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0161・子爵領の町




 朝日が出てきた時間、アレッサが起きたので挨拶をするミク。そのミクを見ながらボーッとしつつも挨拶を返すアレッサ。すぐに頭は覚醒し、昨夜の事を聞いてきた。



 「昨夜はどうだったの? 本当に侵入してきた? それとも後ろをついてきただけで終わっちゃった?」


 「当然のように侵入してきたよ。それも宿の従業員2人がグルだったね」


 「宿の従業員って……ここ犯罪者が経営してる宿だったの? それとも闇ギルドか裏組織が経営してる?」


 「違う、違う。ここの従業員に闇ギルドから入り込んだ奴が居て、不良探索者とグルになって目をつけた客を襲ってたの。ま、私が全部喰ってきたけどね。カムラ帝国に本部を置く闇ギルドだったよ」


 「ふーん……それだけ? ミクなら様々な繋がりから大量に喰ってる気がするんだけど。初めて来る所なんだし、領都だから腐ってる奴も多いでしょ?」


 「だねー。闇ギルドの中に辺境伯家に入り込んでる奴が居たから喰ったら、他の闇ギルドや裏組織から入り込んだのも居て、そいつらも根こそぎ喰ってきたよ。ついでに根こそぎ金品も手に入れてきた」


 「それって窃盗にならない? 神様に見つかったら完全にアウトじゃない」


 「いや、大丈夫だよ? 関係の無い人から盗ったら窃盗や強盗だけど、奴等は犯罪者だからね。潰すついでに迷惑料とか慰謝料を貰っただけだよ。前にも盗賊団から強奪したけど、何も言われてないしね」


 「まあ、神様に怒られないなら良いけどさ。それで終わり? ならそろそろ朝食に行こう。早めに終わらせて大通りに行かないとマズい気がする」


 「確かにそうだね。待たせると五月蝿そう」



 アレッサの言葉で宿の部屋を出ると、大通りまで進んで適当な店に入る。大銅貨6枚を払って食事をし、その後に大通りで待っていると、やっと王女が辺境伯の屋敷を出てきた。


 ミクは生命力で居場所を感知しているので、王女やオルティマにイヴィエルテが屋敷にとどまっていたのは知っていた。おそらくアレやコレやと話をされ、聞かされていたのだろう。


 近くに来たイヴィエルテに声を掛け、ミクとアレッサもついていく。王女が居るのですんなりと手続きは終わり、さっさと町の外へと出る一行。


 領都ラーグを出て少し経ってから話を聞くと、何故遅かったのか話してくれた。



 「実は姫様が貴族家の屋敷に泊まるのは、安全以外にも要望を聞くという公務もあるからなのだ。地方の意見はなかなか中央に届かないが、王族の方が来られた際はチャンスだからな。多くの貴族家は中央に伝えたい要望を言う」


 「まあ、当然でしょうね。いつもなら通りにくい言葉が通るチャンスなんだもの。なるべく多くの要望を伝えたいでしょう。でもそれって行きにも出来た事なんじゃないの?」


 「普通は行きにはしない。王都に帰る時までに要望を纏めておき、帰る際に書類を渡したり口頭で伝えたりする。口頭なのは基本的に補足だな。殆どは文書に書いてある」


 「なら何であんなに遅かったの? どう考えてもギリギリまで聞かされてたわよね?」


 「まあ、そうなのだが……。オルティマ殿が居るからアレだが、辺境伯領は王都から遠い。その分だけ伝える要望も多いうえ、更に国防の問題もある。文書に書けない事もあるのだ。文書に残るとマズい、もしくは誰かに見られると面倒になる要望だな」


 「???」


 「たぶん何処かの貴族家の御用商人がよく通るとか、何処かの国の者がよく来ているとか、あるいは国防の為の予算くれってトコじゃない? 辺境って色々と集まる所だからさ」


 「そう……なのだが、よく知ってるな」


 「まあ、色々とねー」


 「へー、国内の連中の監視の意味もあるって訳かー。その商人が何処の商人か知ってれば、変な抜け荷で儲けたりしてるのも分かるって事ね。御禁制の物とか扱ってたら……」


 「場合によれば首が飛ぶか、お家取り潰しね。危険な薬から国が専売の物まで、幅広いからねー、御禁制と言っても。例えば塩なんかは何処の国も専売よ?」


 「それは知ってる。健康に直結するからね、安くても高くても駄目だから統制するんでしょ?」


 「そうそう」



 見た目の年齢はミクの方が上なのだが、年下である筈のアレッサが妙に物知りなのが不思議なイヴィエルテ。とはいえ、そういう事もあるのだろうと、意識から放り投げるのであった。


 途中村などで休憩しつつ進んで行き、今日の宿をとるベレフク町まで辿り着く。ここは子爵家の領地らしいが、あまり発展はしていないそうだ。


 周りは段々と荒地になってきており、土地が良くない事が簡単に分かる。それでも商王国の名に相応しく、道路はしっかりと作られていて馬車が通りやすい。


 商売に力を入れざるを得ない。そう考えると、この立派な道も別の見え方になるから不思議なものである。そんな事を考えつつも、王女一行と分かれようと思ったミク達は止められた。



 「領都ラーグでは辺境伯の屋敷に泊まる必要がありましたが、ここは子爵の領都ではありませんので、一塊になっておきたいのです。そもそも私がお願いしたのは護衛依頼ですし」


 「それは良いんだけど、そこまで守るのは騎士の担当じゃないの? 流石に探索者を近づけるのは良くないと思うよ?」


 「そこは問題ありません、そもそも部屋が違いますので。しかし、それよりも護衛が近くに居る事の方が重要なのです。辺境伯家の領地では大丈夫ですが、ここからは……」


 「……第二王子と絡んでいる可能性がある?」


 「はい。残念ながら、誰と誰が繋がっているかまでは分かりません。なので、姫様の近くに出来得る限り居ていただきたいのです」


 「まあ、こちらとしては、そっちが許可を出すなら問題ないよ。それじゃあ、宿に行こうか」



 そうミクが言うと、そのまま馬車も馬も進んで行く。そもそもミク達は最初から遠慮しているので、騎士達にも妙な勘繰られ方などはしていない。


 これが無理についていこうとしていたら騎士達も怪しんだであろうが、ミクはむしろ王女から離れようとしていた。これはこれで護衛としてどうなんだと思うが、ミクの言った通り、普通は王女の近くに探索者など配置しない。


 なので、騎士達からすれば”分かっている”探索者なのだ、ミクとアレッサは。ちなみにミクとアレッサからすると全く別の理由からである。アレッサは「面倒臭い」、ミクは「肉が食べたい」というのが本音だ。


 ミクの意見はアレ過ぎるが、アレッサの意見も大概であろう。一国の姫に対して「面倒臭い」という感情しか持っていないのだ。とんでもなく不敬だが、元ヴァンパイア・ロードと考えると特に変な事ではない。


 500年生きた元ヴァンパイ・ロード、そして12年生きた農村の少女。どちらもが「面倒臭い」と思っている事を、実はアレッサ自身が理解していないのだが、そこは言っても仕方がないだろう。


 宿についた一行は、馬車と馬を宿の者に預けて中へと入る。宿の部屋を確保した後、食堂に行き夕食を注文。相変わらずの大麦粥なので何とも言えない顔をされたが、王女一行は文句までは言わなかった。


 やはり病気の事を聞かされると、粗食で病気を防ごうという気持ちも分からなくはないからであろう。王女やメイドに騎士達は周囲の目があるので注文できないが、ミクとアレッサは探索者である。何の問題も無い。


 流石に探索者と分かる装備をしている者に、色々と言う者は多くない。自由民であるし、彼らは基本的に体裁より実利をとる。つまり貴族とは真反対の生き方なのだ。


 それでも王族相手に意見を曲げないのは凄い事なのだが、ミクとアレッサはその辺りを分かっていない。


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