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0235・若者5人組




 巨大ザリガニは適当に切って回収。残りは適当にバラして海に撒く。猛烈な勢いで魚が寄ってきたので、10匹ほどを手に入れたら階段へと進む。ミク以外はホクホク顔なので、今日も魚をツマミに飲むのだろう。


 2階、3階、そして4階へと進み、階層の中央へと進む。お久しぶりの赤いゴブリンの集落ではあるが、早速イリュが集落に向けて【火球】の魔法を連射する。それを見て魔法陣を覚えるミク。


 あれだけ魔法を連射してきたのに問題ない魔力なのだから、イリュの総魔力もおかしいと言わざるを得ない。透明トカゲに巨大ザリガニ、そのうえ赤いゴブリンの集落を焼き尽くすかのように放っている。



 「そういえば、前回集落の家は全て壊したんだけど、何故か復活してるね? ダンジョンの機能で復活したのか、それとも建て直したのかは知らないけど。……でも建て直した感じはしないかな?」


 「わたしもそう思う。何と言うか、前回と一緒って感じがするのよ。何となく見覚えがあるっていうか、この風景知ってるって感じ。もちろん誰かさんが焼き尽くしてる風景は初めてだけど」


 「この赤いゴブリン、然して強くありませんわね? 第3エリアのゴブリンより少し強いかな? と思う程度です。何と申しますか、ガッカリ……が一番合った言葉でしょうか」


 「言いたい事は分かるわ。赤いゴブリンなんだから強いのかと思ってたのに、悪い意味で期待を裏切られたわね。緑というか、普通よりも少しだけ強くて連携が出来てるっていう程度ね」


 「それでも普通の探索者なら厄介なんじゃないのかい? あたし達にとったら子供騙しにもならない程度でしかないけどさ、あたし達を基準にする訳にもいかないだろうに。それじゃ普通の連中が攻略できないよ」



 正にシャルの言う通りである。ダンジョンは誰も攻略できないようになどなっていない。


 もちろん最終エリアなどは一部の天才しか無理であろうが、それでも人外を基準に攻略難易度が決められている訳ではないのだ。そもそもイリュとカルティク以外は、半人外と言っていいレベルである。


 更に言うと、普通の人間種のように鍛えれば強くもなるのだ。あまりにも反則過ぎる人外どもを基準にダンジョンを作ったら、そこは既にダンジョンではなく唯の処刑場か屠殺場であろう。


 赤いゴブリンの集落を殲滅した一行は、色々と探してみるも何も見つからなかった。全ては集落を蹂躙した何処かの女王の所為である。



 「ま、やってしまった事は仕方ないのだし、さっさと先へ進みましょうか」


 「あんたが叩き潰したんでしょうが、あんたが!」


 「思いっきり焼き尽くしてスッキリしてるみたいだし、もう諦めた方がいいね。それだけ鬱憤が溜まってたんだろうし、前回すでに調べてるんだから何も無いだろうさ。次の階は困るけども」


 「それより、そろそろお昼だから一旦戻りましょうか。このままダンジョン攻略を続けてもしょうがないし、丁度いいタイミングでしょ」


 「そうだね。一度地上に戻ってゆっくり休む方がいい。このまま行くと、また蹂躙しそうだからさ。次は初めての階だから、流石に困るんだよね」



 ミクも同意した事でさっさと戻り、1階の魔法陣から脱出する。それにしても、焼き尽くしたのが相当気持ち良かったのだろう、イリュはとことんまでにスッキリした顔をしている。その美女の姿でその表情は良いのだろうか?。


 そう思っていても口には出さないカルティクとシャル。機嫌が良いのだから放っておいた方がいい、また機嫌が悪くなると蹂躙しかねない。そう思っているからだ。


 <妖精の洞>に戻った6人は食堂へ行き、ミクが小銀貨2枚を渡したので各々が好きに注文。それが終わったら席に座って雑談を始める。


 後は運ばれてくるのを待つだけなのだが、そこに珍しく客がやってきた。



 「ここも宿で食堂付きなんだろ? だったらオレ達が利用したって悪くねえじゃねえか。スラムの近くで客が来ねえんだろうし、売り上げに貢献してやるんだから感謝してほしいもんだ」


 「ダルクス、そういう言い方はよせって言ってるだろう。お前はいつもいつも余計な一言が多すぎる。いずれ大きな失敗になりかねないんだ。分かってるのか?」


 「あー、あー、うるせぇ、うるせぇ。いちいち鬱陶しいんだよ、お前は。こんなスラム近くにいる奴等なんてチンピラばっかだろうが。何十人きたってオレの相手にはならねえよ」


 「相変わらずコイツはバカね、何処に強いヤツが居るかなんて分からないでしょうが。本っ当に頭の悪いヤツ!」


 「誰か食堂に居るっぽいから、喧嘩になるような事は言わない方がいいよ。碌な事にならないし、私は擁護しないから」


 「私だって擁護しないわよ、こんなバカ。やられるなら1人でやられりゃいいのよ。ねえ、レレア」


 「うん。私も迷惑は嫌だし」


 「おいおい……って女が4、5、6人いるだけじゃねーか。バカバカしい。とりあえず適当に何か持ってきてくれや!」


 「あのなダルクス、ちゃんと注文しなきゃ駄目に決まってるだろ。そうやって店員を困らせるのは止めろ」


 「チッ! うっせーな。だったら、そこの女どもが食ってるマズそうなのでいいから、持ってこぶぇぁっ!?」



 流石に限界に達したのだろう、イリュが凄まじい殺気と殺意を撒き散らしながらブン殴った。よくもここまで<鮮血の女王>の店を虚仮こけに出来たものである。身の程知らずにも程があるだろう。


 殴り飛ばされて気を失った、ダルクスというガキの腹を蹴り飛ばし、無理やりに起こすイリュ。怒ってはいるようだが、キレるまではいっていないらしい。なので5人も口を出さない。



 「ガキ、お前は何て言った? 私の食べている物に対して何て言ったか答えろ。……さっさと答えろ!!」


 「ヒッ!!」


 「お前如きが何様のつもりだ? 今すぐ殺されたいなら早く言え、ここで殺してやる。……どうした、早く言え」


 「え、う、あ………」


 「この程度の殺気と殺意で口も利けないのか? お前の方がよほどチンピラだな。クソガキ、ここはゴールダームだ。己の立場をわきまえないと……死ぬぞ」


 「………」



 そう言うと、鼻で笑った後で席に戻るイリュ。そして溜息を吐いた後に説明してやるカルティク。



 「貴方達、多分ゴールダームに来たばかりなんでしょ? 若いし地元ではそれなりだったんでしょうけどね、ここはゴールダームよ。世界最高難易度のダンジョンがあるの。つまり、貴方達程度なんて毎年山のように来る場所ってこと」


 「「「「「………」」」」」


 「それ以前に、ここは裏組織や闇ギルドですら避ける、<鮮血の女王>がオーナーの宿なんだけどね。知らないからこそ下らない事を言えたんだろうけど、あれは殺してくれと言ってるのと変わらないんだよ。自分がどれだけ危うい事を口走ってたか理解したかい?」


 「申し訳ありませんでした!!!!」


 「「「「申し訳ありませんでした!!」」」」



 土下座謝罪で溜飲を下げたのか、イリュもそれ以上は怒る事もなかった。<鮮血の女王>の噂は知っていたそうだが、その<鮮血の女王>の店は知らなかったらしい。ちなみにこの5人組はカムラ帝国の出身だと名乗った。


 リーダーは冷静に話していたウェンズという青年。アタッカーはダルクスというイリュを怒らせたクソガキ。マジシャンは擁護しないと言っていた、ジェミとアラナ。そしてアーチャーのレレア。


 この5名で出てきたそうだが、実は帝都カンムの出身らしく、向こうでは将来を有望視されていたらしい。



 「僕達は全員が同い年で17ですが、ランクは7なんです。15歳の時に探索者になって、2年でここまで来ました。お金も溜まりましたし、お前達ならゴールダームで大成できると言われ……」


 「それでゴールダームに来たと。若くて実力のある奴等が目障りだから、おだててゴールダームに行かせたんじゃない? 今ごろそいつら笑ってるかもよ、バカだって」


 「「「「「………」」」」」



 どうやらカムラ帝国出身の割には、純粋な若者のようである。


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