表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/623

0016・第4エリア・平原ダンジョン




 「最後は北西のドルムかー……。あそこは裏から狡い事はしたりしないと思うんだよな。ドワーフが王様だし、一年中寒いから穴蔵生活だ。中に入ったら暖かいんだけど、あそこの連中がいちいち外に出てくるのか?」


 「太陽が西から昇るくらい、あり得ないと思うよ? あそこの連中って穴蔵の中が好きだし、外に出ると極寒だからね。可能性として無くはないって感じかなぁ……すっごく低いと思う」


 「まあね。私達エルフも外に出ないけど、あそこも外に出ないわよねえ。元気に外に出るのって獣人のフィグレイオと人間のカムラぐらい?」


 「ジャンダルコもそれなりには外に出る。あそこは荒地や砂漠で厳しいから、外に対して敏感に反応する。特に荒地で育てられる作物とかだと、血みどろの争いに発展しかねない」


 「あー、そりゃなあ。昔って言っても2年ぐらい前か? <鮮烈の色>の結成当初、各国を回ったけど色々あったもんなー。懐かしいけど、まだ2年しか経ってないのかい」



 女性4人は思い出話に移行し、楽しく会話をした後に眠るのだった。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 ゴールダームの南東にあるのはエルフィン樹王国。樹人族、つまりエルフが治める国で、殆どの国民はエルフで構成されている。国をあげて崇めているのは木の神。


 何処かの星のお話のように世界樹とやらが在ったりはしないが、木の神を崇め、森に住んでいる。森に住む理由は心身を厳しい環境に置いて己を鍛えるためだと言われており、精強な兵士を有している。


 強力な弓矢の産地として知られ、この国の兵士は「森の悪夢」と呼ばれる。


 □□□□□


 ゴールダームの北東に位置しているのはフィグレイオ獣王国。寒い地方であり、それ故に獣王の下に団結している国民性を持つ。力こそパワーという脳筋が多いように思えて、そんな脳筋では生きていけない国でもある。


 寒さが厳しいからこそ鍛えられた心身は強靭で、更に一糸乱れぬ動きを行う。兵士の練度も高く力のある国。主に信仰されているのは海の神であり、塩の一大産地でもある。


 □□□□□


 ゴールダームの南から南西にあるのがジャンダルコ商王国。荒地と砂漠の国であり、かつてエルフィン樹王国から移り住んだ者達が興した国。


 彼らは何故か姿が変わってしまっており、今では夕闇族、ブラウンエルフと名乗っている。エルフが白肌金髪なのに対し、彼らは褐色肌で銀髪なのが特徴。また崇めている神も太陽神である。


 荒地と砂漠という厳しい環境で採れる物を売り、それで食料を買うという商業が盛んな国。荒地と砂漠が多いが平地や草原が無い訳ではない。また、雨はそれなりに降るので、そこまで水に苦労する国では無い。


 □□□□□


 ゴールダームの西にあるのがカムラ帝国。ここは人間の皇帝が治めている国であり、かつては小国が乱立していた地域である。纏めた初代皇帝が人間であった為、現在も人間しか皇帝になれない。


 雑多な種族が暮らす国ではあるものの、暗闘が非常に激しい国でもある。それだけ権力者の入れ替わりが激しいのだが、倒れたり傾いたりしない不思議な国という評価が多い。


 崇めているのは雷の神であり、初代皇帝は雷を操れたとも伝わる。おそらく幾つかの魔法を複合化させたものだろうと言われているが、詳細は皇帝しか知らない。暗闘以外は良い国であろう。


 □□□□□


 ゴールダームの北西にあるのがドルム地下王国。ドワーフが王をしているが、やる気の無い王として有名。彼らは一年の大半が雪に閉ざされる地に住んでおり、王というよりも纏め役が正しい表現であろう。


 それ故に他国と違い、しっかりと役割や役職などが決まっていない。かなりアバウトであり、他国が交渉に向かうと色々な所を盥回しにされる事も多く、そういう部分は物凄く嫌われている。


 地面に穴を掘ったり、坑道の中で暮らしている為、地表には住居が無い。それは、この地域で地表に建物を建てて住んでも凍え死ぬだけだからだ。地中の方が暖かい以上、地中に住むのは当たり前とも言える。


 尚、二酸化炭素を吸って酸素を出す苔や、有害な気体を吸い浄化する植物なども大量に生えている為、普通に穴蔵の中で生活出来てしまう。主に掘り出しているのは各種金属と石炭。特に石炭の埋蔵量は多い。


 国を挙げて他国から食料を買っており、その食料で酒を大量に作っている。崇めているのは炎の神と大地の神、そして酒の神である。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。朝早くに起きたミクは、準備を整えて部屋を出る。カウンターに居る女将に大銅貨3枚を渡して部屋を確保し、食堂に行って大銅貨1枚を払い、大麦粥を食べる。


 朝食後は真っ直ぐダンジョンの方へと向かい、近くにある荷車屋で荷車を借りる。大銅貨3枚を支払って借りたら、牽きながら第4エリアのショートカット魔法陣へ。すると、後ろから<鮮烈の色>も来た。


 一番後ろでセティアンが荷車を牽いている。長く探索者をやっているならアイテムバッグぐらい持っていると思っていたが、意外にも荷車を牽いてきたのでミクは驚く。



 「ん? なんだい急に。……ああ、アイテムバッグか。ウェルドーザだけは持ってるけど、それに頼る気もないからね。だから荷車を牽いてるのさ。中で順繰りに交代して牽くんだよ。ウェルドーザは牽かないけどね」


 「私アイテムバッグ持ってるし、それにスカウトだもの。動かなきゃいけない仕事だから、牽いていられないのよね」



 そんな話を始めたが、ミクの順番が来たので魔法陣に乗り、ダンジョンへと進入する。


 第4エリアは平原のエリアであり、見通しは非常に良く遠くまで見える。その平原エリアをミクは進んで行く。


 ここで出てくる魔物で高く売れる魔物は、ランサーブルにロックリザードにグリーントータスがある。どれも特殊金属用の魔物素材になる狙い目の魔物だ。取り合いになる魔物なので、ミクもそれに参戦する事になるだろう。


 他にもゴブリンやコボルトに、ジャイアントラットなどが出てくる。この平原エリアは既に上級者エリアなので、1匹辺りの単価が高い。


 ランサーブルならば、額から出ているランスのような角。高級肉に分類される肉や、鎧にも使われる皮など。1頭で多くの売れる部分がある為、1頭丸ごと持って帰っても問題無い。荷車には血抜きさえすれば2頭は積めるだろう。


 そんな単価の高い魔物を探して出発したミクは、階段のある東とは逆の西に出発する。階段方向には人が多そうなので、逆側に行って魔物を狩ったらすぐに脱出しようと思っての行動だ。


 これが大失敗であり、なかなか魔物に会う事が出来なかった。おそらく誰も彼もが同じ事を考えており、同じ行動をとっているのだろう。素直に階段側へと行くべきである。


 幾らベテランしか来れないエリアであろうとも、それなりの数、ベテランと呼ばれる者達は存在する。そんな連中が何もしていない筈などなく、とっくに狩ってしまっているのだ。


 それでも西へと歩き続けていると、ランサーブルを発見。荷車の中に放り込んでいたウォーハンマーと盾を取り出し、構えて敵の出方を見る。


 ランサーブルは素直に最大火力の攻撃を行ってきた。そう、額の角を前面に押し出した突撃だ。


 ドドッドドッという音と共にランサーブルが駆けてくるが、ミクは左ステップで回避しつつ、ウォーハンマーのフックを前足に引っ掛ける。


 力を入れて持っていなかったミクの手からウォーハンマーは離れるが、足を引っ掛けられたランサーブルも転倒。派手に転がっていく。


 ミクはすぐさまウォーハンマーを拾い、立ち上がろうとしているランサーブルの左後ろ足に振り下ろす。ドゴォ! という音と共に足を潰されたランサーブルは2度と走る事も出来なくなってしまった。


 ここまで来れば誰でも勝利は確定である。足が潰された牛など怖くはない。元々まったく恐怖心を抱いていないミクは、ランサーブルの頭に振り下ろし、一撃で潰して勝利した。


 第4エリアの魔物とて、怪物の相手になる筈も無し。そんなところであろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ