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0292・久しぶりの5人組




 夕食も終わり、部屋へと戻る3人。いつものようにベッドに横になろうとする2人を持ち上げて脱がし、【清潔】と【聖潔】を使い清めた後、部屋全体に【浄滅】を使ってから服を着せる。


 後はベッドに寝かせ、レティーとセリオもベッドに寝かせた。レティーはミクと同じく眠る事はないが、かといって意識を手放せない訳ではない。なのでベッドでは最低限以外、意識を手放している。


 ミクも分体から意識を失くす事は可能だが、だからといって本体も同じ事が出来る訳ではないのだ。その本体は常に起き続けている為、少しでも休ませたいのだが、それは未だに上手くいっていない。


 今日も瞑想をして、少しでも本体の意識を休ませようとしているのだが、上手くはいかないのであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。日の出より少し遅くに起きた2人に合わせ、ミクも起きて挨拶する。準備を整えて部屋を出ようとするも、アレッサが寝ているセリオを抱えて先に出ていく。本当にぬいぐるみ扱いをしている気がするが、気のせいだろうか?。


 食堂に移動して注文し、大銅貨12枚を渡して食事を待つ。テーブルの上で寝ているセリオを見つつ、今日はどうするかと考えていると、久しぶりの若者達が来た。



 「あれ? イリュに喧嘩を売ったバカじゃない。よくここに顔を出せたわね? その根性だけは褒めてあげるわ」


 「おはようございます。流石に反省しているみたいなんで、勘弁してやって下さい。ダルクスもあの後からは揉め事も起こしていませんし、前に1度、謝罪にも訪れましたので……」


 「あの時は本当に申し訳ありませんでした!」


 「イリュが納得してるなら良いんじゃない? 私達がとやかく言う事でもないしね。それより朝早くから何しに来たの? ここに泊まってる訳じゃないでしょ?」


 「はい。実はですね、折り入って頼みたい事と言いますか、依頼したい事がありまして……。闘技大会はご存知ですよね? 僕達はそこに出場しようと思うのですが、実力は大丈夫かと不安になってきたんです」


 「ああ、それでミク殿に見てもらいたいという訳ですか。それもまた、なかなか豪気だと思いますけど……どうします?」


 「私はどっちでも。こいつらを鍛えても良いし、第7エリアに行っても構わない。こいつらを鍛えたところで、闘技大会は近いんだし、そこまで掛からないでしょ?」


 「闘技大会は3日後だから、そこまで時間も無いわね。ミクが受けるなら私もいいけど、あんた達は団体戦? それとも個人戦?」


 「僕達は団体に出ようと思ってます。流石に個人では……。この前ようやく第4エリアに行けまして、それなりにお金を貯める事は出来るようになりました。だから高くても多分払えると思いますので、お願いします」


 「別に暇潰しだから格安で請けるけど? 第7エリアは停滞してるし、連続で行くのも大変だしね。タダでしろって他の奴等が言ってきかねないからタダには出来ないけど、こっちもお金持ってるからなぁ」



 その時、店員がミク達の食事を持って来たが、その匂いで起きるセリオ。そこまでなら良かったのだが、不用意にも周囲に【念送】を放ってしまう。



 『……ごはん! ごはんの匂いがする!! どこ? どこ? 僕のごはんどこ!?』


 「うわっ!? な、なんだ? ……子供? いや、男の子の声かな、これは……」


 「いったい何処からしてるんだ!? 誰だ、この声!?」


 「あー……あんた達、静かにしなさい。さっきの声はこの子、セリオの声よ。この子は【念送】というスキルと似た事が出来てね、自分の意思を伝える事が出来るのよ」


 『もぐもぐ…………むぐむぐ…………』


 「寝起きで頭がハッキリしていないからか、全方位に【念送】を送っていますね。セリオ、セリオ! 【念送】を使うのは止めなさい! 周りの人に丸聞こえですよ」


 『えっ?』



 その後、一切聞こえなくなったので、目の前のワイズライノが発生源であると悟る。ウェンズとダルクスとアラナは驚き、ジェミとレレアは微妙に構いたそうな顔をしている。


 そもそも意思疎通が出来るペットなど、この星には存在しておらず、そういう意味ではセリオは危険であった。もちろん守っているのが最強の怪物である為、セリオをどうにかする事など出来ないのだが。



 「ほ、本当にワイズライノが喋ってた。しかも頭の中に直接聞こえるような感じだったし、間違い無い。そんな事が出来るワイズライノが居るんだ……」


 「すげえ……けど、何かおかしな奴がさらったりしそうだな。だって喋れるペットって聞いた事ねえし」


 「貴方にしてはまともな事を言うわね。確かにこれほど賢いならば、何らかの組織が誘拐していっても不思議じゃないわ」


 「てめぇ、いちいち一言多いんだよ。最近はオレよりもお前の方が揉め事起こしてるんだから、黙ってろ!」


 「ちょっと五月蝿いわよ。それより私達の食事を注文しないと、ここに居ても邪魔でしょうが。レレア、見ていたいのは分かるけど戻ってくる!」


 「えっ!? ……ああ、うん」



 完全に心ここにあらずというか、セリオがモグモグしている姿に心を奪われているようである。小動物が食事をしている光景は、特定の者を吸い寄せる何かがあるのだろう。レレアはまだチラチラと見ている。


 <大地の剣>もテーブル席に座り、注文を初めてすぐ、シャルとイリュとカルティクが食堂に現れた。その瞬間、ダルクスの背が伸びる。どうやら<鮮血の女王>の恐ろしさは、未だ染み付いているらしい。


 あれだけの殺気と殺意を浴びたのだから当然だろうが、それでも背が伸びる程度で済んでいるのは立派でもある。本来ならば、トラウマになっても不思議ではないのだ。



 「あら? こいつらがウチの宿に来るなんて、前に謝罪をしに来た時以来ね。いったい何の用かしら?」


 「闘技大会の団体戦に出るから、わたし達に稽古をつけてほしいんだってさ。で、ミクは請けるんだって、暇だから」


 「へー。あんた達、闘技大会に出るのかい。団体の方とはいえ実力者も多いだろうし、地力が問われる戦いになるけど大丈夫かねえ」


 「大丈夫じゃないからミクに頼みに来たんでしょ? そもそも素人に毛の生えた感じだったけど、少しはマシになったのかしら」


 「素人……」


 「いや素人に毛の生えたって言ったでしょ。つまり素人よりマシって事よ。それでも今の実力じゃ、良くて第4エリアでしょ。そこから先は無理ね、命を落とすわ」


 「そこまで言われなければいけません?」


 「別に根拠なく言ってる訳じゃないわよ、お嬢ちゃん。第3エリアで貴方達の戦いを見たけど、前衛の盾が少なすぎ。リーダー1人に敵の攻撃が集中し過ぎよ。その所為でリーダーが傾くと崩壊するわね」


 「普通の探索者なら、最低でも盾持ちは2人だね。でないとフォローできない。それより早く倒せば済むと思ってるかもしれないけど、第5エリアはマッスルベアーとスチールディアーだ。これに挟まれたら死ぬよ?」


 「「「「「………」」」」」


 「流石に盾役1人は少ないわね。わたし達はミク1人だけど、そもそも回避も攻撃も十分出来るし、マジシャンが2人も居ないからね」


 「私達の場合は、ミク殿が盾、アレッサ殿がウォーアックス、私が薙刀です。つまり盾1の攻撃2という編成のうえ、私達は一撃か二撃で敵を倒せますから、問題にはなりません。貴方達に同じ事が出来ますか?」


 「「「「「………」」」」」



 普通の肉体ではない者達ならば可能であろうが、普通の探索者には無理であろう。もちろん、それが分かったうえでティアも言っている。彼らはどのような答えを出すのだろうか?。


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