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0010・第3エリア・森ダンジョン




 ミクは宿の部屋を出て食堂に移動。いつも通りの食事を頼んだ。



 「具沢山の大麦粥ね。はい、大銅貨1枚」


 「はい、具沢山の大麦粥ですねー。……いつも同じですけど、他に何か頼まないんですか?」


 「……頼んでもいいけど、よく分からないから無難な物を選んでる。別に大麦粥は嫌いじゃないしね。美味しければいいけど、美味しくないと頼んで損をする。それはイヤ」


 「気持ちは分かりますけど、ウチのはみんな美味しいですよ。と言っても駄目でしょうから、今日のオススメは茶色ウサギの焼き物なんです。それはどうですか? 中銅貨1枚です」


 「……じゃあ、それお願い。中銅貨1枚ね」


 「ありがとうございます。大麦粥とウサギの焼き物でーす!」



 いつもの女性は注文を厨房に言いに行ったが、ミクとしては言い訳できるなら何でもいい。そもそも人間種と同じ食事など必要なく、現状維持なら食事の必要すら無い。そういう存在なのだ。


 運ばれてきた大麦粥を食べつつ、焼かれて表面がパリッとしているウサギ肉を口の中に入れて噛む。噛むと肉の旨味が広がるものの、ミクの大好きな血と肉の混じる旨味は無い。


 今日のおどり食いと比べれば遥かに美味しくない肉だが、それでも決して不味くはない。ミクの好みは生であり、悲鳴を聞きつつ貪り喰うのが好きなのだが、そんな物は人間種の食事にある筈もなく……。



 「うん、これもなかなか美味しい」


 「そうですか、ありがとうございます!」



 そんなお世辞を言いつつ食事を済ませるのだった。


 夕食後。部屋へと戻ったミクはブーツを脱いだ後、ベッドに寝る前に薄いシャツとパンツに着替える。神から貰った厚手のズボンは、床に置いた背負い鞄の上に掛けておく。


 ベッドに入って寝転がったミクは、分体との関わりを最低限にし、本体空間に意識の大半を移した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ここからは夜のお楽しみだ。手に入った武器を弄る前に、男達の持っていた物を調べる。革の水筒や魔物の胃袋で作った水筒などがあり、他にも干し肉や何かの塊がある。


 食べてみると大麦の味がしたので、おそらく大麦を粉にして練って焼いた物だろうと思われる。これも知識にあるパンの1種なのだろうか? そんな事を本体は考えたが、答えは出ない。


 金銭に関しては、小銅貨が12枚、中銅貨が3枚、大銅貨が29枚、小銀貨が18枚だった。6人と考えると、やはりお金を持っていない奴等であり、それでも無一文よりはマシといったところか。


 他には無く、人を襲う事しか考えていなかったのがよく分かるというものである。探索者の登録証すら持っていなかったのだから、スラムの連中か闇ギルドの連中であろう。


 そんな事よりも連中の武器だ。やっと多くの鉄が手に入った為、作りたい武器を作り出せる。本体が作ろうと思っているのは棒である。それも総鉄製のシンプルな棒。棍と言っても差し支えない。


 何故それを作るのかといえば、それは突いて良し、薙いで良し、殴って良しの武器だからだ。斬撃や刺突にはならないが、敵を倒すには十分過ぎる武器である。


 そもそも人外パワーを最大限に活かすには、圧倒的なまでの頑丈さが武器には必要だ。たとえ総鉄製の棒であっても人外パワーには耐えられない。なので、とりあえず出せる力の上限を上げる。


 剣は折れやすく、怪物にとっては使い難い。もちろん使う為の技術は神からしっかり叩き込まれているが、無理に使う必要の無い武器を使っても仕方がない。なので剣は使わない事に決めた。


 どのみち切りたければナイフを使えばいいので、剣を使う必要性は薄い。そんな事もあり、本体は棒を選択した。


 骨で作った型に溶かした鉄を流し込み、冷えて固まったら本体の牙で綺麗に整える。そうやって完成した棒は直径5センチ、長さが2メートルとなる。


 男達がロングソードや斧、それにショートソードやダガーなど、多くの武器を持っていなければ作れなかっただろう。それほどの棒となった。


 分体を作りだし振り回すも、その重さと威力で敵を潰せるのがよく分かる。そんな風切り音が本体空間に響き渡っていく。


 満足した本体は、後は適当に過ごしながら朝が来るのを待つのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 明けて翌日。朝早くに起きて準備を整えたミクは、食堂に移動して朝食を頼む。いつも通りの大麦粥を食べ、まずは店へと売りに行く為、南東区画へと移動した。


 南東区画に着くと適当な武具屋へと行き、神から貰った何の変哲も無い青銅のショートソードとダガーを売る。両方合わせて大銅貨7枚にしかならなかったので、青銅の武器は相当安値なのだろう。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 駆け出しが使っているか、ベテランに使われていてもメイスやハンマーに使われているのが青銅だ。斬撃や刺突は鉄でないと威力が出ず、無理に青銅を使う理由が無い。


 もちろん切れない訳ではないのだが、好んで青銅製の剣を使う者はいない。鉄があるのならば鉄を使うのが当たり前である。更に、この星には特殊な金属が多く存在している。


 ジュライフ銅やドリュー鉄、ウィリウム鋼やハイネル銀。また、多くの者が憧れるエクスダート鋼という金属もある。普通の鉄製でさえ、金が無い者が使う装備でしかないのだ。


 特殊な金属はどれも、元々の金属に魔物の素材などを溶かし、魔素や魔力を篭めて変質させた物である。その事はミクも知っているが、その配合などは一切知らない。あくまでも知識としてあるだけだ。


 ついでに組成も詳しく教えてくれればいいのに、とミクは思っているが、神々からすれば実地で学べと言うだけであろう。全て教えたりしないのは、神々も忙しいからでしかなかったりする。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 青銅の武器を売ったミクはダンジョンへと向かう。既に第4エリアまでの地図は記憶しており、わざわざギルドへ確認に行く必要は無い。


 ミクは2つ目のショートカット魔法陣の前で並び、順番が来たら乗って入る。今回は鬱蒼とした森のダンジョンだ。ここで脱落する者が多く、1種の篩い分けになっているエリアとなる。


 森の中ではいつ何処で奇襲を受けるか分からず、常に周りに気を張らなければならない。その恐怖に打ち克たなければ先へ進む事など出来ない地形なのだ。


 多くの者がここで仲間を失い、心に傷を受けて故郷へ帰る。もしくは不良探索者や賊に身をやつす。その分岐点にミクは立った。


 もちろん絶対者たるミクに通用する筈もなく、道中の魔物は須らく餌食になっている。何故なら肉塊を見られずに済むからだ。


 ミクにとっては喰った方が早いのは自明の理であり、それ故にさっさと喰らっていく。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 毒を持ち噛み付いてくるレッドアイスネーク。こいつは赤い目をした緑色の蛇で、強い神経毒を持つ。噛みつかれれば、全身が麻痺してしまう程だ。


 そしてこちらも毒を持つブラックスパイダー。握り拳ぐらいの大きさの蜘蛛だが、これに噛みつかれると出血が止まらなくなる。また牙は非常に鋭く、血を吸う蜘蛛でもあり非常に危険な魔物だ。


 それだけかと思えば、このダンジョンからはゴブリンが登場する。この魔物はかなり危険であり、罠を作成したり他の魔物を囮にしたりと、非常に狡賢い性格をしている。


 ギルドに貼り出してある紙にも書かれていたが、このエリアからが本番であり、ここを越えられないとゴールダームという夢から零れ落ちてしまう。


 かつての女性兵士が言っていたのは、そういう意味だったのだ。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 そんなエリアをミクは淡々と進んで行くのだった。


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