0233・東の国々の考察
「フィグレイオの方は、どうにも上手くいっていないようね。でも東の小国から手を出されている感じは無いらしいわ。どうも東の小国群と神聖キルス法国はエルフィンを狙ってるっぽいのよね」
「ああ、そっちかい。しかし、言葉は悪いけどフィグレイオは狙い目だと思うんだけどね? あたしは居ないし、宰相も居なくなってると言ってもいい。人材は居るけど、すぐに活躍できるほど将軍も宰相も甘い地位じゃないよ?」
「そういう問題じゃないみたい。東の小国群も神聖キルス法国も、この辺りでエルフィンに止めを刺したいみたいね。エルフが悪いとは言わないけれど、エルフィンのエルフは最悪だから。そういう意味で潰したいのよ」
「成る程、そういう事かい。フィグレイオには少なくともエルフのような考え方は無いからね。話し合いが出来る国と出来ない国、どっちを攻めるか? って話であれば、エルフィン一択だろうさ」
「話し合いどころか、最初から最後まで見下すしかしない国よ。平民のエルフだってエルフ以外を見下すんだから、碌な国じゃないわ。よくもあんな国が存続してるって思うし、普通は攻められて潰れるでしょ」
「攻めるまでもないと思われたか、それとも面倒な連中だから放置されてきたか。まあ、どっちかだろうね。あのままエルフィンに押し込んでいても良い気はするけど、それは東の国の連中の思惑とは違うんだろう」
「邪魔な連中だから何とかしたいと思うのか、邪魔な連中だから関わりたくなくて放置するのか。それぞれ国の思惑としてあるんでしょうけど、東の連中は排除に踏み切ったというところでしょうね。もしくは力を削る為か」
「国力を削るという意味はありそう。あそこは未だに細々とエルフ以外が住んでるんでしょうし、その種族は逃げてくるんじゃない? わたしもそうだけど、エルフの為に戦ってやる義理なんて無いしね」
「それはそうでしょうよ。散々エルフから見下しや差別を受け続けてきたでしょうしね。それでも出なかったのは土地にしがみついているからでしょ。畑を手放すのはそう簡単な事ではないもの」
「何処の国でもそうだけど、畑を整えるのは苦労の連続だからねえ。農民が畑から離れたがらないのは当たり前の事さ。先祖代々の苦労があるんだ、それを手放せって言ったって無理だよ。それこそ、命懸けで抵抗するだろうね」
「それはともかくとして、フィグレイオを攻める可能性は低いから、そこは安心していいと思うわよ。フィグレイオはまだ王が居るもの。エルフィンは王が誰かさんに喰われて不在なうえ、誰が王位を継ぐかで揉めてるから介入しやすいのよ」
「欲深いヤツが多いと大変ねー。とはいえ、あいつらずっと欲深いけど。今に始まった事じゃないし、わたしが生きてた500年前から変わらない欲深さだもん。本当、歳を取ると欲が膨れ上がっていくみたい」
「私達のような不老はそんな事ないのにね。どうしてああもエルフは欲深いのかしら? 人間種はだいたい歳を取ると欲深くなるものだけど、エルフどもは特別なぐらい欲深いのよ。本当、何故なのか不思議でしょうがないわ」
「多分だけど<狂乱王>の所為じゃないかな? 昔はああじゃなかった。って、お爺ちゃんが言ってたような……。わたしが生きてた頃は既に今と似たようなものだったけど、かつては違ってたんじゃない?」
「………こっちに来て1200年ほど経つけど、記憶に無いわねえ。単に昔は良かったっていう意味でアレッサの祖父が言ったのか、私が忘れてしまっているかのどちらなのか……。ま、どっちでもいいけど。今はクソなのが事実なんだし」
「そりゃね」
結局、エルフィン狙いの可能性が高いという話で終了したようだ。フィグレイオを狙う為のブラフなのか、それとも本当にエルフィンを狙っているのか。ミクにとってはどっちでもよく、混乱に乗じてゴミを食い荒らすだけである。
チビチビ飲んでいたアレッサとティアも撃沈したので、ミクが触手で持ち上げて部屋へと連れていく。シャルも含めてまだ飲むらしいので放っておき、ミクは部屋へと戻り2人を綺麗にしたら、本体空間に放り込んだ。
睡眠学習を行い、2人に多くの知識と感覚を刷り込んでいく。同じ事の繰り返しだが、刷り込みとは一朝一夕にはいかないものである。
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翌日。いつも通りに日が昇るとアレッサとティアを転送する。割とすぐに起きるのだが、今日は起きずに眠っていた。ミクは気にする事も無く瞑想の練習をし、起きた2人に挨拶する。
殆ど練習は出来なかったが、睡眠学習の間は仕方がない。準備を整えたら食堂へ行き、注文すると大銅貨を9枚支払って席に座る。雑談をしながら時間を潰し、運ばれてきた料理を食べていると3人が来た。
ミクは大銅貨3枚を渡すと食事を続けようとしたが、イリュはそのまま話し掛けてくる。どうやら今の内に言っておく事らしい。
「ミク達はダンジョンに行くんでしょ? ちょっと第5エリアに付き合ってくれない? 私もそろそろ第6エリアに行こうと思うんだけど、流石に私とカルティクだけだと面倒臭そうなボスみたいだし」
「んー……面倒だから、私とイリュだけで行こうか? 私が背負っていけば一気に進めるでしょ。他の皆は第6エリアの海で遊んでればいいよ。私が最速で走って行けば、すぐに終わるしね」
「それでいいんじゃない? どのみち<鮮血の女王>なら、時間を掛ければ攻略できるでしょ。早いか遅いかの違いでしかないし、ミクが連れて行って終わらせても文句は出ないと思うわ」
「まあ、イリュだからねえ。時間は掛かっても確実に突破するよ。出来ない訳がないし、そんなに透明トカゲは強くない。あれは厄介なだけで、強さとはまた別だからさ」
「確かにね。舌の攻撃が強力だけど、それだけと言えばそれだけだし。イリュディナの場合は【魔力感知】で十分補足できるから、後は魔法を連打すれば勝てるもの。ハッキリ言えばザコでしかないわ」
「ザコっていうより、相性が良い相手だよね。魔法に然して強くなく、隠れるだけの魔物。舌の威力は高いけど、魔法ならそれ以上に離れて攻撃出来るから、何の脅威にもならない。近付いてくる前に殺せるでしょ」
「ザコ扱いもアレだけど、実際に能力がバレると弱いタイプだから仕方ないね。麻痺毒と盾を持ってれば、あっさり攻略できてしまうし」
「確かにそこまで強いボスではありませんでしたね。姉上と一緒に攻略しましたが、2匹並んでいるのが厄介なくらいで、それもミク殿が触手を突き刺して麻痺させてしまいましたし」
「………そんな事したのかい。まあ、見られても問題ないメンバーなら別にいいんだろうけど、触手を使ったなら、あっさり終わっただろうさ」
「ま、わたし達が行かなくていいなら、ゆっくり第6エリアで遊んでようか。どのみち今日は赤いゴブリンの集落潰しだし、それは難しくもなんとも無いしね。あそこで手に入れた魔道具もあるけど……」
「残念ながら今のところ使い道が無いね。相手の言葉というか意思が分かる魔道具だけど、証明する必要に迫られてないから」
「そんな事をする必要に迫られる状況も嫌だけどね。とはいえ無いよりは有った方が良いに決まってるし、スライムと意思疎通は図れるのよねえ」
「「「「???」」」」
疑問を持った皆に見せていくミク。レティーの意思と【念送】で理解したものの、ここに居る全員もあまり使える魔道具だとは思わなかったようである。




