0241・第6エリア・9階の集落殲滅
8階にあるオークの集落には、案の定と言うべき階段があったらしいが、それとは別に幾つかの魔道具があった。その内の1つがアイテムバッグだ。
小型の物ではあったものの、無いよりは有った方がいいのは当たり前であり、満場一致でティアに渡す事に。それ以外は全員持っているので、渡す意味があまりない。
次に見つかったのがイヤーカフスだ。これは【念話】の使える物であり、付けている者同士が声を出さずに会話出来るという物である。ミク達には要らないが、売ればそれなりの値段が付く。
そして次が<沸騰筒>と呼ばれる物だ。呼んで字の如く、水を入れて魔力を篭めるとすぐにお湯が沸くという道具になる。何処かの青い星の水筒にそっくりな見た目だが、水筒ではなくお湯を沸かす道具なので、気をつけなければ危険な物だ。
そして最後にシャルが出してきたのが<白の壁面>であった。まさかコレが出てくるとは思わず、驚くミク。実はこの<白の壁面>、ミクでさえ複製する事ができない物なのだ。それはつまり、神の権能が絡むという事である。
「これをどうするかはシャルの好きにしてもらうとして、それよりも今の内にティアのスキルを見てみようか。無いなら無いでいいし、有るなら有効活用しないとね」
「私としてはどちらでもいいのですが、シャルティア殿の持ち物ですから、使っても良いのでしょうか?」
「そりゃ構わないけど、そもそもこういうのは話し合いで決めるもので、あたしの物って決まってる訳じゃないんだけど? それと、ミクでも複製できないとは思わなかったよ」
「確かにね。とはいえ、神の権能が絡むから無理と言われれば、納得するしかないわ。流石にそんな物を複製できるとは思えないし」
「そうね。神様の権能を複製できるなら、それはもう神様でしょうよ」
そんな話をしつつティアが<白の壁面>を使うのを見守っていると、そこには3つの文字が現れた。驚いた事にティアはトリプルらしい。その事に驚いたものの、浮かび上がってきた文字に困惑する6人。
「私がトリプルなのは大変ありがたいのですが……これはいったいどう考えるべきなのでしょう? 元々は王族ですので納得は出来るのです。しかし……」
「まあねえ。確かにトリプルなんだけど、【舞踊】【所作】【色気】というのはどうなの? 【舞踊】と【所作】は分かるわよ、王族だから持っておいて損は無いでしょう。でも【色気】って……」
「まあ、言われてみれば、年齢よりも色気は感じる。それは間違い無い。ただ……それがスキル的なものだとはねぇ。というより、【色気】というスキルを、あたしは初めて見たんだけど……?」
「私はあるわ。【色気】だけじゃなく【魅了】や【魅惑】に【妖艶】なんかもあるわね。だいたいが貴族や金持ちの男を誑かして、その後に破滅していた筈よ」
「それじゃ、ティアも将来は破滅するって事? 大変ねー、おかしなスキル持ちは」
「おかしなスキル持ちって言わないで下さい! そもそも私が持ちたくて持ったものではありませんわ!」
「多分だけど、【色気】のスキルも今までは碌に発揮されてこなかったんじゃない? 年齢が年齢だし、それに少女体型だったでしょ。胸も小さかったしね。それがミクの血肉で変わったから、これからは歳をとる毎に色気が増していくんだと思うわ」
「それもそれで大変ねえ。傾国の美女かと思ったけど、よくよく考えれば【色気】止まりなのよ。だから、そこまでおかしな効果にはならないんじゃないの? イリュ」
「……多分。問題はティアが不老な事なのよね。場合によっては長い年月を生きたが為に、【妖艶】を越える色気をふり撒くようになってるかも」
「少なくとも可能性なんだろ? だったら今の時点でどうこう言っても仕方ない。それに女としちゃ、色気がある事は悪い事じゃないし、子供が出来ないだけでしかないんだ。好きなだけ遊べばいいさ」
「いえ、遊ぶと申されましても……」
「ま、この話は横に置いといて、今は階段を探すのが先よ。この話は昼食か夕食の時にすればいいわ」
「アレッサの言う通りだね。そろそろ海に出て階段を探そうか」
その一言により、意識を切り替えて海へと移動する6人。魔道具の分配は後で話し合う事になったようだ。そのまま波打ち際まで行った6人は、海の側を歩いて回るも階段は無し。次に森へ少し入ってから調べていく。
すると、早々に階段を発見。今回は北西にあった。それを下って9階へ。
9階に着いた一行はすぐに森の中心へと移動して行く。そこにあったのは大集落であった。それもゴブリン、コボルト、オークが群れている集落である。ボス的な存在は見当たらないものの、数は200ぐらい居るようだ。
「1種の魔物で60~70は居るね。これだけの数を相手にするのは大変でも、私達だと苦戦する程でもない。普通の探索者だと大変だけど、そもそも普通の探索者なら戦う必要もないか」
「分からないわよ。ここの階段が10階への階段かもしれないし、場合によれば4チームか5チームで攻略するのが正しいのかも。まあ、ミクの言う通り私達なら余裕で突破できるけど」
「だったら、さっさと突破しようかね。さっきの階層と違って、ミクにも倒していってもらわないと流石に大変だろうから、頼むよ?」
「さっきの階では練習の為にやってたんだよ。一応は盾の使い方なんかも睡眠学習で教える事になるし、その時に乱戦での気をつけ方とか目線の動かし方とかも学ばせるから、それの予行だね」
「まあ、とりあえず行きましょうか。そろそろ見つかるかもしれないし」
そのカルティクの言葉の後すぐに見つかり、一気にミクは飛び出ると、オークの群れに突っ込んだ。そして手当たり次第に弾き飛ばし、頭を潰していく。
アレッサは向かってくるゴブリンやコボルトを薙ぎ倒し、ティアは上手く切り裂きつつ敵を近づけない。シャルは切り刻みながら翻弄し、イリュとカルティクはどんどんと数を減らしていく。
結果、ミクがオークを全滅させるのと、他の面々がオーク以外を全滅させるのは同時ぐらいだった。流石に体が大きいオークは刃物でないと2~3体同時には倒せないようだ。
「ティアの事もあるから、長巻を使った方が良かったかな? ま、今さらか」
「確かに今さらだけど、剣身があまりにも違い過ぎるから無駄じゃない? ティアの薙刀は50センチ程度なのに対し、ミクの長巻は1メートルの長さよ。流石に扱いは全く違うでしょ」
「まあ、違うだろうねえ。とはいえ立ち回りとしてはそこまで違いはないだろうから、そういう意味ではミクが確認しておくのは間違ってないと思うけどね?」
「それよりまずは探しましょう。レティーとドンナは好きなだけ飲んでていいわよ」
『美味しくないから、食事の分だけでいい。それにさっきの階で飲んだから要らない』
『そうですね。この中ならオークの血が一番マシです。ゴブリンは栄養が少ないですし、それはコボルトも変わりません』
「ならさっさと探して終わらせましょう」
そう言って家捜しすると、アイテムバッグが見つかった。それも5つもであり、全てウェストポーチ型の物である。ミク以外は誰も持っていなかったので全員に配布し、これで武器の出し入れは楽になった。
「武器の出し入れが楽になって助かるけど、あたし達じゃなきゃ大揉めに揉めてるねぇ、コレは」
「でしょうね。ウェストポーチ型ってなかなか見つからないし、探索者が一番欲しがる物なのよねえ。もちろん普通のアイテムバッグも需要は高いんだけど、武器の出し入れがしやすいコレは特に需要が高いのよ」
「場合によっては殺し合いに発展しても不思議じゃないわ。コレこそがトラップだと思えるわね」
実に恐ろしきは、人の欲である。




