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0232・シャルの紹介




 護衛の仕事ではあったが契約もしていないので、依頼とも呼べない依頼は終わり、ミク達は宿へと戻る。ベルは再び寝るのだろうが、王城なのでミク達が気にかける必要も無い。その分は気楽だ。


 アレッサとティアに何かある事は無いし、最悪は蘇生させれば済む。そういう意味でも気楽になったミク。面倒な重荷は無いに限る。軽くなった気分のまま<妖精の洞>に戻ると、シャルが帰って来ていた。



 「あれ? えらく早いお帰りだね。いつもなら夕方ギリギリなのに、何かあったの?」


 「いや、何も無いよ? 強いて言えば、たまには早く帰ってゆっくりするかと思っただけさ。毎日毎日、生き急ぐようにダンジョンに行っても仕方ないしね。ミク達はどうしたんだい、こんな時間に?」


 「わたし達は王城に行って帰ってきたところよ。ようやくベルの護衛依頼が終わって肩の荷が下りたわ。ティアはミクの血肉で強くなってるからいいけど、あの子は普通だからね。何かあったら面倒な事になるし、気が気じゃない部分はあったの」


 「だろうねえ。相手は王女だし、傷ついただけで面倒な輩は騒ぎ出す。ティアはもう気にしなくてもいいだろうけど、あの子は完全に第二王女殿下だから、絶対に面倒になるよ」


 「本当にね。疲れきってるだろうから、2~3日休めば復活するだろうし、もう私達は関係ない。やっと解放された感じかな?」



 そんな事を言いつつ食堂へと移動し、適当に椅子に座って雑談を始める。未だ夕食には早いので注文はしないし出来ない。すると何を思ったのか、アレッサがミードを要求してきた。


 なのでミクは甕を出し、ついでに厨房に魚を渡してきた。3匹だけは持って戻り、木皿に捌いた魚の身を乗せていく。早速アレッサとティアとシャルは、飲みながら食べ始めた。



 『美味しー! 相変わらず、このお魚は美味しくて素晴らしい!! 久しぶりに食べられて嬉しいよー!』


 『久しぶりなんですか? まあ、味覚がない私には美味しさが分かりませんが……』


 「第6エリアに行く事はあるけど、波打ち際の近くに来る魚じゃなくてね。あたしじゃ、この魚は獲れないんだよ。釣りでもすれば獲れるかもしれないけど、わざわざダンジョン内で釣りをするのもねえ」


 「それは確かにそうですわね。行楽に行く場所ではありませんし、釣りに集中していたら魔物に襲われるかもしれません。流石に誰かが一緒に居ないと危険でしょう」


 「そこまでしても儲かるなら、やる奴はいるだろうけどね。ただ……第6エリアまで来て釣りを気長にするヤツなんて居るのかな? 第6エリアまで行って引退した元探索者ならやるかもしれないけど……」


 「今のところ、それに当てはまるのは<竜の牙>と<鮮烈の色>ぐらいか。あの連中がそれをするかといえば、しないだろうねえ。腐っても探索者なうえ、あの子達なら後進の指導とかしてそうだよ」


 「そういう道の方がいいと思う。優秀な奴が後進を育てないから、いつまで経っても大した探索者が出てこないんだよ。大した事がない奴等ならどうでもいいんだけど、優秀な奴等は育てる事をしないとね」


 「そうだねえ。あたしは……多少教えた奴等は居るっちゃ居るけど、今は何をしているのやら。死んでる可能性も高そうだし、とっくに寿命でくたばった連中も多いから、何とも言えないよ」


 「近衛の奴等が居るじゃない、そいつらにブッ殺されたけど」


 「ブッ!?」



 ティアは知らなかったからか、いきなり噴き出したが、少量なので誰にも掛かっていない。ティアは謝罪した後、改めて聞いてみた。



 「殺されたというのは、どういう事なのですか? そもそもシャルティア殿が何処で何をしていたかを知りませんが、近衛騎士に殺されるとは、いったい……」


 「ティアには教えてなかったからね。わざわざ教える必要も無かったし、変な連中を巻き込んでも困るからさ。これから話す事は王や王族にも内緒ね? 喋ると面倒臭い事に絡まれるよ?」


 「は、はあ……分かりました」


 「シャルの本名は、スヴェストラ・オルネイ・カロンヴォルフっていうのよ。ちょっと前まで生きてた、フィグレイオ獣王国の女将軍ね。近衛に殺された後で、ミクが首から上を奪って逃走したの」


 「は? へっ!? カロンヴォルフ!?」


 「そうそう。近衛騎士に屋敷を襲撃されて、屋敷の使用人は全員敵側へ寝返ってた。まあ、敵側が王なんだから仕方ないけどね。それで襲撃され殺害されたヴェスの首を私が切り落としたの。オークの姿に変わってね」


 「で、あたしはミクの本体空間に連れて行かれて、首から上をミクの本体にくっ付けられたのさ。その状態で話をしてね、利用される事に決まったわけだ。ワイバーンの肉と内臓と骨、それにミクの血肉で作った肉体に首から上をくっ付けられたのが、この体だよ」


 「………」


 「驚くのは分かるけど、わたしだって心臓をくり貫かれて滅びかけてたところを助けてもらったし、ティアだって左半身をミクの血肉で補ってもらったでしょ。結果としては変わらないと思うけど?」


 「それはそうですけど、まさかあの女将軍だったとは………。ん? 何故あの国の要とも言える女将軍が、近衛に殺されるんですの? 意味が分からないのですが……」


 「分かる。聞いて、納得して、何で? ってなるよね」


 「シャルは私に国内のゴミを喰ってほしいと依頼してきたんだよ。表の依頼はフィグレイオのダンジョン攻略だったんだけど、裏ではゴミの抹殺ね。そしてそれは順調に進んでた、んだけど……」


 「簡単に言えば、納得できないって事さ。フィグレイオの先王と今の王は、そういう裏側での仕事を無くそうとしてきた。あたしがやった事は、まんまその方針に反する事なのさ」


 「成る程。王の方針に反した以上は……でも、それで近衛を動かし暗殺となります? 流石におかしいと思うのですが……」


 「注意は受けてたよ。その後に近衛が来て殺されたけど、注意を受けてからは動いてない。まあ、あたしを暗殺する指示を近衛に出したのは、おそらく宰相だろうと睨んでる。だから王は知らないだろうさ」


 「フィグレイオの宰相といえば、ネチネチしている面倒な性格の方ですわね。それが国の役に立つと考えているのでしょうが、対外的にやる事ではないと分かっていない方です」


 「宰相がそれを他国にやるって、どうなのかしらね? ネチっこくて嫌味な国って思われるって、私でも分かるんだけど」


 「ええ、その通りなのですが……。何と言えばいいのでしょう、自分が国家の嫌な部分を担当してやっている。そんなおごりが感じられましたね、かつて御会いした時には」


 「もしかして、同じ国家の嫌な部分を担当してたシャルに、思うところでもあったのかな? カロンヴォルフ家って、そういうの担当だったんだよね?」


 「そうだよ。あたしのカロンヴォルフ家は邪魔な貴族を表で潰す証拠集めとか、裏での暗殺とか、そういう事をしてきたからね。確かに宰相と被ってる部分はあったけど、それだけでかい?」


 「これで自分が国家の闇を牛耳れる。そう思った矢先、息子が行方不明で夢は泡のように消えた。だから狂って壊れた? そう考えると、動機としては分からなくもないかな?」


 「でも結局、フィグレイオという国にとっては何の利益も無いわよ? わざわざ女将軍を排除する理由も無かったし、それをやった結果、国家の闇を担当する者が居なくなっただけよね?」


 「それは仕方ないんじゃない? また誰か出てくるだろうし、それが国ってものよ」



 イリュとカルティクが帰ってきたのか、横で注文している。ミクは小銀貨2枚を払い適当に注文させると、再び雑談を続けるのだった。


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