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0014・女性探索者チーム




 地上へ出てきたミクは、ダンジョンから離れて宿へと戻っていく。昨日は泊まっていないので、今日は泊まれるか分からないものの、とりあえずいつもの宿へ。


 宿の前で【清潔】を使って汚れを落としていると、後ろから声を掛けられた。



 「何だよ、お前こんなところで? 汚れを落とすなら、もうちょっと離れた所でやりな」



 ミクにそう言ってきたのは、褐色肌に赤髪の虎獣人だった。頭部に虎の模様の耳が生えており、その下に人間と同じような耳があり、尻尾はなく、こちらを睨んでいた。


 獣人で頭部に耳があるものは多いが、あれは音を聞く器官ではないらしく、空気の流れなどを感じる器官だという。つまり空気の流れから発生する気配には、敏感に反応する部位となっている。



 「ごめんなさい。ちょっと疲れてて、この辺で良いかと思って使った」


 「しょうがない奴だ。ランクも低そうだし、何処を攻略してきたのか知らないけど、汚いことはするんじゃないよ」


 「そこまででいいんじゃない、悪気は無かったみたいだし。いちいち五月蝿いと嫌われるよ?」



 後ろにもう一人居たらしいが、その人物は耳しか見えていない。とはいえ耳さえ見えていれば種族は分かる。縦に長く伸びた白い耳、間違いなく兎獣人だ。


 どうやら魔法系らしく、剣帯からスクロールなどをブラ下げており、武器と言えば短めのショートソードぐらいだ。元々兎獣人は背が低い者が多いので仕方ないのであろうが。



 「ん? ファニス、ルッテ。宿に入らないの?」


 「まだ入ってなかった? 宿の玄関で何してる?」



 新たに後ろから2人来たが、どうやら虎獣人と兎獣人の知り合いらしい。見た目で分かるが、一人は樹人族であり、もう一人は巨人族だ。どちらも女性なので、女性だけでチームを組んでいるのだろう。



 「ウェルドーザとセティアンか。こいつが宿の玄関で【清潔】なんぞ使ってたんで注意してただけさ。別にそれ以外してないよ」


 「確かに不注意だけど、そこまで文句を言う事でもないよ。臭いオスどもに比べたらマシだもん。すんすん……ていうか、装備品の臭い以外しないね?」


 「ルッテ、止めなさい。貴女のやってる事こそ、嫌われる元でしょうに」


 「うん。他人の臭いを嗅いじゃダメ」


 「アタシによく文句が言えたな、ルッテ? お前の方が問題じゃないか」


 「いやー……ははははは……」


 「えっと、私もう行っていい?」


 「あ、ああ。アタシ達も入るから行ってくれ」



 ミクは宿の方を向き入り口を開けて入っていく。カウンターに居た少年に一人部屋が空いているか尋ねると、1部屋だけ開いているようだった。なので大銅貨3枚を渡して1泊する。


 今の時間は昼に近い為、昼食を食べに食堂へと移動。大銅貨1枚を払って大麦粥を注文する。座ってゆっくり息を吐くと、兎獣人ことルッテが話し掛けてきた。



 「ねえねえ、どのエリアへ行って来たの? 探索者ランクは?」


 「ルッテ、他人にズカズカ聞くものじゃないわよ。ごめんなさいね、この子こういうところがあるのよ」


 「別に構いませんよ。私の名前はミクで、行ってたのは第3エリアの森ダンジョン。泊り込みでクリアしてきたところ。上手くいって良かった」


 「上手く? 何かあったのかい?」


 「ボス部屋前に10人ほどが座ってて、2人寝てて頭に赤い布を巻いていた。ボスを突破したら帰れるからと頼まれてボス部屋に入ったら、ケガなんてしてなくて一斉に襲い掛かってきた」


 「クソッタレどもかい! でもアンタが無事って事は、もしかして……」


 「ボスの攻撃を押し付けて逃げ回ってた。こっちは1人だけど向こうは12人も居るから、盾にすれば避ける事も出来る」


 「あー、成る程ね。それでも凄いけど、やってやれなくもないわね」


 「それで玄関前で疲れてたんだ。とにかくボス部屋には仲間だけで行かなくち………え? 1人って事は、もしかしソロ?」


 「そう。別に組む必要ないし、無理そうなら稼げるところで稼げばいい。そう思ってダンジョンに行ってるけど、今のところは進めてる。でもこれ以上は難しいかもしれない」


 「そりゃそうだろ。30階層以降、つまり第4エリアである平原ダンジョンは簡単じゃない。アタシ達でさえ第4エリアで止まってるんだ。道中は何とかなってもボスが怖いからな」


 「ツインヘッドフレイム……しかも5頭だもんね。頭が2つあり、炎のブレスを吐いてくる巨大で真っ赤な狼。ボス部屋は生きるか死ぬかしかないし、流石の私達も無理」


 「第4エリアなら減るけど、それでも不良探索者や迷賊の連中は居やがるからなー。あいつらを警戒しなくていいなら、いけるかもしれないんだが……」


 「ごちそうさま。私は部屋に行って眠るよ」


 「ああ! クタクタだろうから、ゆっくりしな!」



 大麦粥を食べ終わったミクは、カウンターの少年から鍵を受け取り、部屋へ入って装備を外し、下着姿になったらベッドに入る。目を瞑って分体との関わりを最低限にしたら、本体で遊ぶのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 本体はまず男達が持っていたお金を数えていく。小銅貨が6枚、中銅貨が4枚、大銅貨が54枚、小銀貨が11枚、中銀貨が26枚。珍しく中銀貨ばかりを持っている連中だった。


 その後、ミクは男達の武器を潰し、新たな武器を作っていく。もっと取り回しがいい武器が必要だ。そこでミクが考えたのが、盾とウォーハンマーにスティレットだ。


 盾はカイトシールドで、トレントの木に鉄を被覆する形で作り、ウォーハンマーは総鉄製。スティレットは長めの40センチ。代わりに太くして防御にも使えるようにする。それが2本だ。


 男達の武器と棒を溶かし、骨で作った型に流し込む。槌頭はフック状と円錐状にしてあり、柄は非常に太くした。持ち手も太く巨人族用と見紛う程の威容である。


 トレントの木の一枚板を削りカイトシールドの形へ。そして前面に貼る鉄の型を作り、そこへ溶けた鉄を流し込む。冷えて固まったら取り出し。木製の「コ」の形をした部品で嵌め込んで固定する。


 最後に作っておいた取っ手に革紐を結べば完成だ。これは背負ったり担いだりする為の物になる。例えば左手を空けたい場合に、体の前に持って来て首の後ろで縛ると、手を放しての持ち運びが出来る。


 片手がウォーハンマーだから難しいが、そういう場合にも対応できるという事だ。


 スティレットは突き刺す専用の短剣で、剣身が円錐状になっている物だ。アイスピックを想像すると分かりやすい。後は男達の革鎧を流用して新しい剣帯を作り、完成したら分体を起こす。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 起きた分体は準備を整えて宿を出発。南東区画に行き、路地をウロウロする。他人の目が外れたらカイトシールドを出し、ウォーハンマーを出して、剣帯を交換する。


 後は何食わぬ顔で宿へと戻れば、武器を買い換えてきたように見えるだろう。この辺りからは盾を持たないと言い訳が難しそうなので作って持ったのだ。魔物が強力な攻撃をしてくる可能性が高い。


 何よりボスがブレスを吐いてくるのでは、どうやって勝ったんだと疑われてしまう。なので盾を持つのは必要な事となる。後は人外パワーを活かせる武器。これは外せない。


 新しい武具になり気分の良いミクは、時間も夕方なので宿の食堂へ。大銅貨1枚で大麦粥を注文したら、ちょうど隣が虎獣人ことファニスのチームだった。



 「あれ? お昼以来だけど、装備変えたの?」


 「それなりにお金を稼げたから、盾とハンマーをね。そろそろ盾が無いと厳しかったから、明日からは本格的にお金稼ぎかな?」



 内心面倒臭いと思いながらも、ミクは会話をしていく。


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