0144・第6エリアの魔物
亀の魔石で何となく分かったミクは、蟹の魔石と魚人の魔石も綺麗にしてみる。それは予想通りに成功し、3つの魔石はどれも変わらず透き通って綺麗な見た目になった。それを見て驚くアレッサ。
「こうやって質の良い魔石にすれば高く売れるんじゃない? そもそもミクしか出来ないだろうし、こんな事が出来るなんて聞いた事が無いしね。高く売れると思う」
「そうかな? この程度の事なら思いついたヤツも居るだろうし、何かの拍子に綺麗になる事もあると思う。その割にはされていた感じがしないから、何かしら、しない理由があるんじゃないかな」
「でも透き通ってる魔石だと、ワイバーンの魔石と同じような結果が出る可能性が高いんじゃないの? あの【真偽判定】用の紙メチャクチャだったし、聞いた事もなかったから」
「たぶん似たような結果が出るとは思うけど、それでも魔力量も影響してないとは言えないし、難しいところかなぁ……。私に対して【真偽判定】を使っても正しい結果は出ないから、実験は帰ってからだね」
その一言で終わりとなり、それ以降は1階をウロウロする事に。砂浜を歩きつつ魔物を倒していき、蟹の甲殻や亀の甲羅なども本体空間に送る。もちろん血抜きした魔物をアイテムバッグに入れているので、売る事も可能だ。
試しに魚人の肉を海に放り込むと、最初は何も無かった海だが、急に荒れ狂ったように水面が荒れて「バシャバシャ」音が鳴り始める。どうやら海にも何かしらの魔物が居るようだ。
ミクは触手の先を槍のようにして刺して持ち上げる、すると大きな魚が触手の先に刺さっていた。どうやらこの魚が集まって魚人の肉を食っていたらしい。試しに食べてみると、かなり美味しい魚である事が判明した。
「この魚、思ってるより遥かに美味しいね! これはいいや、お土産に持って帰ろう!!」
「ちょ! わたしも、わたしも食べる!!」
ピョンピョン飛び跳ねながらアレッサが言うので、ミクは触手を使って鱗を剥がして切り裂き、木の皿の上に刺身を盛る。当然ながら魚の繊維方向に気をつけて切っているので、食感は良い筈だ。
「むぐむぐむぐむぐ………肉より軽いけど、何か魚の脂って美味しいね。独特の感じがあるけど、このオレンジ色の身が映える感じかな。オレンジフィッシュ……それともオイルフィッシュ?」
「さあ? 解体所の人達が決めるんじゃない? 私達からすれば「美味いヤツ」とか「オレンジ」とかで伝わると思うけど」
「まあ、そうね。この魚は美味しいから売らずにキープかな? 沢山獲れそうだから、売っても問題無さそうだけど」
「問題無いとは思うよ。適当に魚人を殺して肉を使えば良いだけだし、槍で突いた奴を売ろう。触手で突き刺したヤツは、売るとバレるかもしれないからね。あそこの解体師、何だかんだといって優秀だから」
「確かに触手で獲ったヤツはツッコまれるかもね。どうやって獲ったんだって言われたら説明し辛いし、最初から出さないのが一番良いと思う。逆に蟹とかは喜ばれるんじゃない? 結構優秀みたいだし」
「そうだね。蟹の甲殻と、亀の甲羅は思っていたよりは優秀だったよ。亀の甲羅はちょっと小さいかなって感じだから、盾には使えないかな? 腕盾としては使えるだろうけど、それ以上は難しいと思う。削らなきゃいけないし」
「流石にそのままは重いから、軽量化の為に削らなきゃいけないけど、上手く強度を保ったまま削るのって難しいと思う。普通に削る以外の方法があるのか知らないけど」
「それは私も知らない。どのみちワイバーンの装備に比べたら価値は低いから売るしかしないし、自分で使わないなら加工方法はどうでもいいかな」
2人は話しつつもウロウロしながら魔物を倒していき、魚人の肉をエサにして魚を仕留める。ミクが殺して血抜きをしたらアイテムバッグへ。ある程度の数を入れたら先へと進む。
そうやって海岸線を歩いていくものの、階段は見つからないまま砂浜の端に到達。仕方なくミクとアレッサは砂浜を曲がる。
ここの地形は階層の端が砂浜になっているのだと思うが、その砂浜も1キロ以上の幅があり、そして端の方では砂浜が直角に曲がっている。この事から、砂浜は階層の端付近に四角い形で存在している筈だ。
「砂浜が四角い形で存在しているのは、さっきの直角に曲がった砂浜で予想はつくけど、問題は内陸だよね? この階層の外側が砂浜だとして、内側の部分は非常に大きいんだし」
「そうだね。そっちに階段がある可能性は高いけど、それでも砂浜は見て回らないといけないし、ここって予想外に面倒臭いかも。ピーバードで飛んでも分からないかもしれない」
「内陸に隠されてたら、空を飛んでも見つからないかもしれないね。魔物は然して強くもないから良いけど、問題はいつも通りの階段探しかな? 結局これが一番厄介なんだよ」
「ま、仕方ないわよ。誰も急げって言ってくる訳でもないし、地道に探して行きましょう。地図だって描いてるんだからさ。それとも【身体強化】で進む?」
「そうしよっか。本体の地図を描く速度も速いし、一気に走って地図を完成させよう」
ミクとアレッサは魔物を薙ぎ倒しつつ【身体強化】で一気に砂浜を走って回り、地図の外側である砂浜を完成させた。やはり砂浜に階段は無く、内陸の林の何処かにあるようだ。
森ほど木々は密集していないものの、かといって疎らというほど少ない訳ではない。だからこそピーバードで飛んでも階段は見つからないかもしれない。そうミクとアレッサは思ったのである。
とりあえず一旦魔法陣まで戻り、そこから別の場所へと進んでみる事に。ミクであれば方向感覚が惑わされる事もなく進めるので、迷う事は無いだろう。
「ここが入り口の魔法陣。まあ、脱出の魔法陣でもあるけど、今度はどっちに進む?」
「さっきは「ザザー」って音がする方に行って、それが海だった訳なんだけど、今度は反対に行ってみようと思う。どのみちウロウロしないと地図は完成しないしね」
「ま、そだねー。なら早速行こうか」
そう言って2人は内陸の部分へと足を踏み入れていく。少し密集している林レベルなので、第3エリアよりは楽に進めている。進めているのだが、それは魔物にとっても同じだ。
「おっと、ふっ!! ………うん。この蛇の毒、思ってるより強力だ」
「なんで毒って分かってて、舐めるかな!? 効かないのは分かってるけど、心臓に悪い! もうちょっと気をつかってくれない? ミクなら指で触れただけで分かるでしょうに!」
「まあ、そうだけど、食べても問題ないからさ。こう、つい口に運んじゃうよね。それはともかく、こいつの毒はレッドアイスネークより強力だよ。これだけ図体が大きいのにね」
「確かに大きい。ゴブリン……は無理でも、ブラウンボーアぐらいなら飲み込んじゃうね。それぐらいに大きいよ」
体長は8メートル、胴の直径は25センチ。こんな巨大な蛇が上から降ってきたのだ。そこまで高い場所ではなかったが、木の上から襲い掛かってくるというのは恐ろしい。
体重を浴びせられると、骨折ぐらいはするかもしれない重さである。蟹は切り裂き、亀は噛みつき、そして蛇は体重攻撃。どうにもこのエリアは殺意が高い。
蟹の鋏は金属の鋏と変わらないような鋭さだったし、亀の噛みつきは金属でさえ食い千切りそうであった。そして蛇が体重と共に降ってくる。毒を無視しても致命の一撃になりかねない攻撃だ。
人の首など容易く折れる。その危険性を考え、ゾッとするアレッサであった。




