0229・巨大な蜂の巣の解体作業
夕食も終わり、部屋に戻った3人。再びミクは2人を綺麗にし、ベッドに寝かせたら【浄滅】を使う。そのままベッドに寝転がり、目を瞑るとミクは瞑想の練習を始め、それを見た2人も眠りにつく。
……時間が経ち、2人が寝たのを確認したミクは、本体空間に送って睡眠学習を始める。後は朝まで脳に知識と感覚を叩き込んでいくのであった。
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朝、日の出と共に2人を本体空間からベッドに移す。そのまま少し待っているとティアが目覚め、その少し後にアレッサが目覚めた。ミクは2人に挨拶し、準備を整えたら食堂へ。
朝食を注文して大銅貨9枚を支払ったら、席に座って雑談をしながら待つ。適当に待っていると朝食が運ばれてきたので、食べているとベルが起きてきた。
大銅貨3枚を追加しておき、ベルにも注文させる。どうも疲れているようだが、さて……。
「大丈夫? 駄目なら今日は寝てていいよ。別に無理する事でも無いんだし」
「いえ、ハチミツというより蜂の巣は浅い階層にあると聞きます。そこまで行けないほど疲れている訳ではありませんので、問題はありません。それに私が確認しないと信用されませんので。言い換えれば、王族が自分の目で確認する必要があります」
「まあ、探索者が採ってきたと言ってる物と、王族が自分の目で確認した物とでは全然違うでしょうよ。信用が段違いじゃないの。……そういえば、前回採ってから何日で復活したのか分からないわね? そもそも復活してるのかも知らないけどさ」
「多分復活してると思うんだけど……こればっかりは見に行くしかないね。シャルもカルティクも何も言ってなかったから、たぶん復活してるとは思う」
「あの2人なら、復活していない場合の方が何か言ってくるでしょうね」
そんな話をしつつ、ベルが食事を終えたら出発。ダンジョンへと行き、第6エリアのショートカット魔法陣に乗る。中へと入り、まずは階層の中央へと移動。とはいえ、森の中は樹上と地中から攻撃されるので慎重にだ。
特に地中からの攻撃は色々とマズいので、できるだけ正確に敵の位置を把握し、先制攻撃で始末していく。そうしないとベルの足が貫かれる恐れがあるのだ。ベルにも伝えてはあるのだが、地中からの攻撃に対応するのは難しい。
槍を使って地中を突き刺したり、最悪は地面ごと喰らう事も視野に入れているミク。そうやってモグラを殺しつつ進んで行くと、階層の中央に蜂の巣があった。相変わらず1万匹を超える蜂が黒いモヤのようになっている。
それを見てドン引きするベルとティア。初めて見ればそうもなろう。
「あ、あんな巨大な蜂の巣がダンジョンの中にあるなんて……。しかも周りに蜂が飛び交っていますし、危ないのでは?」
「非常に危険な毒を持ってる蜂の群れだよ。あれはここで手に入れた魔剣を使うか、大量の人員で魔法を使うか、それともミクが1人で処理するか。おそらくだけど、それしか勝つ方法は無いんじゃないかな?」
「あれだけの大きさですものね。燃やせば中のハチミツが駄目になってしまいますし、それ以前に安易に手を出すと、あの蜂達が一斉に襲い掛かって来そうです。そうなれば死ぬしかないのでは?」
2人が怯えながら会話をしている最中に、ミクは地面を突き刺してモグラを殺害。いちいち面倒な魔物である。
ミクは仕方なくベルの足に合わせたワイバーン皮のブーツを作り、それを渡して履き替えさせる。
流石に地面の下からの攻撃は危険だ。すぐにベルは履き替え、それが終わったのを見届けるとアイテムバッグとレティーを地面に下ろす。そして一気に走って行くと、肉の塊へと変貌した。
蜂達が一斉に襲い掛かってくるが、それは何の意味も持たずに喰われていく。肉に埋まり、そのままズブズブと沈んでいくものも居れば、触手の先にある口で喰われるものも居る。
それだけではなく、巨大な口に吸引されて咀嚼されている音も響く。どうにも水ダンジョンのボスであった巨大ミミズの能力は手に入っていたらしい。やたらに吸い込む吸引能力で、多くの蜂を一気に吸い込む肉塊。
前回よりかなり早く、全ての蜂を食い荒らしたミクは、元の美女の姿に戻り服を着ていく。黒いモヤのようになっていた蜂達は、もう何処にも見当たらない。
「お疲れー。だけど、何だかとんでもない吸い込みだっね? あれってもしかして、水ダンジョンの巨大ミミズだったりする?」
「そうだよ。あの巨大ミミズの能力が役立つとは思わなかったけど、役に立って良かった。これで何の役にも立たなかったら、あそこを攻略した意味が無いからさ。相変わらず、水を操る能力は役に立ちそうもないけど」
「ああ、マッドマンの能力。あれは確かに役に立ちそうにないわね。水を操れるって言ったって自分の近くだけだし……うん? もしかしてここの魚をいっぱい獲れる?」
「………確かに。上手くいけば簡単に大量にゲットできるかも。とりあえずはハチミツが先だけどね。今回は蜂の巣のまま売るから、このままアイテムバッグに入れないといけない……んだけど、入るかな?」
「駄目なら私の方にも入れるけど? それでも入るかは分からないから、入れられる分だけ入れたら?」
「そうしようか」
そう言って、少しずつ壊しながら入れていく2人。上の方が倒れてくると危ないので上から順番に破壊しているが、それでも相当の量であるらしく、なかなか回収作業が終わらない。
ベルとティアも手伝いに参加し、2人も回収していくのだが、それでも簡単な事ではなかった。前回はミクが纏めて喰ったからすぐに終わったが、本来なら相当の重労働であったらしい。
今さら文句を言う事もできず、必死になってアイテムバッグに入れていくベル。結局、全てを入れられたのは昼にさしかかった頃であった。
「や、やっと終わりました……。さっさと帰りましょう、こんなに大変だとは思いませんでした」
「ゴメンねー。前はミクが全部喰ったから、こんなに大変だとはわたし達も知らなかったのよ。流石にシャレになってないし、腰が痛い」
「壊してはアイテムバッグに入れ、壊してはアイテムバッグに入れての繰り返しでしたもの。腰を曲げては戻し、曲げては戻す。更には腰を曲げたままというのもありました」
「本当に大変でしたし、アレッサの言う通り腰が凄く痛いんです。早く帰ってゆっくりしたい……」
「まあ、終わったんだしさっさと帰ろうか、ただし上と下に注意ね。帰りで下らない怪我を負ったなんてなったら、バカみたいだし」
「ですわね。後ちょっとだからこそ、慎重に動きませんと。間の抜けた姿を晒す訳には参りません」
ミクが声をかけたからかは分からないが、慎重に移動した結果、誰も怪我をせずに脱出した一行。そのまま疲れた体を引き摺りつつ、探索者ギルドへ。
裏にある解体所で蜂の巣を出していき、親方に査定を頼む。巨大な蜂の巣とハチミツの為、簡単には値段をつけられずに悩む親方と、その前でどんどん積み上げていく4人。
段々と親方始め、解体職人達の顔が引き攣っていく。
3割ほど出した時点で拒否され、それ以上を出す事は出来なかった。その後、査定の為に一舐めして吐き出す職人達。甘味爆弾はあまりにもキツかったようだ。
ミクがハチミツ水にして出すと利用方法を理解したらしく、ミードを出すと親方は大喜びで飲み始める。やはりドワーフは酒に目がないらしく、飲み終わった後で品評までしだした。
「これだけキツい酒になっとるにも関わらず、これだけ甘味が残っとるとは不思議なミードだ。だが美味い! 何といっても美味いのがいい! 酒は美味くなくちゃいかん!!」
本当にドワーフだなぁ、とその場の全員が思った。結局のところ、ドワーフの生き甲斐とは美味い酒なのだろう。




