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0145・第6エリアの獲物を解体所へ売却




 アレッサが魔物の凶悪さに若干恐怖を感じているのとは別に、怪物はどこまでも暢気であった。この程度の蛇が落ちてきたところで壊れるような体はしていないし、そもそも奇襲を受ける事も無い。



 「アレッサだって【悪意感知】で何となく分かってたんじゃないの? それとも上までは警戒してなかった?」


 「流石に上は警戒してなかったわよ。まさかこんな大きな蛇が降ってくるなんて、予想できる筈ないでしょ。木があるから確かに警戒するべきだったけど、それでも奇襲が怖すぎる。こんなのが落ちてきたら死ぬでしょ、どう考えても」


 「心配しなくても、すぐに復活するよ? 本体にくっ付ければいいだけだし」


 「それは……そうかもしれないけどさー………事実なんだけど、何か疲れてくるっていうか……もう、いいや」



 アレッサは溜息を吐いた後、気にするのを止めて歩き出す。ミクは毒袋だけを喰らい毒をストックし、後はレティーに血を飲ませて死体は放置していく。次の1匹は売るのと説明のために収納するが、後は毒以外は捨てていく事に。



 『ここの魔物で血が美味しいのは亀だけですね。他は普通か美味しくないかしかありません。そもそも3日は血を飲まずに居られる事を考えると、亀だけで十分です。なので必要の無いものは、わざわざ血抜きしません』



 レティーも栄養の量でグルメっぽくなってきた気がするが、特に問題の無い事なのでミクは了承した。そもそも魚人などは持って帰るものの、恐らく一度だけになるだろうと思っている。


 魚っぽい人間種という言葉からも分かるように、全身が使えそうにないのだ。素材としては大した事が無く、どいつもこいつも骨で出来た三叉の槍を持っているだけである。


 それなりに力は強いがそれだけであり、何かの魔法を使ってくる事も無い。総じて言えば強くもないのに数が多くて面倒臭い。ミクにとっては海辺のゴブリンといったところだ。ゴブリンよりは強いのだが……。



 「ミクにとっては大した違いは無いでしょうね。わたしでさえ強いとは思えないんだから、もっと弱いっていうか、ザコにしか感じないでしょ? だか、おっと!?」


 「まさか地面から強襲してくるとは……ちょっと驚きだけど、これもザコだね。爪がかなり鋭いモグラってところかな。とはいえ小さいから、これが地下から強襲してくるとなると厄介だと思う。私には効かないけど」


 「ミクなら問題無いでしょうけど、普通の探索者だと厄介でしょうね。このモグラの爪を見てよ、ブーツなんて簡単に穴が開くわよ? 地面の下から急に突き刺されたら歩けなくなる可能性が高い、っていうかナイフでしょ、コレ」


 「普通の人間種の足ならブーツの底から貫通しそうだね。こいつも血抜きだけして持って帰ろうか。こういう魔物が居たって見せなきゃいけないし。っと、そろそろお昼が近いみたいだから一旦帰ろうか」


 「了解。お腹へってたし、さっさと帰ろう」



 2人は【身体強化】を使って走り、魔法陣から脱出。出てきてすぐに驚かれたものの、それを無視して探索者ギルドの解体所へ。親方を呼び、その前で第6エリアの魔物をアイテムバッグから出すミク。



 「こいつらが第6エリアの魔物かー。しっかし、誰も越えられなかった先が海だとはなぁ……流石に少々面食らっちまった。マーマンにビッグクラブ、それにブルータートルと……この魚は何だろうな?」


 「さて? 親方が分からないんじゃ、オレ達にゃ分かりません。そもそも海なんて見た事もないですからね。魚なんて川魚の干物しか食った事ありませんよ、しかも美味しくないときてるし」


 「ま、ゴールダームじゃ魚より肉だわな。美味いランサーブルの肉は、たまの御馳走だ。そらぁともかく、このビッグクラブとかいうヤツの殻は初心者向けには使えそうですかね?」


 「案外ブルータートルの方が使えるんじゃないか? こう、甲羅を前掛けみたいにすれば、胴体は十分に守れるだろ。初心者なんだからそれぐらいで良いと思うぜ?」


 「ブルータートルの甲羅は盾に使わないと勿体ないだろ。ちょっと小さめかもしれねえが、この強度だ、十分に防いでくれる。案外、魔法まで防げたりしてな」


 「「「「「………」」」」」


 「バカの所為で試験しなきゃいけなくなっちまったな。これで魔法が防げるなら、戦争ん時の盾が変わっちまうぞ。一番内側に薄くした甲羅を使う事で、魔法は完全に防げるかもしれねえんだ。お前が持って試験な?」


 「うげっ!? 親方ちょっと待ってくださいよ、何でオレが!!」


 「うるっせえ! 余計なこと言った罰だ! おめぇが口にしなきゃ全員無視してたんだよ。誰でも思いつくんだから黙ってりゃいいもんを!」


 「まったくだ! んな事は誰だって考えんだよ! でもいちいち試験が面倒くせえんだから、やりたくねえんだ! 言いだしっぺの、お前がやれ!!」


 「「「「そーだ! そーだ!」」」」


 「うぇぇ……マジかよー……。明日から解体しつつ試験じゃん。オレだけ休憩無いってマジかー……」


 「心配すんない! ワシらだって記録とらにゃならんのだ、誰かの所為でのぉ……!!」


 「は、はは……」



 口にしてしまった職人に対して怒りが向いているが、ミクが口を挟んで止めさせる。内輪の事は後にしてくれと。



 「まあ、そうじゃな、嬢ちゃんには関係の無い話だ。それはともかく、他にもデカイ蛇や小さいモグラ……ブラウンモール、とは違うな? このデカイ蛇はどうだったんだ?」


 「木の上から落ちてくんのよ、コイツ。いきなり「ドスン!!」って。頭に落ちてきたら、それだけで首の骨が折れるぐらいの威力なの! シャレにならなかったんだから!!」


 「そりゃ災難だったなぁ。この大きさと重さが落ちてくんのか………そりゃ本気でシャレになってねえ。首が折れるというのも分かるぜ」


 「ですね。これが落ちてきたとなれば、グレートヘルムでも無駄でしょう。そもそも重さを防げる訳じゃありませんし……」


 「こんな重いのが圧し掛かってくるって、凶悪すぎないか?」


 「シャレになってねえよな。それも木の上からだぜ?」


 「さすが第6エリアだ、おっそろし過ぎるだろうよ。こっちのモグラだってなんだこの爪? 鋭利なナイフみたいな切れ味してるぞ。こんなので地面の下から攻撃されてみろ、足まで貫通しちまう」


 「うむむむ……本気で厄介だのう、第6エリアは。越えた先は更なる地獄でしたと言わんばかりだ。とにかく暫定で金額を出しておく。これ以上は今はどうにもならん。マーマンにビッグクラブ、ブルータートルは良いのだがな」


 「魚と蛇とモグラが不明ですからね。オレ達にとったら全部不明ですけど、海の魔物は親方が知ってるんで助かります」


 「ワシが知っておるのも多少だけだ。おそらくマーマンは使えんだろう、使えても魔石だけだな。後は肥料にするぐらいか。ビッグクラブは殻が使えるのと、ブルータートルは甲羅だな」


 「それぐらいしか使えませんかね。後は調べてみてと、王城に研究資料として渡すぐらいですか? 仮に何かに使えるとしても、その研究が終わるのに何年かかるのやら」


 「研究なんてそんなもんだ。簡単に分かったのなら、相当運が良かったか、最初から知っていたかだ。それしかない」



 解体所で木札を貰ったミクとアレッサは、建物に入り受付嬢に木札を出す。ミクは大銀貨2枚、アレッサは大銀貨4枚と小銀貨2枚だった。


 第6エリアの調査費用のようなものでしかなく、新エリアは儲からない場所となりそうである。これから先に期待するしかないのだろうが、今のところ高く売れそうな魔物は居ない。


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