0142・いつもの面々と雑談
「それにしても面倒臭かったね。色々な犯罪をしている奴が居たけど、大抵はお釣りをちょろまかしたり、ちょっとした覗きだったり、若い子の摘み食いだったのは良かったよ。重罪の者は殆ど居なかったからね」
「摘み食いは色々問題だと思うのはあたしだけかい? あの屋敷、新しく入ってきた若い少年は、高い確率であの女に食われてるよ? 歳の割には随分と肌艶の良い女だったけど、それが理由なのかねえ……」
「それでも侯爵が良しとしたんだから良いんじゃないの? 私達が何かを言っても意味無いし、屋敷の中の秩序がそれで保たれるなら問題ないと思うけどね? 神殿だって似たようなものだし」
「ああ、それ私の時代でも聞いた。神様を祀る神殿に居るそれなりの歳の女神官は、だいたい少年を食ってるってヤツね。ソレと変わらないと言われれば、確かに、としか思えないわー」
「昔から神殿の中なんてのは、そんなものだからねえ。普段お堅い態度のヤツほど夜は……って、そう言えば少年食いの女も、真面目でお堅いヤツだったんだっけ? 本当に昔から変わらないってのが、よく分かるよ」
「そういえば神殿って今の時代はマシなの? 【浄化魔法】が使えるのが多いから、ヴァンパイア時代は近付いた事も無いのよねー」
「今も変わってないわよ? 信者の相手をしてお金を稼いでるのとか、それ目的で来た客の相手をしたりとか、男女関係なく普通にやってるしね。男性神官も女性神官も、そこは変わらないわ。ウチの娼館に勉強に来るのも居るくらいだし」
「本当に変わってないのよ。とはいえ神殿が認めてるし、そこから多少神殿に入れさせてるしね。それが神殿の補修とか日々の食費にも使われるんだから、何とも言えないの。国からの補助だけじゃ難しいし」
「ゴールダームはダンジョンの第1エリアがアレだから恵まれてるけど、他のダンジョンはそんな事ないからね。余計にそういう事で稼がないと、やっていけないでしょう。必要な事よ」
「別にケチ付けるつもりなんて無いわよ? わたしがヴァンパイアになる前だって同じだったんだし。ただ、変わってないんだなーって思うくらいで、他には何も思わないわ」
「まあ、アレは必要な事で終わりね。それよりミクが食った伯爵家の四男。その実家には手を出してなかったけど、どうするの? 今回の事で伯爵家も犯罪を犯していた事が分かったわよ?」
「今は侯爵家の顔を立てる形で任せるかなぁ……。駄目なら当主とその家族は<真実しか話せない刑>に処すけど、今はまだ様子見してあげる」
「ま、そうよね。神様から命じられてるミクに対して侯爵が待てと言っても、ミクが待ってやる必要なんて欠片も無いし、そもそも聞く必要なんてないもの。でも様子見してあげるのね?」
「第6エリアを攻略したりとか、色々やらなきゃいけないからね。伯爵家に構ってる暇は今のところ無いかなーって言うのと、今でも後でも喰うのは変わらないと思う。多分だけどね」
「侯爵が負けるという事かしら?」
「いや、負けるとか負けないとかじゃなくて、伯爵家は駄目なら尻尾巻いて逃げそうじゃない? お金とか高く売れる物を持って逃亡しそうな気がするのよ。それなりにお金とか持ってるだろうし」
「ゴールダーム内部の様々な情報や伝手、並びにある程度の金銭で受け入れるだろうね。伯爵家がどの程度の資産を持ってるか知らないけど、多分払っても十分生きていけるだけの資産は持ってると思うよ」
「ゴールダームの貴族って下位貴族はお金持ってないけど、高位貴族はお金持ってるのよねー。下位は上に上がる為にお金撒くから。とはいえ、そんな事をしたって上がれる事は殆ど無いのに」
「ゴールダームはダンジョン国家だから、他の国と違って功績を挙げにくいんだよ。だからお金でってなるんだろうね。他の国は他の国で大変なんだけど、同時に上がれるチャンスも多いかな?」
「領地の経営とか色々あるものね。ダンジョン国家なんだから探索者に支援して攻略を促せばいいのに、そういう事はしないよね? 何でかは知らないけど」
「あんまり旨味が無いからじゃない? 一時期は探索者を自分の子飼いにする代わりに支援するのは流行ったけど、探索者自身が貴族に関わるのを嫌がるからね。結局、続かなかったのよ」
「支援してもらう価値が無いっていうか、探索者も貴族の言いなりとか嫌がるの。それでも価値があれば良いんだけど、待ってるのは貴族のアクセサリーみたいな扱いだもの。攻略もさせずに付属品扱い。それではね」
「貴族の碌でもない部分が、これでもかというぐらいに出てるねえ。だから嫌われるっていうのに、それでも理解しない奴はしないんだよ。情けないとは思わないんだろうね、そういうヤツは」
そんな話をしていると夕食の仕込みが終わったらしいので、早速ミクは小銀貨2枚をイリュに渡し、適当に注文するように言う。ミクも大麦粥とウサギ肉の焼き物を頼み、ゆっくりと待った。
料理が運ばれてきたら食べつつ、明日の事を話す5人。
「私は明日、第6エリアに行って攻略というか、地図を描いていく感じかな。アレッサも連れて行くけど、入った瞬間に死ぬって事はないでしょ、流石に」
「まあ、それは無いとわたしも思う。もし入った瞬間死亡ってなるんだったら、ミク以外には誰も攻略出来ないから。幾らゴールダームが世界最高難度のダンジョンだと言っても、それはない」
「それはないって言うか、あってほしくないが正しいわよね。ミク以外に攻略不可のダンジョンなんて、そもそも作る意味が分からないもの。今までのエリアは問題なかったのに、急に難易度が跳ね上がるのも考えにくいし」
「攻略不可能なダンジョンなんて作られないと思うけど、そう思えるぐらい難しい場合もあるしね。明日ミクが第6エリアに行けば歴史が変わるわ。その結果、新たな何かが作り出されるようになったりして」
「金属? 流石にそう簡単に新たな金属の材料が見つかったりしないでしょ。私は果物があるエリアが良いわ。第3エリアの森にはそういうの無いし、そろそろ第1エリアと同じく何かの食べ物があってほしい」
「食べ物なら私は肉。もっと美味しい肉の魔物がいい。第4エリアのランサーブルも美味しいんだろうけど、もっと美味しいの。そしたら持って帰ってきて、私が1頭のお肉を独り占めする」
「独り占めは好きにすればいいけど、そんな量を食べきれるの? 流石に無理だと思うけどね」
「ま、明日行ってみてからだね。食事も終わったし、そろそろ部屋に戻るかな。アレッサは珍しく眠たくないみたいだし、偉いねー」
「子ども扱いすんな!!」
「いっつも夕食後は眠たそうにしてるじゃないの……」
「本当にね」
「まったくさ」
ミクは食事の終わったアレッサを抱き上げ、子供扱いしながら部屋に戻る。何故かアレッサは言葉ほど怒ってないので、若干微笑ましそうに見ている3人。
再誕したアレッサは、500年生きたヴァンパイア・ロードと、時が動き出した少女が入り混じったような精神をしている。おそらくは何かしらの結果、そうなったのだと思われるが……。
「多分ヴァンパイアの時のモヤモヤが原因じゃないかと思う。頭の中にモヤが掛かったような、何か上手く考えられないような感じがあったのは覚えてる。それが原因だったんじゃないかな」
触手で持ち上げられて全裸にされた後、【清潔】と【聖潔】を使われ、今は服を着せられている。何故か一切の抵抗をしないで為すがままだが、本人的には問題ないのだろう。
その後ベッドに寝転がったアレッサは、10分もしない内に寝息を立てた。ミクもその横で下着姿になってベッドに寝転がると、目を閉じ、いつもの暇潰しを始める。
イリュの装備は完成しており、次は何を作ろうかと考えながら。




