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0158・謎の石板




 吹き飛ばされ蹴られ、頭が弾け飛び、輪切りにされる赤いゴブリン達。ゴブリンよりは若干能力が高いものの、それよりは組織だって動くと言う厄介さがある。人間種が魔物に対抗できるのも、連携を駆使して戦うからだ。


 一人より二人、三人より四人。そうやって数が増える毎に力を増していく。もちろん上手く連携しなければ意味が無いものの、単純に数が多い方が、そして連携している方が有利なのだ。普通は。


 ところが赤いゴブリンの集落では、数が少ない方が数が多い方を蹂躙している。これが現実だ。


 カイトシールドで弾き飛ばされ、ウォーハンマーで頭を潰される。あるいはウォーアックスで吹き飛ばされて他のゴブリンに激突、または水平に近い角度で胴体を輪切りにされていく。


 其処彼処そこかしこでそんな光景が繰り広げられており、怖ろしい速さで赤いゴブリンの数が減っていく。当初は<王者の風格(笑)>で見ていたゴブリンのボスも、呆けた顔でその光景を見ていた。


 仲間を助けるでもなく、唯々アホの子のように口をあんぐりと開けて、呆けた顔で見ている事しかしない。そこには王者の風格どころか、既に集落のボスの風格すら感じない。これでは独活うどの大木である。


 突然「ハッ」とした顔になり、今の自分の状況に気が付いたゴブリンのボス。自分の置かれた状況と、何もしていなかった自分に腹が立ったのだろう。プルプルと震えながら拳を握り、そして……。



 「グラァァァァァベグッ!?」



 大きな声を上げ、自らを鼓舞すると共に仲間達をも鼓舞しようとしたのだろう。しかしそれは怪物にとって五月蝿いだけでしかない。だからこそ心臓に向かってウォーハンマーが飛んできたのだ。


 その投擲でウォーハンマーの円錐部分が突き刺さり、一撃で心臓を破壊。ボスは即死し、そのまま後ろにふっ飛んで動かなくなった。


 結局ボスに出来た事は大きな声をちょっと上げただけであり、ゴブリンの集落が壊滅するまでの時間を延ばす事すら叶わず、その少し後で皆殺しになり全滅。戦闘は終了となった。



 「思っている以上に呆気なかったね。赤いゴブリンは多少だけど緑よりは身体能力が高いみたい。でも結局はそれだけだったし、ボスなんて何もせずに口を開けてただけだよ? やる気も無いなんて駄目過ぎる」


 「まあ、わたしもチラリと見たけど、何もしないというより呆然としてただけだね。どのみち腕を組んで偉そうにしていたぐらいで、何も出来ないヤツに変わりはなかったけど」


 「何もしない、出来ないヤツに変わりないし、それがボスって話にもならないよ。ある意味では、人間種より人間種らしい反応だったけどさ」


 「それは確かにそうね。呆然として呆けたように口を開いたまま、そして気を取り直しこのままじゃマズいと判断。だからこそ大声を上げて鼓舞しようとしたら、ウォーハンマーが飛んできて即死」


 「投げられたので死ぬって、本当に弱いよね。小さい奴等だって直撃受けて死んでるのに、ボスは投げたやつがぶつかって死亡とか、情けないと思わないのかな? ま、当たってすぐに死んでるんだけどさ」


 「本当にねえ。結局この集落はゴブリンが大量に居ただけ? 簡素な家はあるから調べて行くけどさ、良い物は無さそうだよね。あったら使ってただろうし」


 「だろうねえ。木の弓矢に骨のナイフとかだったし、ボスに至っては何も持ってなかった。真面目に戦う気があるのか、本当に疑問なヤツだったよ」



 そんな事を言いながら、レティーに適当な血抜きをさせつつ、ミク達は集落の中を調べる。


 細い木の棒を幾つも立てて格子状にしていき、其処に泥を塗って固めたような壁。壁同士の一番上に細い木を何本も乗せてあり、その上から乾燥した茎の束を乗せてある。


 茎の束は藁束みたいな物で、簡易的な草の屋根のような物だ。意外と言ったら悪いかもしれないが、普通に家として出来ており、馬鹿にするような物ではない。本当にゴブリンが作ったのか首を傾げるアレッサ。


 その家の中には色々な物が散乱しており、食べかけの肉や腐った何かが散らばっていて非常に不衛生。臭いも悪く入る気にならないものであった。慌てて出てくるアレッサだが、ミクは気にしていない。


 色々な家の中を探しつつ、終わった家を【火弾】で燃やしていく。理由はまたゴブリンが出てきた際に使わせない為と、こういった家も復活するのかを調べる為だ。調べた家はどんどん燃やしていき、最後に大きな家が残った。


 簡単に分かるが、これがボスの家だったのだろう。中に入り色々と調べていると、ふと気になる場所を見つけた。奥の部分だけ微妙に土の色が違うのだ。何かを掘って埋めたような跡なので、ミクは掘り返してみる。


 すると土の中から現れたのは、魔力を微妙に感じる石板だった。何も書かれていない唯の石の板であり、奇妙に思ったミクは魔力を流してみる。……しかし何の変化も無かった。


 何故こんな物を隠していたのか分からず首を傾げるミク。仕方なく外に出てから家を燃やし、とりあえずアレッサとレティーに見せる事にした。



 「つまり掘り返したっぽい跡があったから調べたら、地面の下から石板が出てきたと。大きさは掌よりちょっと大きいくらいで、何だか妙に軽いわね? 普通の石より軽い気がするけど、石板にしか見えないし……はい」


 『たしかにそうで!? ……なんですか、コレは!?』



 レティーが触れていると、レティーが【念送】で送っている言葉と同じ文字が石板に現れる。よくよく調べてみると、極僅かにレティーから魔力が流れているのをミクは確認した。



 『ですが、私は魔力を流したりしていません。……という事は、この石板は自動的に魔力を吸っているのでしょうか? 会話をする為に?』


 「じゃあ、あのゴブリンは文字が出たのを見て、お宝だと思って隠した? ……ゴブリンじゃ意味は分からないだろうし、何だかあり得そうね。それにしても、会話できない相手と会話できるって凄いわねえ」


 「レティーには必要ないけど、レティーの能力とか知られたくない場合には使えそうだね。文字として出れば会話できても不思議じゃないし」


 「確かに。意外と使えそうだけど、有用すぎて狙われたり? っていうか、ミクならむしろ望むところね。単に怪物の腹の中に納まるだけか」


 「まあねえ。とりあえずゴブリンの集落にはもう何も無いし、明日の事もあるから早めに帰ろうか」


 「さんせ~い!」



 既に第6エリアも4階であり、攻略としては十分に進んでいる。本来ならばもっと苦労して進む筈が、怪物とヴァンパイアモドキには異常な体力がある。なので普通の探索者に比べて、移動範囲が圧倒的に広い。


 更には詳細と簡易な地図を描きながらなので、尋常ではない速度で攻略をしていく。明日からは進まないが、これは怪物不在の影響なので仕方がない事だ。


 ダンジョンの外に出た2人は<妖精の洞>へと移動し、部屋で少し仮眠を取る。まだ夕方には早かったので時間を潰す為であり、ミクは本体空間での暇潰しを行っている。今は木材が無いので樽が作れないのだ。


 そのまま夕方まで暇を潰したら、アレッサを起こして食堂へ。大銅貨6枚を渡して夕食を頼み、食事を終えるとすぐに部屋へと戻った。早かった所為か、3人とも居なかったのだ。


 アレッサは部屋に帰ってくると、適当にアイテムバッグの中身を整理しつつ、眠たくなったのかベッドに寝転んで寝始めた。


 夜になったらピーバードの姿になって飛んでいき、第3エリアを周回。トレント材を集めていく。周回をしながらも樽を作ってハチミツを入れていくが、結構な量を神々が持って行ってしまった。


 持っていくなら自分で樽を作ればいいのに。そう思いつつも口には出さないミク。夜明け近くまで周回し続けた御蔭で、全てのハチミツを樽に入れる事ができ、その御蔭で樽作成と詰め替えの苦行から解放されたようだ。


 宿に戻ってベッドの上に寝転ぶと、本体も何もせずボーッとしている。どうやら本当にお疲れらしい。


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