級の物で一撃を加えなさい。何でアタッカーの癖に剣を使ってんのよ。それこそポールアックスとか、ハルバードとか使いなさい」
「いやー、ずっとコレでやってきたんで……。つーか、今まで剣に文句を言われた事はないんだけど」
「アタッカーが早く敵を動けない状態にするか、または戦闘不能にしないと、いつまで経っても戦闘が続いてしまいますよ。特に四つ足の魔物は、足を1本でも潰せば碌に動けなくなります」
「そもそもなんだけどさ、こいつら【身体強化】が使えないんじゃないのかい? もしくは使えても数人だけだろ」
「えっと、使えるのは僕だけですね。他のメンバーは……無理だったよな?」
「「「「………」」」」
どうやら<大地の剣>はリーダーのウェンズが1人で頑張っているチームだったらしい。こいつらには【身体強化】を教えるのが先だ。そう決めたミク達であった。
食事も終わった一行は、王都の外に出て闘技大会の会場とは逆方向に行く。会場も急いで作っているらしく、そろそろ完成するだろうと思われる。そんな会場を横目に見ながら、ミク達は離れて人気の無い所へ。
開けた場所に行くと、それぞれ1人ずつに【身体強化】を教えていく。ウェンズにも教えているのは、【身体強化】にも上手い下手が存在するからである。下手な【身体強化】は強化量も低く、消費も激しい。
使った所で有利になれる時間は短い。だからこそ、僅かにしか使わないなんて方法が技術のようになってしまうのだ。
僅かな時間だけ使い、威力の底上げなどをするという使い方だが、果たしてそれが本当に良い方法だと思っているのだろうか?。
真面目に考えて、武器を振る際の腕などに使うよりも、体の連動全体で使った方が圧倒的に威力は高くなる。そもそも腕だけで武器を振っている時点で論外なのだが、流石にそこまで酷くは無かったらしい。
ウェンズとダルクスは体全体で振る事そのものは出来ている。技術的には拙いものだが、出来ていない訳ではない。そしてレレアは元々アーチャーなので問題は無い。ティアと同じくステップが得意なようだ。
やはりお荷物になってくるのは残る2人のようだが、下町生まれのジェミは根性があるのか地道に頑張っている。しかしアラナは出来ないとすぐに諦めてしまうらしい。それでも<鮮血の女王>が怖いのか従っている。
そんな状態で修練をさせていくのだが、後3日しかないのに大丈夫か、こいつら? そんな思いを持ちつつも、出来得る限り教えていく。ミクが全体を見て確認し、他のメンバーがそれぞれを教えている。
何故かシャル達も居るが、単に暇なので手伝っているだけらしい。たまには別の事がしたいという事だろう。悪い事ではない。悪い事では……。
「何度言ったら分かるのかしら? そんな荒い使い方すんなって言ってるでしょうが! 少しはそのカラッポの頭に叩き込め!!」
「やってます! やってますから!!」
「出来てないから言ってんでしょうが!! 初めからやり直し! 雑に使うんじゃない!!」
「ひー!」
「流石は<鮮血の女王>と呼ばれる方ですね。あのアラナが従ってる……。僕が何回言っても聞かなかったんですけど、やはり強者には逆らえないみたいです」
「元はダルクスとアラナが酷かったのよ。ダルクスは凹んでからマシになったんだけど、アラナは相変わらず毒舌のまんまだったから。商家のお嬢さんが抜けないんだろうね」
「親の金で家庭教師つけてもらって、それで魔法を習ったんだったか? その家庭教師も随分苦労したろ。持ち上げなきゃ練習もしねえし、いっつもジェミとレレアが色々言ってたからなー」
「……暴力の方がいう事をきく?」
レレア、それは止めておいた方が良いと思うぞ?。




