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0157・赤いゴブリンの集落




 探索者ギルドに着いた一行は、中に入り受付嬢の前に行く。ミク達だと分かった時点で、たむろしていた全員が目線を外した。当然、関わりたくないからである。



 「すみません、依頼をしたいのですが」


 「ご依頼ですね、少々お待ち下さい」



 受付嬢は裏へ用紙を取りに行き、そして戻ってきた。いわゆる依頼票と呼ばれる物で、最初から線などが書かれている物になる。見本があり、その見本のように書けば依頼票の完成だ。


 上から年月日、依頼したギルド名、依頼内容、依頼者の名前、請けた探索者の名前となっている。探索者の名前は、チームならリーダーの名前だけでいいので、今回はミクの名前が書かれた。



 「では、これで宜しいですね? ……ミクさん、護衛依頼ですが請けられるのですか?」


 「知り合いなのとジャンダルコに行ってみたいし、たまには良いかと思ってね。流石にいわく付きの依頼じゃないのは分かってるから、その辺りは大丈夫だよ」


 「そうですか、それなら……ギルドマスター、いったいどうしました?」


 「おう。ちょうど声が聞こえてきたんで、下りてきたんだよ。ミク、お前さんフィグレイオで牢に入れられてたんだってな? 向こうじゃ脱獄した事になっとるぞ」


 「脱獄したから間違ってはないけどね。それで向こうは何て言ってきたの? こっちを犯人扱いしてきた?」


 「いや、それはない。向こうではスヴェストラ将軍が近衛に暗殺されたのは周知の事実だ。そしてお前さんはスヴェストラ将軍に雇われてた。どう考えても、お前さんとスヴェストラ将軍を切り離す為に牢に入れたんだろう事は想像がつく」


 「ま、それが事実だろうと私も思ってるよ。私が襲撃されたにも関わらず、何故か牢に入れられたのは私だからね。普通は意味が分からないよ。とはいえ私が捕まった日にスヴェストラ将軍は暗殺された、それを合わせて考えると……」


 「十中八九どころか100パーセント引き離す為だな。スヴェストラ将軍を暗殺するのに邪魔だったから引き離した、それ以外には考えられん。ついでにミクはフィグレイオの王都近くのダンジョンで、最奥のワイバーンを倒している。実力者だと警戒された訳だ」


 「そうだろうね。でも、それがどうかした?」


 「お前さんの嫌疑は晴れたというか、そもそも襲撃された側なんだから何の罪もねえ。探索者が訳の分からん事で捕まったんだ、脱走というか逃げるのは普通のこった。何されるか分からねえんだからな」


 「まあ、そうね。特に女性は何をされるか分からないもの、逃げるのは当たり前の事よ。逃げるなと言うのは手篭めにされろと言っているのと変わらないわ。ましてや襲撃された側なうえ、何の犯罪も犯してないのだしね」


 「そうだ。そこは無罪で終わりなんだが、向こうのギルドがミクを寄越してくれと言ってきやがった。理由はワイバーンを獲ってこれるのがミクだけだからだ。まあ、こっちからは「ふざけんな」って返しといたがな」


 「我々にとっても、ミクさんは第6エリアを攻略中の方ですからね。フィグレイオになんて行かせる筈がありません。護衛依頼もどうかと思っているぐらいなんですし」


 「は? 護衛依頼? ……まあ、お前さんが何の依頼を請けるかは自由だが、何処まで護衛するんだ?」


 「ジャンダルコの王都ブランまでだね。向こうには<水のダンジョン>っていうのがあるらしいから、それを攻略したら帰ってくる感じかな?」


 「成る程な。それまで第6エリアの攻略は停滞しそうか? まあ、無理に攻略するぐらいなら停滞した方がマシなんだが……」


 「第6エリアは中心に巨大な蜂の巣があるんだけど、そこに近付かなきゃマシじゃないかい? 森の中は上下から攻撃されて面倒臭いし、砂浜が一番安全だけど……」


 「砂浜ではマーマンとビッグクラブとブルータートルくらいね。後、海には美味しい魚が居るわ。とはいえ砂浜には今のところ旨味が無いのよ」


 「高く売れる素材が無いから、<竜の牙>も<鮮烈の色>も第5エリアに戻るんじゃない? エクスダート鋼の材料の方が儲かるでしょうし」


 「そうか。ま、怪我しねえなら十分だ。第6エリアに行けるのは凄いが、かと言って今のところはエクスダート鋼の材料の方が大事だからな。国からも未だ言われ続けてる素材でもある」


 「あ、それで思い出したけど渡しておく。護衛依頼でゴールダームを離れるから、私が持ってると渡せないしね」



 ミクはそう言って、アイテムバッグの中に入れていた謎金属の剣を取り出した。一瞬ラーディオンは渋い顔をしたが、それでも受け取る。流石に上の者に言われた際、持っていないでは話にならないからだろう、


 その後は魔剣の説明も終え、探索者ギルドを出てダンジョンへと向かう。王女達は王城へと戻るらしいので別れ、ミクとアレッサはは第6エリアへと行く。カルティクは第3エリアへ、シャルは第5エリアへと行くようだ。


 ミクとアレッサは一気に走って行き、3階に到着すると次の階への階段を探す。ここの蜂の巣は喰らったが、階段はまだ発見していない。1階は魔法陣から東であり、2階は階段の東だった。


 3階は真っ直ぐ北に進むと蜂の巣があったので、階層の中心、その南側から始まった事が分かる。1階と2階が東だったからと言って、常に東が正解とは限っていない。


 しかし第5エリアも前半は同じパターンの繰り返しであった。ならば第6エリアもその可能性がある。そう思って進むと、階段の東に階段を発見。やはり第6エリアも同じパターンが続くらしい。


 2人は階段を下って4階へ。再び真っ直ぐに進むと、今度は階層の中心に蜂の巣は無く、代わりにゴブリンらしき者達の住居が大量にある。ここに来て内容が変わるとは思っておらず、驚く2人。



 「何か大量にゴブリンっぽいのが居るけど、肌が赤色なんだね? レッドゴブリンとでも言えばいいのかな? それと、何だかオーガよりも少し小さいだけのゴブリンまで居るし」


 「この集落のボスか何かだろうとは思うけど、肌が赤いゴブリンというのがちょっと気になるかな? 特にどうこうは無いと思うんだけど、戦ってみないと強さは分からないし」


 「じゃ、行っちゃう? ……って思ってたら、向こうがこっちに気付いたみたい。そして悪意満載っていうね」


 「まあ、ゴブリンだからね。あんなものなんじゃないの?」


 「そりゃゴブリンだし、ってウゲッ!? あいつら弓矢持ってるじゃない!? もしかして蛇の毒とか塗ってんじゃないでしょうね!」



 ゴブリン達は多少近付いてくると、一斉に矢を撃ち始めた。ミクはカイトシールドで防ぎ、アレッサはその後ろに回って防ぐ。それなりの数が飛んできたものの、肉塊には1本も当たらないし、後ろにも通さない。


 しばらくすると矢は治まったが、今度は骨の短剣のような物を持ったゴブリンが攻めてきた。



 「ちょっと待って、あいつら歩幅とか合わせてるんだけど!? 弓矢の事を考えても、組織立って戦ってるよねえ!!」



 どうやら赤いゴブリン達は一筋縄ではいかないらしい。多数で攻められると不利になる為、ミクはカイトシールドを構えて突撃する。


 ゴブリンの先頭をシールドバッシュで弾き飛ばし、右手のウォーハンマーで吹き飛ばす。出来るだけ飛ばして、他のゴブリンに叩きつける形で戦闘を優位に進める。


 アレッサも槌頭の方を使い、ゴブリンを吹き飛ばしてゴブリンに当てるという方法で戦っている。魔法を使えば簡単に頭数は減らせるのだが、それでは肉塊が楽しくない。


 こいつら赤いゴブリンとの戦いも、怪物にとってはそんなものでしかない。それとは気付かず、王者の風格(笑)で待つ大きなゴブリン。


 それをチラリと見たアレッサは、呆れながらも戦闘を熟すのだった。


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