0148・地図作りと剣の報告
ハチミツを味わうのは止め、完全には探索できていないものの2階へと下りる事にした2人。さっさと北東まで走り、見つけていた階段を下る。当然だが、再び森の光景と潮の香りがする階層だった。
ミク達は2階のどこの部分に出てきたのかは分からない為、波の音が近い方向をミクの聴覚で探る。すぐに方向は分かったので、階段を下りてきた際の前方を北と仮定し、西へと向かう。
ある程度の距離を早歩きで歩いていくと、砂浜に到着。そこから【身体強化】を使って走り回り、再び四角形の砂浜である事を確認した。
このエリアのパターンはこの形なのだろうか? そんな事を思いつつも、地図に描いた階段の場所へと戻る2人。今度は内陸を調べるのだが、西は行ったので東へと向かう。そしてあっさりと階段が見つかった。
「このエリアはこういう形で決まってるのかな? 何かパターン化してる気がする。それが良いのか悪いのか分からないけど、ここも魔道具があるか調べなきゃいけないし、厄介な事だよ」
「仕方ないわよ。もしかしたらさっきの蜂の巣がまたあるかもしれないけど、それはそれで確認しなきゃ分からないじゃない? 何でもそうだけど、予想だけじゃ判断つかないし」
「まあ、観測するまで確定しないのは当たり前の事なんだけどね。調べるのは面倒臭いけど、それでも確定させる為には調べるしかないし、1階みたいに近くに魔道具があれ分かるしね」
「あれ凄いわよ。普通は目視で探さないと見つからないらしいから、見つけられない事も多いって聞くぐらいだもの。同じ場所を通っても、発見できるチームとそうでないチームに分かれるみたい」
「まあ、見て調べるしかないならそうなんだろうけど、【魔力感知】持ちなら発見できると思うけどね? 私がやってる事だって、魔道具の中の魔力を調べてるだけだし」
「んー………【魔力感知】だと表面の魔力しか調べられないとか? 魔道具の中の魔力まで分からないなら、調べられなくても仕方なくない? もしくは調べられるけど黙ってるのかも」
「そっちの可能性の方が高そうだね。自分が有利な情報なんて明かしたりしないだろうし。……となると、魔道具類が見つかるって珍しい事なんだね」
「それはそうでしょうよ。だからこそ高額で売れるんだし、今も再現するのに躍起になってるんだしね」
「再現……ああ! <魔導強絶機>もそうなのか。あれもダンジョンで見つかった物だとしたら、未だに再現出来ないのも分からなくはない」
「何よ、急に?」
ミクは移動しながらアレッサに<魔導強絶機>の事を話す。すると呆れた様な顔をしつつ、それでも厄介な事を理解する。
「それって魔力が放出できなくなるんだよね? となると魔法が一切使えないって事だから……<ノーライフキング>にも勝てる代物なんじゃないの?」
「魔力が放出できないから魔法は使えないだろうけど、それは周りの者も一緒だよ? 結局【浄化魔法】も使えないから決着はつかない気がする」
「ああ、そっか。流石にあの回復力は【浄化魔法】が無いと勝てない。でも、魔法が使えたら<ノーライフキング>もバンバン使ってくる訳で……なら遠くからは?」
「近付くと魔力が弾き出されるから魔法自体が歪んで不発になるよ。あれは一定の空間の魔力を強制的に排除する魔道具だからね。体の内側の方が近いから放出できないけど、外からだと外の方が近いから、そっちに弾かれるだけ」
「結局、魔法は作用しないって事ね。なら魔法が厄介だけど大した回復力がなく、物理的な強さを持たない奴が相手なら使える道具かー」
「そんなヤツは速攻で叩き潰した方が早いよ?」
「………だよねー」
そんな下らない話をしつつ内陸の中心に向かって調べていると、再び巨大な蜂の巣を発見した。とはいえ魔道具も何も無いので戦わず、時間も時間なので帰る事に。
流石に2つ目の巨大な巣を相手にするほど木材は豊富に無い為、ミクとアレッサは帰る事にしたのだ。誰かさんは「夜に集めておく」と言っていたが、アレッサは聞こえないフリをした。考えても無駄だからだ。
脱出した2人は真っ直ぐ探索者ギルドに行き、受付でラーディオンに面会を頼む。最近多いからか慣れたもので、受付嬢もサッと行ってサッと帰ってきた。
許可が出たので2階に上がり、ドアをノックして許可が出たら中に入る。ラーディオンは何やら書類と格闘していたが、ミクが来ると休憩とばかりに顔を上げた。
「いやー、良いトコに来てくれたぜ。休憩のタイミングが無くて、どうしたもんかと困った事態になってたんだ。やれやれ、少しは休憩せんと集中力が保たん。……それで、何があったんだ?」
「今日、第6エリアの1階で剣を見つけたのよ。1階の中心には巨大な蜂の巣があってさ、その根元の所に置いてあった。魔剣じゃなかったんだけど、それはいい。重要なのは、これが何の金属で出来ているか分からない事」
「………このショートソードが何で出来ているか分から、ん? ………これは何の金属だ?」
「そう。私もその金属を見た事も触った事も無い。それはジュライフ銅でもドリュー鉄でもなく、ウィリウム鋼でもエクスダート鋼でもない。まったく新しい物。そして少なくともエクスダート鋼よりも上」
「なに!? エクスダート鋼よりも上だと!?」
「ミクが振って確かめて驚いてたもんね、4割に耐えられるってさ。ミクの4割って特別製のワイバーン武器と変わらないんだよ? 驚きの強度だと思う」
「そりゃ凄いな。お前さんの4割っつーのがアレだが、それでもあのワイバーン製と同じというのはとんでもねえ。シャレになってねえが、どうやって作るんだ?」
「「さあ?」」
ミク達も分からないから持ち込んだものだ。どのみちワイバーン製の武器がある以上、無理して持っておきたい物でもなし。だからこそ、どうしていいか分からないので持ってきた。それを聞いたラーディオンは理解する。
「成る程、それでなぁ……。こりゃ上に届けるしかねえが、いつになるかは分からん。それまではお前さんが持っといてくれ。見つけたのは2人なんだし、預けとくのが一番安全だ」
「それはそうでしょうね。ミクに預ける以上に安全な場所なんて無いだろうし、どんな事があっても守り通せるでしょ。たとえゴールダームが吹っ飛んでも安全!」
「いや、まあ、そうだけどよ……不吉な事を言うのは止めてくれねえか? それはともかくとして、王城にお伺いして研究所預かりになるだろう。それがいつかは知らんが、そんなに遅くはない筈だ」
「了解。まあ、伝えるだけ伝えたから私は帰るよ。そうそう、巨大な蜂の巣からハチミツが取れたんだけど、何か入れ物ある? ちょっとしたお裾分けだけど」
「おお! そりゃ助かるな。嫁さんも喜ぶ。……えーっと、コイツに頼む」
ラーディオンが出してきたのは大きめのコップだったが、今使っているのとは別の予備であり、私物らしい。ミクはアイテムバッグから樽を取り出し、スプーンでハチミツを入れていく。
「何の匂いもしないハチミツだな? 食べても大丈夫なのか?」
「わたし達が味見したから大丈夫だし、危険ならミクが止めるよ。ただしビックリするほど甘いからね、わたしが甘すぎて吐き出すくらいだし。水と混ぜて薄めないと、とても使えないぐらいに甘いの」
「そんなにか……嫁さんにも気をつけろって言っとかないと駄目だな。一言を忘れた所為で酷い目に遭うのは御免だ」
「ま、何に使うかとかは好きにしてよ。じゃあ、私達はこれで」
「おう。向こうから返事が来るまでは、すまねえが持ったまま居てくれ。誰かに売ったり渡したりは無しでな」
「分かってる」
2人はそれを最後に部屋の外に出た。報告も終わったので、後は宿に帰るだけだ。




