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0216・第2エリアで練習




 初心者エリアを脱出後、遅い昼食へと向かう。適当な店に入り、小銀貨1枚を支払って好きに注文。よく分かっていなかったティアに教えつつ、好きな物を頼ませた。実際に自分で食べてみないと分からないものである。


 出てきた料理を食べるものの、そこまで嫌な顔もしないティア。どうやら王城でもそこまで良い物は食べていないらしい。もちろん料理人の腕前は良いのだろうが、だからといってこの文化水準の星では……。


 それに香辛料などが乏しい中では頑張っている方であろう。ジャンダルコから香辛料は運ばれてくるが、高過ぎて普通の食堂ではまず使えない。そして高いのでそこまで運ばれて来ないのだ、高くて売れない所為である。



 「それでも、それなりに美味しいと思いますわよ。この味であれば問題なく食べられますし、不満にもなりません。それに、王城ではあまり良い物を食べられないようにしてあると聞きます」


 「なんで? 普通は王族って豪勢な物を食べるって聞くわよ? ジャンダルコもそうだったけど、不思議なものねえ……」


 「何でも、豪勢な食事に慣れると嫁ぎ先で困る事になるからと、豪勢な食事だと庶民の不満が向きますからね。王城の料理は良い物ですけど、食材は庶民と変わらない物としているのです。貴族は贅沢な物を食べていますが……」


 「ゴールダームは殆ど王女を外に出さないって聞くけど、それでも出す際の事を考えておかなきゃ駄目か。出す事になった際に贅沢が当たり前の王女だと……相手国で何を言われるか分からないものね」


 「ええ。それに贅沢な料理って、太る物が多いというのは知っていますし。現に貴族の子女には、そういう子が多いので」


 「何ていうか、あまりに想像通り過ぎて笑えない」


 「あれは本当に酷いのです、全く自己管理が出来ていないとしか思えません。堂々とお腹の出た者用のドレスを着てくるのですから。……まあ、どれだけ頑張っても入らないのでしょうけども。それにしたって、ねえ?」


 「本当にね。貴族の娘ならば、せめて節制して美しさを磨いてきなさいと言いたくなる。碌に勉学に励む訳でもなく、体を鍛える訳でもなく、ブクブク太るだけ。いったいあの脂肪に何の意味があるのやら」


 「だからこそ節制して美しさを保っているのが評価されるんじゃない? まあ、やたらに痩せてガリガリなのは美しくないけどさ。たまーに、病的に痩せてるのとか居るじゃん。あんな貴族の娘も居ると思うのよね」


 「居ます。いつだったか思い出せませんが、病気かと見紛うほどに痩せた方は居ました。あまりにあまりで見るに耐えませんでしたが……その後に亡くなったと聞きましたわ。物凄く痩せ細っておいででした」


 「やっぱりねえ。そもそも痩せてるのって美しくないんだけど、病的に痩せてるヤツって何を考えているのかしら? 冷静に考えれば見るに耐えないって分かるでしょうに」


 「それが分かるのでしたら、あんな病気かと思うほど痩せたりしませんわよ」



 何処の星にも、いつの時代にも、そういう女性は居るらしい。危険だから止めた方が良いし、鳥ガラは美しさとは程遠いのだが……。


 昼食を食べ終わったミク達は、ダンジョンの第2エリアに行くものの攻略はしない。1階の邪魔にならない場所へと移動し、訓練を行う事にしたのだ。何といっても、ティアが戦いの術を知らなさ過ぎる。それはベルもだが。


 なのでミクとアレッサが基本から教える事にした。あくまでも基本なので大した知識ではないが、それでも無いよりはマシである。



 「まずは歩き方ね。大きく足を踏み出さないで歩く。なるべく体に力を入れず、少し体を前に傾けて自然に歩き出す。理想は関節などの動きで歩く事であり、筋力をなるべく使わない事。まずはそれを意識して始めよう」



 歩き方にも色々あり、普段はなるべく体力を使わない歩き方が正しい。優雅な歩き方もいいが、探索者にとっては見栄えよりも中身だ。無駄に体力を使う方法は無くしていかなければいけない。


 優雅に見える歩き方も悪くはないのだ。背筋が伸びており、体重をしっかり支え、体が揺れないように歩く。無駄にフラフラしないので余計な力を使わなくて済む。


 しかし探索者に必要なのはそれではなく、言うなれば登山の歩き方だろう。なるべく体力を温存し、無駄な体力を消費せずに黙々と歩く為の技術。もちろん登山の歩き方のままではないが、体力を使わないのは大事なのだ。



 「うむむむむ……。今までと違うので難しいですわ。見栄えよりも体力を使わない歩き方というのは分かりますけれど……」


 「確かにな。とはいえ子供の頃から徹底的に教えられてきた事だ、そう簡単には変わらない。やはり意識して動かさないと上手く歩けないな」


 「それでも重要だから練習、練習。ダンジョン攻略で重要なのは体力よ。それが無くなったら逃げる事も出来ないからね。とにかく最後に物を言うのは体力なの」


 「死んだらそこで終わりだからね。生きる為には体力をなるべく温存しておく必要がある。鍛えても限度がある以上、なるべく体力を消耗しないようにもつとめなきゃ駄目。そうしなきゃ、肝心な時に逃げられない事になりかねない」


 「逃げると聞くとアレだけど、余計な戦闘を回避するというのは攻略において重要な事。無駄な戦闘を続けて疲弊しては、進むのも帰るのも大変になる。そうやってどうにもならなくなって、死ぬという事もあるらしい」


 「そりゃあるわよ。7階で襲ってきた連中もそうだったでしょ。あれだって進む時に連れて行くか、殺して進むかで迷ったんだし。結局は連れて行って正解だった訳だけど、普通なら殺してるわよね。わたし達だから大丈夫だったけど」



 話をしながらも歩き方の訓練は続き、その後は武器の使い方に移った。ベルはアレッサと模擬戦中だ。適当に渡したトレントの棒でアレッサは戦っているが、ベルは完全に攻めあぐねている。


 棒の方が長いのとアレッサが出鼻をくじく所為で、すぐにベルは防戦一方になってしまうのだ。その横でミクが杖の使い方を教えている。



 「剣だとこう持つ。そして槍だとこう。長柄だとこんな感じかな? 剣の場合は中段、上段、下段、霞、脇、八双。それぞれの構えがある。長柄だと中段、上段、下段、脇とある。これらが基本かな?」


 「構えるだけでも色々とあるのですね。槍の中段だけ持ち方を教えていただきましたけど、まずは構え方から覚えなければいけないとは……」


 「仕方ない。どんな事でもそうだけど、基本が出来ていなければ上達しない。基本がおろそかなのに大成した者などいないしね」


 「道理ですわね」



 それからティアは熱心に杖を振り続けた。その際にも足運びや体重移動を教え、それにも苦しみながら時間は過ぎる。元々初心者エリアが終わったのが遅かったのと、集中していたので気付いた時には夕方近くになっていた。



 「練習しているところ申し訳ないんだけど、もう夕方に近いからそろそろ帰ろうか? とりあえず綺麗にしてからね」



 そう言って、ミクは全員に【清潔】と【聖潔】を使い、その後に【浄滅】も使った。流石にやり過ぎだと思うが、綺麗になりスッキリした事で喜ぶティアとベル。【浄滅】を理解していないからだろうが、アレッサはスルーして声を掛けた。



 「サッパリして嬉しいのは分かるけど、そろそろ戻りましょう。ここに居てもしょうがないからね」



 その言葉で歩きだし、脱出の魔法陣で外に出た4人。そのまま<妖精の洞>へと歩いて行き食堂に入る。イリュが来たら話をしないとなと思いつつ、小銀貨1枚を渡して適当に注文させた。


 ミクも注文して待っているとイリュが来たので、ミク達の部屋を3人部屋に変更してもらう。それとベルの一人部屋も頼み小金貨1枚を渡した。



 「また、小金貨……まあ、いいけど、ベルの部屋は既に用意出来てるわよ。本来なら昨日から使われてる筈の部屋がね」



 昨日は色々あったのだから、仕方ないと言えるであろう。第三王女が死に掛けたり不老になるなど、誰も予想できる筈が無い。


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