0222・碌でもない肉塊
迷賊を始末した後、全員で集まるが酷いものであった。ベルの殺した迷賊は血を噴水のように撒き散らし、ティアの殺した男達も首から血を噴き出している。それでも2人の殺し方はまだマシなのだ。
アレッサの殺した迷賊は、肩口から脇腹の下まで袈裟懸けに両断されており、ミクの殺した迷賊など腹が刺されただけである。
いつもの三角錐槍で刺されたのだが、致命傷ギリギリの傷であり、その後は死ぬまで苦しんでから死んだ。
あまりにアレな殺し方だが、そもそも犯罪者であるので自業自得である。今まで散々犯罪を犯してきた者が、まともな形で死ねる事の方がおかしい。だからこそ適度な傷で放置したのだ。途中からは傷が原因で腸をブチ撒けていたが……。
「という事で、断トツで酷い殺し方はミクね。慈悲をかけてるフリして、本当は一番苦しむ殺し方をしてる。でも迷賊なんて、そんな死に様でいいと思うけどね」
「別に一番苦しむ殺し方では無いよ。もっと苦しむ方法はあるし、それを見せてもいいけど……っと、居た。あいつらで見せてあげるよ」
「いや、べつに………行ってしまったな」
「はぁ……行こっか?」
「ですわね」
3人とも見たくなどないのだが、何故か納得できないらしいミクに付き合う事に。そしてその結果は最悪だった。
アレッサが吐くのを堪えるほどに酷く、ティアとベルに関してはあっさりと吐いた。
「ギイァァァァ!!」
「イダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイ………!!」
「アガガガガガガ……!!!」
「ダレガダズゲデェェェェ!!!」
ミクが何をしたのか? それは体中の表皮を全て剥いだのだ。
肉で包み、体の表皮だけを喰らったら戻す。そうする事によって、風が吹くだけで全身が激痛を感じる状態になっており、最悪の拷問状態になってしまっている。
当然ながら全身が真っ赤になっており、これで真皮まで剥がれたら肉が剥き出しの姿になってしまう。
そうならないまでも、激痛を味わい続けているのだ、それに耐えられる筈も無い。やがて発狂して壊れるか、病気になって死に至るだろう。
という事で、ミクは迷賊をそのままにして進もうとする。が、流石にカルティクに止められた。
「五月蝿いからなんだと思って見にきたら、とんでもない事をやってるわねえ。王女2人が吐いたのも尤もでしょうよ。全身真っ赤で肉が見えてるじゃない。流石の私も引くわね、これは」
「え? 肉じゃないよ? 人間種には表皮という外側の皮があってね、その下に真皮という皮があるの。その下が肉なんだけど、これはまだ真皮で止まってるから、肉までは行ってないよ」
「ごめん、どういう違いがあるのか分からない。だってこいつら既に激痛で壊れかけてるじゃない。もちろん迷賊なんだろうし、奴等に容赦する必要なんてないんだけどさ……。それでも限度があると思うわよ?」
「えー。クソみたいな犯罪をやってるからこうなるんだし、自業自得じゃん。自分達のやってる事の自覚が有ろうが無かろうが、犯罪者に相応しい末路だと思わない? 痛みで眠る事も出来ないからね、これ」
「本当にもう……流石に殺してやりなさい。五月蝿いし」
「はいはい。しょうがないなー」
仕方ないという風にしながら、ミクはククリナイフで腹を切り裂いていく。腸をブチ撒けたらそのまま放置し、周りで見ている野次馬連中に見せ付ける。犯罪者の末路はコレだと、お前たち王都に戻ったら騒げよと。
カルティクもそれが分かっているので、この程度の文句で終わらせている。むしろ周りには注意したと見せ付けつつ、内心では拍手喝采だ。ゴミに相応しい末路だと喜んでいるが、表には一切出していない。
それらも終わり、死体はそのまま放置。周囲も解散したかの如く去っていく。2度と見たくないだけであろうが、それらが去った後にミク達も出発する。テンション最低の3人を連れて。
「そんなにイヤなものかな? そもそもだけど、ああされても文句は言えない奴等だよ? そういう犯罪者が、それに相応しい末路を辿っただけじゃん。むしろあそこまでされないから、つけ上がるんだと思うけどね?」
「仰りたい事は分かりますし、私もそう思います。しかし見たいかどうかと言われると……」
「絶対に見たくありません。少しの間、肉は食べられないでしょうし、中身があんなだなんて知りたくもなかった……!」
「ベルが素の喋り方するぐらいには酷かったみたいね。私は初めてじゃないけど、それでも見たくはないかな? 前に見たのはそもそも死んでる時だったし、生きながらに全身の生皮を剥げるのはミクぐらいじゃない?」
「うぶっ………ゴクッ。思い出させないで下さい。本当に話題にすらしないで下さい、お願いですから」
「あの程度でそんなに? とは思うけど、仕方ないか。じゃあ、この後どうする? もう帰った方がいい?」
「そうですわね、今日はもう帰りましょう。早いですけれど、気分が最悪です」
ミクは首を捻っているが、誰も彼もが怪物と同じメンタルを持っている訳ではない。というより怪物と同じメンタルを持っている方がおかしいのだ。それを考えると、3人とも普通の人間種の精神であったようで何よりである。
4人は探索者ギルドヘと行き、ティアが狩ったレッドアイスネークを売る。そこまでの数ではないものの木札を貰ったティアは、ギルドの建物に行き受付に提出する。そのまま登録証も渡し、ランクアップしたようだ。
「流石にレッドアイスネーク13匹は、ランク1から2に上がるには十分過ぎます。本来ならビッグラットやビッグラビット10匹でも上がるんですし」
「そんなものなんだ、特にランクなんて気にしてなかったから知らなかった。まあ、わたしはランクが低くても良かったし、いきなり11まで上がったからね」
「それは第5エリアを攻略したからでしょう。流石に初めてというか、第5エリアを攻略された以上は上がって当然です。確認でもありましたし」
周りで聞いている奴等も納得したらしい。流石にランク1から11はおかしいので聞き耳を立てていたのだろうが、初の第5エリア攻略者なら仕方ないといったところであろう。
ミクたちは探索者ギルドを出ると、そのまま<妖精の洞>へと戻る。まだ夕方には少し早いが、今さら何かをする気にはなれず、宿で休む事に決めたようだ。
宿の部屋へと戻った4人はミク達の部屋で休む事にした。ミクはずっと起きているので寝る必要が無く、どのみち夕食で起こすので問題は無い。
寝る前に【浄滅】を使って綺麗にしたら、後は椅子に座って瞑想の練習を開始。未だに上手くいってはいないものの、何となく精神が休んでいる気がするので方向性は間違っていないと思われる。
夕方まで続けたら3人を起こし、食堂まで連れていく。疲れていたのか、それとも精神的に大変だったのか、意外にぐっすりと寝ていた3人。なので頭が起きていない。
そんな3人を連れて食堂に行き、小銀貨2枚を渡して好きに注文させる。イリュも居たのでそっちにも注文させ、後は大人しく料理が来るまで待つだけだ。
「なんだか随分と眠たそうね? 少し前に帰って来てたけど……夕食まで寝てた? ああ、やっぱりそうなの。でも第3エリアを攻略した訳じゃないわよねえ。そんな時間は無かった筈だし」
「私が迷賊の皮を剥いだら、2人が吐いちゃってね。それで疲れ切ったのか帰ってきたの。犯罪者なんだから気にしなくてもいいのにさ、どうにも駄目みたい」
「それはそうでしょうよ。生皮を剥がれた後を見て、正気で居ろとは酷な事を……」
呆れた目でミクを見ているイリュ。とはいえ気にしないのはイリュも同じなので、どっちもどっちである。




