0240・第6エリア・8階の集落殲滅
第6エリア8階の中央で行われている戦闘。そこは混沌の様相を呈していた。まずはミクだが、集落の中央に突っ込んだ挙句、大型のオークも含めた大量のオークの相手をしている。
「ブルゥァ!!!」
「よっと」
大型のオークの強烈なパンチを、軽い声と共に受け流して足を引っ掛ける。当然、足を引っ掛けられたボスオークは転倒し、無様な姿を配下の前で晒す。その事に激怒するも、それは更なる単調な攻撃に陥るだけであった。
ミクは他のオークの数も減らそうとはせず、盾で流したりしつつウォーハンマーでも足を引っ掛けたりしている。睡眠学習で教えているものの、自身の戦闘感覚の為にオークを利用しているのだ。だから殺さない。
(流石に教えるのは私の知っている事や、私の感覚を元にしたものだからね。私も人間種と同じく五感を持つとはいえ、戦闘が余裕になってしまっているんじゃ曖昧な感覚しか教えられないし。この戦いは丁度よかったよ)
オークに囲まれているにも関わらず、都合の良い練習相手という程度にしか認識していないミク。実際どう足掻いてもオークは勝てないのだから、練習相手というのも間違ってはいないだろう。
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ところ変わって、こちらはアレッサ。ウォーアックスを振り回してオークを薙ぎ倒しているものの、その数はなかなか減らない。流石にワイバーン製の武具とはいえ、一度に殺せるのは1体か、多くても2体だ。
皮下脂肪が厚く、そう簡単に切り裂けないので、仕方なく1体ずつ着実に倒す方向にシフトしている。しかし……。
「チィ! 鬱陶しい事をするわね!!」
「プギィッ!!!」
「「「「「グルァッ!!!」」」」」
ウォーアックスを水平に受けたオークが、ウォーアックスを無理矢理掴んで抱きついたのだ。その所為で武器を手放さざるを得ず、已む無くエストックに切り替えるアレッサ。
どちらかというと左手の大型ナイフをメインに戦う事になるだろう。アレッサのエストックではオークの脂肪に阻まれ、致命の一撃を与えるのは難しい。なので首などの急所をナイフで狙わないと倒せないのだ。
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こちらはオークと絶賛戦闘中のティア。上手く回避を続け、アレッサのように強引に攻めず、上手く隙を突いては首を切り裂いている。他にも足を切りつけて動きを鈍らせたりと、予想以上に上手く立ち回っていた。
「アレッサ殿は強引に行きすぎですわね。元ヴァンパイア・ロードですから仕方ないのでしょうが、私より経験は豊富な筈ですのに……。調子に乗るとああいう事になるのでしょうし、気を引き締めましょう」
「「「「「ガァァァ!!」」」」」
オークが攻撃を行うも、余裕を持って回避を行うティア。付かず離れず、相手の位置を確認しながら着実に傷を与え倒していく。堅実な乱戦の戦い方をしており、アレッサよりも危なげは無かった。
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こちらはシャルなのだが……実に面倒臭そうにオークを倒している。右手に剣を持ち、左手には短剣を持っているものの、そのどちらをも攻撃に使っていた。オークに囲まれていながらも踊るように動き、確実に敵の急所を切り裂いていく。
「面倒だねえ。オークは食いにくるか殴りに来るかしかしないから、楽ではあるんだけど……。ここの集落は数が多い。天然じゃここまでの数は群れない、というよりも、こんな群れが出来る前に散らしちまうから、ね!!」
「プギャッ!?」
「「「「「グルァァァ!!!!」」」」」
「あー、五月蝿い、五月蝿い。それにしても、ミクが引きつけてるからってズルくないかねえ、アレは?」
余所見をする余裕がある程に、戦いとしてはシャル有利で進んでいる。流石に<雪原の餓狼>と呼ばれた女将軍は伊達ではないようだ。今はワイバーン製の肉体でもあるので、余計に楽なのだろうが。
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そしてここはイリュとカルティクの戦場となる。何故か2人は固まって戦っているものの、その姿は危なげの無いものである。こういった乱戦も2人で乗り越えてきたのか、言葉を出さずとも互いにフォローしあっており上手い。
カルティクがオークの首を切り裂くと、そこに攻撃しようとしていたオークに【火弾】が飛ぶ。顔面に受けたオークは攻撃するどころではなくなり、その間にカルティクは楽々と距離を置く。
「久しぶりの乱戦だけど、やっぱり忘れてはいないものねえ」
「そうだけど、慎重に確実にね。昔もポカをやらかした所為で、私が死に掛けた事が何度かあるんだけど……?」
「あらあら、そんな事があったしら? 覚えがないわね。それより、こっちを向かずにオークの方を向かないと危ないわよ」
「………はぁ」
「プギュッ!?」
会話をしながらも淡々と処理していくカルティクと、そのカルティクをフォローしているイリュ。これが2人の戦い方なのだろうが、回避砲台と化しているイリュは簡単には倒せないだろう。
かといって確実に急所を狙ってくるカルティクは、オークにとって脅威である。更に近接戦闘を行うカルティクは攻めやすい。なので結果として、カルティクという餌に群がるオーク。
それこそが罠なのだが、彼らにそれを理解する知恵は無い。ゴブリンやコボルトよりも頭が悪いのだから、仕方がないとも言えるのだが。
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再び戻ってミク。もう少しボスオークが頑張ってくれると思っていたのだが、そのボスオークは目の前で疲弊しきっている。流石に気付いたのか距離をとっているが、他のオークは今もミクを攻めていた。
………疲れきった体で。
「ブフゥッ、ブフゥッ、ブフゥーッ……」
「プギィ!! ブフー、ブフー、ブフー………」
「ブルゥ!! ブヒッ、ブヒッ、ブフィー………」
もはやスタミナがゼロに近く、一度攻撃する度に荒い呼吸を繰り返しているオーク。集落には沢山のオークが居た筈が、既に残っているのは3体だけである。そいつらも疲労困憊で最早まともに戦える状態ではない。
それでもミクは止めを刺そうとしないようだ。すると、遂にオーク達は座りこんでしまった。立っている体力も気力も失ったのだろう。オークに至っては大の字に寝そべり、好きにしろと言わんばかりである。
その瞬間、アレッサとティアが大の字に寝ているオークを殺す。片方は顔面にウォーアックスを落とされ、もう片方は首を切り飛ばされて終わった。残るはボスオークのみである。
ボスオークはミクを睨みつけ最後の抵抗を示すが、ミクは武具を仕舞うと、両手を触手にしてボスオークに絡める。そして首から上を怪物の口に変えると、ボスオークを口に近づけていく。
ボスオークは恐怖のどん底に突き落とされ泣き叫ぶが、肉塊がそれを許す事は無い。足先から食われていき、悲鳴を上げながらも貪り食われていくボスオーク。最後に睨まなければ、こうはならなかったのかもしれない。
ミクが貪り食っている間に集落を探していた他の面々は、集落の中で幾つかの魔道具を発見していた。驚くべき物があったのだが、それは怪物が喰い終わるまで待つ事になり、結果的に集落を調べ終わった後になってしまった。
「ミク、食べるのは終わった? ボスオークが可哀想になるくらい泣き叫んでたけど、あいつらも人間種に同じ事をするんだから自業自得よね。まあ、ここまで来た探索者は居ないんだし、ここの連中はした事ないでしょうけど」
「私達が負けてたら食い荒らされるんだし、同じ事よ。オークどもに慈悲なんて要らないわ。確実に殺すべき害獣よ」
カルティクの言は厳しいが、しかし正しい意見である。




