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0017・第4エリアの魔物




 ランサーブルを倒したミクは、まず鉄のナイフを使って首を切り裂いて血抜きをしていく。人外パワーならば持ち上げられて当たり前なのだが、普通の探索者には難しい。


 とはいえ【身体強化】は知られているので、言い訳は簡単に出来るだろう。ミクはランサーブルの足を持ち上げたら逆さにして血抜きをしていく。こんな事で時間を使いたくないのだが、素早く血抜きをする方法が無い。


 一度ギルドに行って、素早く血抜きする方法などを聞いておいた方が良いのかもしれない。そんな事を考えながらも血抜きをしていき、十分に出きったと思った段階で荷車に載せる。


 割と重量があるが壊れる事もないだろう。そう思ったミクはそのまま入り口へと戻る。重くなった荷車を牽きつつ戻っていると、目の前に突然ロックリザードが出現した。


 すぐに武器と盾を持ったミクはロックリザードに向かって歩いて近付く。そんなミクを見ていたロックリザードは、突然動き出して接近するとミクに噛み付いてきた。


 体の長さが4メートルほどあり、首の長さも1メートルほどあるトカゲ。それがロックリザードである。ミクの左上から噛み付いてきたロックリザード、それに対してミクは盾を構える。


 そこまで大きく開く口ではないからか、カイトシールドの縦幅は超えられなかったらしい。口を正面からガードしたミクは、ウォーハンマーでロックリザードの右前足を潰す。


 人外パワーの一撃で破壊した以上、そう易々とは動き回れない。素早く右前へと進んだミクは右後ろ足も破壊。それでロックリザードはまともに動けなくなった。こうなると後は殺されるしかない。


 首の根元にウォーハンマーを叩きつけられた後、首を蹴られて千切れ飛び、あえなく死亡した。胴体と首を持って血抜きを行い、ある程度の血が抜けたら荷車に載せて牽く。



 (血抜きが本当に面倒。触手を突き刺して血を飲めば済むけど、ここは平原で誰が見てるか分からない。それに遠くを見るスキルもあるから、周りに居ないからといって気を抜く訳にもいかないし)



 心の中で愚痴りつつ、ミクは荷車を牽いて1階中央の魔法陣から脱出する。外に出たミクは荷車を牽いてギルドへと移動し、ギルドの横の道から裏にある解体所へと回る。


 解体所は大きく作られており、ギルド本体よりも大きい場所だった。といっても屋根があるくらいであり、壁は臭いが篭もるからか存在していない。


 幾つも支柱が立てられており、その支柱の上に横向きに柱が乗せてある。洗濯物を干す時の物を想像すると分かりやすいが、その横の柱から幾つもフック付きのロープが垂れ下がっていた。


 そんな場所に居る職人にミクは話しかける。



 「すみませーん。獲物を売りに来たんですけど、どうすればいいですか?」


 「おう! この近くまで荷車を持って来てくれ。後、【身体強化】とか使えるなら運ぶのを手伝ってくれると助かる!」



 椅子に座ってパイプを吸っていたドワーフが、大きな声でミクに指示を出す。それを聞きつけたのか、他の職人も近くにやってきた。ミクは解体所のギリギリまで荷車を牽いてくると、ドワーフが中身を検分する。



 「おいおい、こりゃあランサーブルか? 重要な額の角は一切傷付いてねえが、脳天が陥没してやがる。………あー、嬢ちゃんのウォーハンマーかぁ。んなもん脳天に喰らったら、ランサーブルも沈むわな」


 「親方、見てくださいよ。こっちのロックリザードは足を潰されてますぜ、しかも片側だけ。そのうえ首の根元にウォーハンマー喰らった跡がありますし、尋常じゃねえ」


 「どっちも必要な素材は潰れてねえからキチンと使えるし、そもそもこのランクの魔物は綺麗に殺されてる事の方が珍しいからなぁ。嬢ちゃんの獲物は十分に満額出せるだろうさ」


 「………そうだな、問題ねえ。両方とも査定はAにしとく。なかなかに珍しいが、反面ここからワシらの腕の見せどころだ。分かってるな、お前ら! 気合い入れろ!!」


 「「「「「おうっ!!!」」」」」



 ミクは獲物の名前とAと書かれた木札を貰い、荷車に【清潔】を使って表へと行く。ギルドの左前に荷車を置き、中に入って受付嬢の所へ。木札を出すと登録証も出すように言われたので、首から外して渡す。



 「はい。ミクさんでランクは1、そして狩ってきたのが………ランサーブルとロックリザード!? えっと、これは本当で? 誰かを利用した訳でもなく?」


 「利用っていうのがよく分からないけど、そもそも守護者を倒さないと先に進めない訳だから、私が行けても不思議じゃないんだけど」


 「ちょっと待てよ。誰かのチームに臨時で入れてもらえば、ボスは突破できるだろ。お前の実力かどうかは分からねえ」


 「仮にそれでボスを突破したとして、ランサーブルとロックリザードはどうする? その2匹も誰かが助けてくれたとでも?」


 「そ、そうだ! どうせ卑怯な事をやったに違いない! 他の奴が認めても、オレは認めねえ!!」


 「こんな事を言ってるけど、ギルドとしてはどうなの?」


 「ギルドとしては一探索者の意見で変わるなんて事はありません。仮に卑怯な事をしていても、それを証明できない限りは唯の言い掛かりですので」


 「ぐっ………言い掛かりってなぁ! オレは「止めとけ」誰もが……」


 「止めとけ、ガッツォ。お前の勝てるような相手じゃねえ。オレでさえ手も足も出ねえ相手だ。冗談でも何でもねえぞ、死にたくなけりゃ止めておけ」


 「オドーさん!? ……マジですか? こんな女の、どこが強いってんですか!?」



 そう言ってミクを掴もうとしたガッツォという少年の手は逆に掴まれ、バランスを崩すように引っ張られると、そのまま引っ繰り返された。何処かの星では「空気投げ」と呼ばれる技に近い。



 「えっ、あ……はぁ!?」


 「ほら見ろ言わんこっちゃない。お前が勝てる相手じゃないって言ったろうが。そのうえオレ達のチームと同じ第4エリアだぞ。お前はまだ第2エリアだろうが」


 「うっ、ぐ……でもですね!!」


 「そもそもオレが負けたっつったろ。これ以上は言わねえぞ? ……お前さんもすまんな、オレは喧嘩を売るつもりはねえから勘違いしねえでくれ」



 そう言って、かつてミクに負けたオドーという男は去っていった。どうやらガッツォという少年を止めに来ただけらしい。


 その間にも売り上げは用意されており、ランサーブルが大銀貨2枚、ロックリザードが中銀貨3枚という値段だった。


 ミクはそのお金を小袋に入れて、返された登録証を取ろうとしたその時、ガッツォという少年がミクの登録証を奪っていった。



 「けっ! お前なんっ!?」



 それ以上ガッツォは言葉を紡ぐ事は出来なかった。何故ならミクが後ろからガッツォの首を片手で掴み、締め上げながら宙に浮かせていたからだ。



 「ぐげっ! がふっ………ご、ぐ……ぎぃ……」


 「バカが下らない事をするからだ。とっとと登録証を返せ」



 ミクがそう言うと、ガッツォは右手に持っていたミクの登録証を放り捨て、かすれた声で「拾え」と言った。その瞬間、怪物は解放されてしまう。


 右手を少年の首から外したミクは、床に落ちたガッツォの足を払い床に倒すと、腹に向けてストンピングを開始。ドゴォッ! ドゴォッ! という音がするストンピングであり、あまりの音に受付嬢はドン引きしている。



 「グボォ!! ガハッ!! ゲベェッ!? ……ゴバッ!! ガッハ!!! ゴボェ!!!」


 「死ななければ分からない奴は、とっとと死ね」



 ミクは淡々と無表情のまま、腹に足を落とし続けたが、音が五月蝿かったからだろう、最後にはギルドマスターに怒られる形で止められた。


 ミクは登録証を拾いに行き、そのままギルドを出る。呆然とした探索者と呻くだけのガッツォを残して。


 そしてギルドマスターだけが、「仕方ないな」という顔をしていた。


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