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0015・鮮烈の色




 「そういえば自己紹介がまだだったね。アタシは探索者チーム<鮮烈の色>のアタッカーでリーダーのファニス。見て分かる通り、虎獣人でランク8だ」


 「私は<鮮烈の色>のマジシャンでルッテ。兎獣人でランクは7ね」


 「私は<鮮烈の色>のスカウトでウェルドーザ。樹人族でランクは13です」


 「あたしは<鮮烈の色>のタンクでセティアン。巨人族でランクは8。その盾とハンマー凄いね、まるであたし達巨人族用の物みたいだ。本当に使えるのかい?」


 「大丈夫。ほら」



 ミクは片手で当たり前のように”総鉄製”のウォーハンマーを持ち上げる。それがどれほどの事かは理解していないらしい。明らかにおかしいのだが、ミクは分かっていない。



 「持ち上げる事が出来ても、本当に振り回せるのかい?」


 「ああ、【身体強化】が使えるから大丈夫。それに明日からは、やっとお金儲けが出来るし。今まで攻略を優先した所為で、未だにランク1なんだ」


 「えっ? ランク1!? ……実力はあったって事かー。たまーに、そういう人いるよねえ。結構な才能があって、ランクを上げなくても進める人」


 「それでも凄いけどな。流石にソロでランクも上げず、第4エリアに到達するって並じゃないぞ。トレント戦で運が良かったって言ってもだ。相当の実力がなきゃ、そもそも不可能だからな」


 「奇跡なんて起きないのがダンジョン。突破できたという事は、それだけの実力があるという事。そこは誇っていいと思うわ」


 「そうなんだ」



 ミクは適当に会話をしているように見せて、決定的なボロは出していない。そもそもギルド前で殴り合いをしているし、その時に【身体強化】を使って見せている。なので、アレの御蔭と勘違いしてくれるだろう。


 何よりミクは一人で攻略をしている、つまりソロだ。挙句に第3エリアは森。見られていたのはカルティクぐらいであり、実力は周りが勝手に誤解してくれる。カルティクはミクを優秀だと紙に書いていた。なので問題はない。



 「ごちそうさま。それじゃあ、私は部屋に戻るから」


 「おっ、酒は飲まないタイプかい? そりゃ良い事さ」


 「そう言いながら、お酒を一気飲みするのは止めなさい」



 そんな事を言っている<鮮烈の色>と別れ、ミクは自分の部屋へと戻る。下着姿になったらベッドに潜り込み、最低限の関わりだけ残して停止するのだった。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ここは<鮮烈の色>が泊まっている宿の4人部屋。そこではリーダーのファニスが酒を飲み直しながら、他のメンバーと話し合いをしていた。その主題は当然、怪しいランク1の女。つまりミクの事だ。



 「おい、アイツどう思う? ソロで第4エリア……確かに相当の実力がある奴なら無い訳じゃない。しかし、そんな奴が名も知られずにゴールダームに現れるとは思えないんだが?」


 「それだけの実力があるんじゃないの? ……いやいや、適当に言ってるんじゃなくて、生き残ってる以上は相応の実力者でしょ。名が売れてるかどうかは別にして」


 「それは間違いないわね。それだけの実力が無ければトレントは倒せないもの。仮に嘘なら、ただの嘘吐きで終わる話だしね。でも、そう考えてないんでしょう?」


 「ウェルドーザだってそう考えてないだろう? アタシが見た感じじゃ、まだ実力を隠してる気がするんだよ。そうなると、どれ程の実力を持ってるのやら……」


 「そもそも総鉄製のウォーハンマーを片手で簡単に持ち上げてた。人間が片手で楽々持ち上げられるような重量じゃない筈。弱く【身体強化】を使ってたのかもしれないけど、それでも……」


 「中が空洞とか? もしくは鉄を貼り付けてあるだけで、中身は木? そうじゃないなら……」


 「【剛力】か【怪力】持ちだと思う。ただ、あれらのスキルには明確な弱点がある」


 「強力な力は出せるけど、凄く腹が空くんだろ? アタシの【俊敏】だって同じで腹が減るからなー」


 「私の【遠耳】はお腹空かないよ? 代わりに長時間使うと逆に耳が遠くなるけど」


 「私の【集中】は優秀だけど、長時間使うと頭が痛くなるのよねぇ」


 「私の【頑健】は特にどうこうは無い。代わりに効果は薄いけど」


 「それが一番良いって。セティアンに崩れられたら、アタシ達が困るからな。効果は薄いけど何のデメリットも無いんだ。アタシ達からしたら、そっちの方がありがたいもんさ」


 「ともあれ、第4エリアまでソロで行けるって事は、何らかのスキル持ちでしょう。場合によっては複数持ちの可能性すらあるわ」


 「それなら本人が言ってた通り、ソロで行けるトコまで行くだろうな。幾らスキル持ちでもダンジョン内で襲われたら危険だ。流石にトレント相手でそんな事をしてくるとは思わなかったのかもしれないがな」


 「そういえば、それよ。トレントなんて危険なボスを相手にして、女性を罠に嵌めて襲うって……。仮に事実なら相当の腕を持ってないと無理よ? 結果的に上手くいったらしいけど、”何処”の連中かしら?」


 「アタシらが見た訳じゃないんだから種族は分からないさ。人間や犬猫獣人、もしくは兎や狐辺りだと何処にでも居る。何処の国かは特定出来ないだろう」


 「相変わらず、この国の周りにはダンジョンが欲しくて仕方がない国がある。荒地エリアの鉱石や森エリアの薬草、それに平原エリアの素材。行ける人数は少ないけど、山エリアに出現する特殊金属を作る為の魔物素材も」


 「特に求めてるのは特殊金属用の魔物素材だろうね。私のショートソードの材料でもあるエクスダート鋼は、喉から手が出る程に欲しいんじゃないかな」


 「そりゃ下手なヤツじゃなきゃ、鉄ですらバッサリ切り裂く金属だからなぁ。各国ともに喉から手が出る程に欲しいだろうよ。ゴールダームですら簡単には出回らないのに、各国だと王家か高位貴族しか持ってないくらいだろ?」


 「エルフィンには無いんじゃないかしら? 無理に使う物でもないし」


 「エルフの国かよ……。あそこは代わりにドラゴンの爪で出来た短剣があるんじゃなかったか? 確か国宝の」


 「そうよ。かつて古い時代に与えられた物で、それを持つのが王の証なの。私も見た事ないけど、宝物庫にあるそうよ。今の王様の戴冠式に使われたっきり。それから200年くらい眠ったままだしね」


 「200年って……。相変わらずエルフの時間感覚は分かんないなー。一生理解出来る気がしないね。まあ、する気もないけど」


 「話を戻すけども、南東のエルフィンはそこまでじゃなくても、北東のフィグレイオは? あそこは獣人がメインの国だし可能性は高そうでしょ。金属がダブついているらしいし」


 「そういう意味なら南から南西のジャンダルコも狙ってる。あそこは荒地と砂漠がメインだけど、金属もよく採れる。夕闇族のところだけど……」


 「私の顔を見なくても、別に何も無いわよ? よく言われるけど、夕闇族は元々樹人族だもの。ただ、古い時代に分かれて荒地に行き、彼らは太陽の神を崇めるようになっただけ。私達は昔と変わらず木の神を崇めてるだけよ」


 「まあ、知ってるけど、樹人族の中にはウルセー奴が居るからな。内心までは分からないだろ? だからセティアンも気を使ったのさ」


 「本当に何も無いんだけどね。もう別の、何の関わりも無い種族だし。それは横に置くとして、じゃあ西のカムラ帝国は?」


 「あそこは裏で暗躍してそうだよねー。国内で暗殺とか普通にあるし。あそこの国は上層部がギスギスし過ぎなんだよ、本当」


 「でも代わりに腐った貴族は簡単に潰れる」


 「そうなんだよなー。あそこ上層部と平民はキッチリ分かれてるからなぁ。貴族の矜持だか何だか知らないが、何故か平民には権力争いのとばっちりを受けさせないんだよ。本当に変わった国だと思う」



 女性4人の姦しい夜は更けていく……。


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