0219・ティアの第2エリア攻略・武器決定
第2エリアを攻略中のティアは、杖を八双に構えて振り下ろし、槍のように突き、薙刀のように切り上げる。様々な構えから攻撃を繰り出し、1つ1つ確認しながら戦っていく。それは間違いなく確認であり鍛練であった。
何度も何度も戦闘とは呼べない戦闘を繰り返し、敵を一方的に殺害していくティア。お腹が減ったらミクが大麦パンとハチミツを渡し、それを食べながらミクに修正する部分を聞いていく。どうやら根は真面目なようだ。
「ティアって思っているより真面目ね? 王女だし末っ子なんだから、もっと我が儘なのかと思ってたんだけど……良い意味で外れたわ」
「まあ、あの子はもともと真面目だけど、あの子の母が真面目な方だったからね。何でもそうだけど、全力でやってから諦めろという人だった。全力でやって出来なかったら仕方ない、でも全力でしなければ出来ないかどうかも分からない。だから全力でやりなさい、とね」
「成る程ねー。とはいえ全力で挑めるかどうかも才能なんだけど、そこは分かってない感じかしら。全力って本人が思っていても、それは全力でない場合もあるし、本当に全力を出した所為で体も心も壊れるって事もある。全力も難しいのよ」
「成る程、確かに人間種は長期の全力に耐えられるようにはなっていない。根を詰めすぎて駄目になるというのは見た事がある。大抵は真面目な人物だった……?」
「そう、真面目な者ほど体や心を壊すまでやるのよねー。全力でやれって言うのは分かるんだけど、全力に耐えられるのも才能だし、息を吐かないと駄目なのよ。全力であり続ければ、殆どの者は壊れる」
そんな2人の心配を気にする事はなく、ミクはティアに教えて動きを修正させる。そもそも限界が近くなれば無理矢理に休ませるので問題ないし、体が壊れる事も無い。怪物の血肉はそんなに脆くはないのだ。
杖を槍に見立てて持ち、向かってくるワイルドチキンの足元を突く。そこから上へと跳ね上げ、ワイルドチキンを投げ飛ばす。
頭から地面に落下したワイルドチキンは呻き、その隙に滅多打ちにして倒してしまった。ワイルドなのはティアではなかろうか?。
「そうそう、そんな感じ。杖というのは殴りつけるか突くしか出来ないけど、その反面色々な工夫が出来る武器でもある。あの程度の大きさならワイバーン製の杖が壊れる事もないからね、投げ飛ばす事も可能だよ」
「そうですわね。とはいえ、流石に杖では厳しいと言わざるを得ません。練習は杖でするとしても、そろそろどの武器にするか決めませんと……」
「流石に刃の部分がないと厳しい? まあ、殴打武器もあるから必ずしも刃がある訳じゃないけどね。ベルが持ってるメイスにはフランジが付いてるけど、中にはモーニングスターを持つのも居るし、アレは完全に殴打武器だからねえ」
「確かに。アレも古いメイスだし、もっと古いのは球体の物だな。刃も突起も無いが、代わりに何処で殴っても変わらないという便利な物だ。必ず何処かの部分が似たような角度で当たるからな。何も考えずに振り回すだけでいい」
「蛮族武器とか言われるけど、威力は高いのよねえ。ま、今は長柄の話かな? 何かティアはそっちを選びそう」
「そう……ですわね。長柄の武器というのはなかなかに面白いと思います。もっと振り回すだけなのかと思いましたが、思っているより様々な技術があるようですし、それを考えると長柄で刃物が付いているのが良いでしょうか……?」
「長柄で刃物。でも杖で練習できると考えたら、槍か矛か戟か薙刀。この4種のどれかかな? ま、とりあえず作ってあるから出すよ」
いつ作っていたのかサッパリ分からないが、ミクはアイテムバッグから4種の武器を取り出す。通常の穂先の素槍、剣型の穂先の矛、シンプルな横刃と槍の穂先の戟、そして細長い刃の薙刀。
それぞれ見た後、まず槍を除外したティア。理由としては、杖を使っていた時と感覚が合わないとの事。杖の時は突きに特化していなかったが、この穂先では突きに傾き過ぎだと感じたらしい。
「穂先にも色々な形があるし、素槍の穂先でも斬撃が出来ない訳じゃないよ。まあ、肝心な時に折れる恐れはあるけど。それはともかく笹穂型や短剣型とかね、斬撃が十分に可能なヤツもあるから、槍は突きだけとは決まってないよ」
「でもミクの槍は三角錐の形の穂先よね? まあ、敢えて突きに特化させてあるんでしょうけど」
「そう。私は色々武器を持ってるから、槍に関しては突きに特化させた方が都合が良いわけ。何でも出来る武器って、どっち付かずな武器にしかならないからね。特化した方が強いっていうのは多いよ。当たり前だけど」
「特化ですか……流石にアイテムバッグがなければ難しいでしょう。とはいえ大半の探索者はアイテムバッグを持っていないのですから、皆考えて武器を決めているのでしょうね」
「平均的な武器では普通止まりで、特化武器では苦戦する相手が居る。どうするかは本人次第だけど、基本的にはチームを組んでるからね。色んな特化が集まってると考えればいいのかな」
「全員が剣とかいう連中も見た事あるけどね。しかも全員が盾持ち片手剣の連中だった。あれは何がしたいのかサッパリ分からない陣容だったよ、本当に」
「誰も彼もが同じ立ち回りって、邪魔にしかならないじゃん。挙句に威力の高い武器持ちがいないから、チマチマ傷を与えていくしか出来ないし……。そいつら稼げてないんじゃない?」
「多分ね。探索者である以上、なるべく獲物に傷を付けずに倒さないといけないし、そうしないと儲からない。戦争に行く騎士や兵士じゃあるまいし、全員盾持ちっていうのはねえ……しかも剣って」
「ミクも盾は持つけど、代わりに武器はウォーハンマーだもんね。しかも理由は耐久力が高いという事だけだし、それでもミクの全力の4割にしか耐えられない。パワーで押せるからこその強さよねえ」
「決めました。私はこの薙刀というのでお願いします。この柄が妙に持ちやすくしっくり来ましたので、これに決めさせていただきました」
「ああ。薙刀の柄は楕円形だからね。持って振りやすい形なんだよ。さて、決まったから後は仕舞うよ」
ティアが武器を交換しての第1戦。出てきたのは牛の魔物だったが、ティアはかわしながら足を切り裂いて転倒させ、その隙に接近し首に振り下ろした。睡眠学習の成果か簡単に切り裂き、魔物は血を噴出。
そのまま死亡まで放っておく。その後はレティーが血を吸い取り、それが終わると先へと進む。
なかなか上手く使えていたのではなかろうか。幾つか与えた知識の中から薙刀を選んだのだろうが、しっくり来たのだろう。ティアは笑顔だ。
「やはり思っていた通りに馴染みます。威力も高く使い勝手も良い、私に合った武器のようですわ」
「それなら良かった。ま、色々な武器を使ってもいいんだから、さっきの武器もあのまま置いておくけどね。アレッサは何か使う?」
「別にいい。私としては出来るだけ力を篭めて振り下ろしたいし、それにはウォーアックスが一番合ってる。ミクの持ってるウォーハンマーでもいいけどさ」
「私としては、ミク殿の御蔭で力が増えたり体力が増えたりしていますが、それでも力は温存するべきだと思っています。なので、切れ味鋭い武器で素早く倒したいですわね」
「そこは人それぞれだと思うよ。私は力尽くで振り回す方が合ってるから振り回したいんだし、敵を切り刻みたい人が居ても良いと思う」
アレッサは「うんうん」と頷きながら話すも、ティアは「違います!」と言って否定している。それを見ながら悩む2人。
果たして本音はどうなのだろうか? それは誰にも分からない。




