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0013・森ダンジョン・ボス戦




 ダンジョンの7階を進んで行く。カルティクが後ろをついてくるので迂闊な事はできない。とはいえ、この状況をミクは楽しんでいた。初めての出来事でもあり、制限を受けつつ相手をコントロールする。


 それはそれで面白く、上手くいくも、いかないも含めて、ミクにとっては新鮮な出来事であった。そもそもこの星に下ろされるまで、神々としか関わりが無かったのだから当然ではある。


 後ろを見ていないにも関わらず見ているミクは、どの行動でカルティクがどういった反応をするのか、詳細に観察し続けていく。そしてそれは10階のボス部屋前まで続くのだが、監視者であるカルティクだけが気付けないのであった。


 10階のボス部屋前、そこには10人の男達が座って話をしていた。2人の男性が寝かされており、どうやら頭から血を流しているらしく、赤く染まった布を巻いている。


 その男達は10階にやってきたミクに対し、神妙な顔をしながら話し掛けてきた。



 「すまない。迷惑だとは思うが、一緒にボスを攻略してほしい。怪我人が居るんだが、引き返す事も出来ずここまで進むしかなかったんだ。ボスを倒せば脱出できるし、地上に戻ればお礼もする。なのでこの通りだ、頼む!!」



 男は深く頭を下げて頼んできたので、ミクは渋々といった体で許可を出す。カルティクは階段の上辺りでミクを見ており、この会話には参加していない。実際には気配も隠しているので、何らかのスキル持ちなのだろう。


 ミクはスキルが無くても問題なくカルティクを把握しているが、普通はそんなに簡単な事ではない。これは肉塊がハイスペック過ぎるから簡単に出来る事なのであり、普通の人間種には難しい事である。


 それはともかく、ミクは男達と一緒にボス部屋へと入ったが、カルティクはついて来なかった。てっきりついてくると思っていたので、ミクとしては意外な結果である。


 森エリアの守護者、それは巨大な木の魔物であった。その高さは10メートルを超え、幹の直径は3メートルほどもある。その名はトレントであり、木の魔物だ。


 この魔物は木の葉を飛ばしてきたり、【風魔法】を使ってきたり、尖った枝を射出してきたりする。更には幹に人の顔みたいなものがあり、そこから奇怪な音を出して平衡感覚を狂わせてもくる。


 かなり強力な魔物であり、そう簡単には倒せない。そんなボスを前にして、先頭に立っているのはミクである。


 もちろん、こうやって隙を晒せば攻撃してくれるのではないかという期待からだが、その期待が裏切られる事は無かった。



 「ハッハッハッハッハ!! バカな女だぜ、お前らまずはこの女を縛りあげるぞ!!」


 「よっしゃ! オレに任せとけ!! その代わりオレが一番最初だ!!」


 「何だと!? オレが一番最初に決まってるだろうが!!」



 男達は次々に下らない欲望を口走るが、ミクは即座に後ろを向き、掌を向けて骨杭を射出。両足を穿っておいた。


 その後、すぐに両腕を肉塊に変え、男達を本体空間へ転送してしまう。トレントに邪魔される可能性が高く、ボス部屋でゆっくりと味わう訳にはいかなかったからだ。


 ボスは当然倒すものの、せっかくの肉が殺されたリ潰されると業腹なので、拷問と共に味わう為にも転送した。分体はこれからトレントとのボス戦である。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「アァァァァァーーーッ!!!!」


 「ギャァァァァッ!!!」


 「ギィィアァァァァl!!!」


 「ヒギィィィィィィーーーッ!!!!」


 「アガガガガガガ……」


 「ゲギャギィグゥェアーーー!!」



 既に狂ったように言葉を吐く者も居るが、未だに誰も壊れてはいない。地獄の責め苦を与えながら、本体が情報を収集しているのだ。


 宙に浮く肉塊にくっつけられた男達。逃げられない状況で、少しずつ少しずつ貪り食われていく。情報を吐かなければ更に食われていき、一定量を超えても吐かない場合、直接神経に痛みを与えられる。


 当然そんなものに耐えられる人間種などおらず、最後には必ず吐く。そもそも拷問を受けて耐えられる者などいない。たとえ人間が行う拷問からでも逃げるしかないのだ、死という結末をもって。


 それが本当の拷問というものなのだが、肉塊は死なせずに狂わせずに拷問を続ける。これは生き地獄に等しく、絶対に耐えられる者がいない。何故なら脳だけでも生かせるからだ。


 口などは肉塊が作ってやればいいし、擬似神経を作って痛みを与えれば済む。つまり脳さえ残っていれば幾らでも拷問が可能なのだ。


 人外であり肉塊だからこそ出来る事であり、死んで時間が経っていない限り、肉塊からは逃げられない。それほどまでに肉塊から逃げるというのは難しい。


 むしろミクに悟られず、単純に喰われた方が拷問を受けるよりマシである。おどり喰いをされた連中も居たが、アレはまだマシな方なのだ、拷問に比べれば。


 そんな地獄のような拷問を楽しく行っていると、耐えられなかった連中が喋り始めた。



 「オレ達はデゴムトっていう奴隷商の下で攫ってるんだ! ダンジョンで襲ってヤって、その後にデゴムトの所に売りに行く!! そうやって金を稼いでたんだ!!」


 「そうだ! デゴムトは貴族と繋がってるんで、違法な奴隷売買をしても大丈夫な奴なんだよ!! オレ達が悪いんじゃねえ、デゴムトの奴が悪いんだ!!」


 「デゴムトの奴は前に伯爵家のガキと懇意にしてるって言ってた! 喋ったんだからもう許してくれーー!!!」


 『私の空間に居て助かると思っているのか? 後は悲鳴を上げながら私に喰われろ。犯罪者にはお似合いの末路だろう? 素晴らしいと思わないか?』


 「ギャァァァァ!!」


 「グァァァァァ!!!」


 「ウギャーーーー!!!」


 『クククククク……ヒヒヒヒヒ………ハハハハハハ………HyaHaaaaa!!!!』



 本体に食われるという狂宴はまだまだ終わらない。男達は今までの犯罪を地獄の業火で焼かれるが如く責められ続け、狂う事すら許されずにゆっくりと食われていく。


 痛みと苦しみを感じなくなるその時まで、この地獄が終わる事は無いのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、こちらはトレントとの戦いを行う分体なのだが、本体の興奮が伝わっているのか無駄にテンションが高い。無表情であるにも関わらず、口から出る内容が色々とおかしかった。



 「クククククク、美味しい肉を食べるのは堪らないねえ! この世の一番の幸福とはこういう事を言うんだろうさ。今、私は最高の幸せを感じているよ! ウヒヒヒヒヒヒ………♪」



 無表情でありながら感情が爆発したような声が、テンションの高い分体の口からは漏れていた。顔と声がまるで合っていないというのは、一種のホラーである。


 そしてそんな言葉を漏らしつつも、両手で持つ鉄の棒でトレントをブン殴るミク。「ドゴォン!!」という音がする度に、トレントの叫びが響き渡る。



 「GYAAAAA!!!」



 人外パワーでも鉄の棒が耐えられる威力までしか出せない。しかし、それは生半可な威力ではなかった。凄まじい音と共に、トレントが大きく揺れているのだ。つまり、それほどのパワーをトレントは喰らっている。


 しかし、いつまでも終わらない戦いに飽きたのか、ミクは腕を触手にしてトレントの根元に巻き付けると。一気に締め上げていく。



 「GGGGGGGGG……」



 トレントの苦悶の声と「ミシミシ」という音が響き始めると、締め上げた場所が砕けて木片が飛び散った。


 トレントは根元の部分から砕かれ、倒れ落ちると同時に戦闘は終了。壁が観音開きに開く。


 ミクは腕を肉塊にしてトレントの死体を根元から飲み込んでいき、全て本体空間に転送する。木材として良さ気な感じに見えたからだ。


 その後は鼻歌でも歌いそうな上機嫌さで魔法陣に乗り、ダンジョンを脱出。地上へと戻った。


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