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0228・ベルが第6エリアに行く理由




 リリエを含む王都守備兵は犯罪者達を引っ張って行った。罪としては宿に対する嫌がらせだが、誰もそうは見ていない。ここは<鮮血の女王>の宿なのだ。


 トトルス伯爵家の縁戚の女は縛られた後に起こされたが、暴れようとした為に殴られて蹴られていた。流石に暴れる者を取り押さえるには暴力しかない。


 動きを封じるだけで済ませるような、そんな甘っちょろい時代でもなければ文化でもない。大人しく取調べを受ければいいが、暴れるのであれば静かになるまで暴行を受ける事もある。だからこそ大半の者は大人しいのだ。


 甘い扱いをしておいて、静かにしろと言ったところで聞く訳がない。公権力側が甘いとなれば、つけ上がるのは当たり前だ。むしろ暴力を振るってでも抑えなければいけない。それは公権力が舐められているのと同じだからである。


 こういう時代、公権力を保障しているのも国であり王だ。公権力を侮辱するのは王を侮辱する事と何ら変わらない。王が国である以上は、そういう意味になってしまう。


 何処かの青い星の、「人権ガー!」と五月蝿い国とは違うのだ。



 「さて、リリエ達は行ったし、これでやっと昼食が食べられるよ。既に冷め切ってるけどしょうがない、夕食に期待して今の内に食べてしまおう」


 「そうね。それにしても面倒な連中だわ、トトルス伯爵家って。イリュは後ろに何か居るって言ってたけど、ここまでのポンコツ具合を見てるとさ、本当に居るの? って疑問が湧いてくるんだけど」


 「私も若干ながら自分の予想に疑問を持ったわよ。それでも何かの組織の影があったら困るから調べるけどね。しかし……あそこまでポンコツなのも凄いわ。そうそうお目にかかれないわよ、アレは」


 「ですがトトルス伯爵本人も、あれぐらい酷かったですわよ? そうでなければ私が簡単に証拠を抜き取る事など出来ません。腹芸は出来ますが、盗賊のような真似は得意ではありませんもの」


 「盗みが得意な王女もおかしいから、それは当たり前だと思うけどね。それはともかくとして、冷めると美味しくないね。仕方ないんだけどさ」


 「確かに美味しくありませんね。とはいえ、これは全て愚か者達の所為であって、食べ物や料理の所為ではありませんわ」



 ちょっとした愚痴を言いつつ遅すぎる昼食を終え、各々は部屋に戻って休む。今日は第5エリアで大変な思いをしたうえ、バカな連中に絡まれて苦労したのだ。少しぐらい休まないと大変だろう、特にベルは。


 アレッサもティアも寝始めたので触手で持ち上げ、服を脱がせて【清潔】と【聖潔】で綺麗にする。アレッサはともかくティアも何の抵抗もしない。何故かと思ったら、王族は体を綺麗にしてもらうのが当たり前らしい。


 なので恥ずかしいという気持ちは無いそうだ。もちろん男性相手だと違うのだろうが、ミクは女性でさえない肉塊である。尚の事、恥ずかしがる理由が無いそうで、王族というのはやはり特殊らしい。


 2人を寝かせて【浄滅】を使った後、ミクもベッドに寝転んで目を瞑る。瞑想の練習をして時間を潰し、夕方になったら2人を起こして部屋を出た。


 食堂で小銀貨2枚を払い、適当に注文させる。まだベルが起きていなかったので起こしに行き、連れて来て注文をさせた。どうも第5エリアが相当大変だったらしく、ベッドに寝転がるとすぐに寝てしまったらしい。



 「本当に大変で、体がボロボロでした。ベッドに寝転がった途端、急激に疲れが出てきた感じで、あっと言う間に寝てしまい……耐える事など出来ませんでしたね」


 「それは仕方ないんじゃない? 【身体強化】で一気に進んだし、その所為で体の芯まで疲れたんでしょ。ダメなら明日もう1日休めばいいわよ。別に急がなくてもいいんでしょうし」


 「急ぐ必要はありません。私が第6エリアまで行くのは、単にハチミツが本当にあるかの確認です。第6エリアという厳しい場所ですが、本当にハチミツがあるのであれば城が高く買い取るでしょう」


 「姉上の仰る通りでしょうね。そのうえ、口の中が甘味で爆発する程だと聞きます。流石に怖いですから少量しか味わってませんが、その少量ですら驚く甘さでした」


 「あの美味しくない大麦パンなのに、ハチミツを少量塗った所は異様な甘さでしたからね。あれをスプーン一杯なんて、どれほどの甘味地獄に落とされるか……。ハチミツなのに若干の恐怖を感じるとは思いませんでしたよ」


 「あれはねー……あまりの甘さに唾液が止まらなくなるんだけど、その唾液が混ざると更に甘味が口の中に広がるのよ。むしろ唾液が出る所為で被害が広がるっていうね」


 「「………」」



 若干ではあるものの、アレッサの言葉に口元が引き攣るベルとティア。どれほどの甘味ならそんな事になるというのか。イヤな想像を必死に消していると、シャルとカルティクが戻ってきた。



 「今日も帰ってくるのに遅れたよ。昨日とは違って、余計なバカどもが絡んできたんでボコボコにしてた所為なんだけどさ。何と言うか、犯罪までは犯してない感じだったんだよ。だからボコボコで済ませたんだけどね」


 「私の方は、帰りの最中に2組もゴブリンに負けそうになってるのが居たのよ。それを助けてた所為で遅れてね。迷賊なんかを警戒する為に居るのに、こっちに負担をかけないでほしいわ」


 「ゴブリンも森の中だと厄介だからね。あいつらの肌の色は森の中じゃ見えにくいからさ、慣れてないと上手く発見出来ないだろうし仕方ないよ。誰もが【気配察知】を持ってる訳じゃないからねえ」


 「別にスキル云々じゃないのよ。どうして慎重に立ち回らないのかって不思議に思うわ。何故わざわざ余計な事をして、ゴブリンに位置を教えるのか。何でダンジョンの攻略中にダラダラ話をしてるのかしら」


 「分かっていない連中ほど、そういう事をするもんさ。あたし達ぐらいになると最低限の警戒はしてるけど、若い連中は出来てないのに気を抜くんだよね。それが若い連中だって言ったら、それまでなんだけど」


 「実力が伴っていないのに、軽はずみな行動をしているのですか……。そういう者から死んで行くと、ギルドマスターのラーディオン殿も言っていました」


 「あの小坊主も若い頃はヤンチャで、他人の話なんて全く聞こうともしなかったけどね。それで失敗しては学んでの繰り返しよ。結局、生き残るヤツとそうでないヤツの差なんて僅かでしかないのよね」


 「同じ失敗をしても生き残るヤツと、死んでしまうヤツに別れるもの。そこの差は何なのか……運って言ったら終わるだろうけど、それだけじゃないんでしょうね」


 「生き残るヤツは何処か冷静だったり、気が緩んでるように見えて緩んでなかったりするもんさ。死んじまうヤツとは微妙に違うだけなんだけど、その微妙な部分が明暗を分けるんだよ。ほんの僅かなのにね」


 「そういう事はよくある事だし、昔から変わらない事なのよ。運のように見えて、運だけじゃない何かがある。誰もそれが何なのか明確には分からないけれど」


 「でもそんなのに頼るようじゃ話にならないんだし、結局は慎重に立ち回って死ぬ確率を減らす必要がある。そもそも運で分かれるのはギリギリだけなんだし、最初からギリギリにならないようにすればいいんだよ」


 「まあ、それはね。ミクならギリギリでも問題ないんだろうけど、わたし達だとギリギリにならないようにしないと危険よ」


 「いや、あんたも大丈夫だろう。あたしだってそうだし、ティアだってそうだよ。他のヤツが怒るだろうから、自分を普通側だと言うのは止めな」


 「えー! わたしはどう考えても普通側でしょ。ミクほど何でもアリじゃないわよ」


 「ミクは何でもあり過ぎるだけだろ。そうじゃなくて、普通のヤツからすれば、あたし達だって何でもありに入れられちまうんだよ!」


 「「えー!」」



 何故かティアまで否定しようとしているが、ミクの血肉が入っている時点で普通の人間種ではない。


 そもそも今日、第5エリアを走り回ったのに碌に疲れてないじゃないの。そう思いながらティアを見ているベルであった。


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