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0008・愚かという事




 ミクは初めて荒地ダンジョンへの魔法陣に乗る。ここからは初心者でなくなるし、ギリギリとはいえ、普通の探索者が魔物を狩る事で生活できる場所だ。当然ながら奪い合いは激しいだろう。


 ミクがそれに参戦する事は無いが、探索者が多いと視線が多いという事でもある。適当に出来ず、きちんと肉体の能力をセーブする必要があるのだが、ミクにとってそれは面倒な事だ。


 それでもここを突破できれば多少マシになる筈なので、一番の激戦区である荒地ダンジョンは今日中に攻略する。それがミクの今日の目標だ。


 荒地ダンジョン。赤茶けた荒野のような場所であり、そこに居るのは牛系の魔物や、鳥系の魔物。そしてウサギ系の魔物とネズミ系の魔物だ。


 ネズミは初心者ダンジョンにも居たが、こちらのネズミは倍以上に大きい。肉の部分も多いのだが、一般家庭や孤児院以外では食べられない。このネズミの肉は美味しい物ではない為、高く売れないのだ。


 なので、子供のおやつ代わりだったり、晩酌のツマミとして食べられている。それ目当てに狩って持って帰る者も居れば、家族に言われて狩って帰っている者も居る。


 ミクはそんな姿を見ながら歩いて行き、階段を下りて進んで行く。高値で売れる牛系のモンスターは取り合いをしており、ときおり怒号が響き渡る。


 そんな大声を出している者も、次の瞬間には近くに現れた牛の魔物に撥ねられていた。そんなカオスな状況も生まれるのが、この荒地ダンジョンらしい。


 初心者エリア以外では、魔物が自分の横に突然出現したりする。不思議な現象だが、高い確率で不意打ちを受けたりするので、非常に危険な現象でもある。この国に孤児院が多く、親を失った子供が多い理由の一つだ。



 (私の近くにも出現するかもしれないけど、そうなったら素早く逃げた方がいいね。それならおかしくないだろうし、変に思われたりはしない筈。私なら出現した瞬間に殺せるけど)



 腕を触手に変えて頭を貫き、一瞬で元に戻す。そうすれば知られる事なく殺せるだろうが、出現した瞬間に魔物が死ぬなど、怪奇現象以外の何物でもない。


 そこまではミクも分かっていないが、自分が考えた事は人間種社会の中で不審がられるとは思ったらしい。実に良い傾向である。


 その後も魔物から離れるように進んでいき、階段を下りていく。道中では【火弾】だけではなく【風弾】や【土弾】を使う魔法使いも居た。それらの魔法陣も記憶して手に入れながら進む。


 荒地ダンジョン5階、そこで出会ったのは女性4人のチームと男性6人のチームだった。明らかに男性を避けようとしている女性達と、下卑た顔で女性達に絡む男性チーム。


 厄介事のようなのでミクはスルーしようとしたが、それが叶う事は無かった。今は攻略の方を優先したかったのだが、そうは行かないらしい。



 「おっと、待ちな。お前さんもそうだが、ここは危険なダンジョンだ。オレ達が助けてやるぜ?」


 「必要ない」



 そう言って横を通ろうとするも、他の男達がミクの前を塞ぐ。仕方なくミクは立ち止まったが、女性のチームは武器を抜いて構えているのが見えた。



 「おいおい、オレ達は親切に声を掛けただけだぜ? 武器を構えちゃいけねえなあ。お前さん達の方がギルドから追放されちまうぜ? それはイヤだろ? なら納めな」


 「「「「………」」」」



 女性4人は武器を納めようとはしない。当たり前だが、こんな連中の言う事など信用する方がおかしい。探索者同士といえど、身を守る為に武器を構える事ぐらいは認められている。


 このまま膠着するかと思ったので歩き出そうとするミク。しかし、前を塞ぐ男どもはミクを押さえようとした。その瞬間、ミクは男の顎をブン殴る。



 「ガッ!?」


 「おい! クソッ、てめぇ! どういうつもりでぇぁ!?」


 「このアマ! ふざげぇへッ!!!」


 「おまゴッ!!?!?」


 「クソッタレがハッ!!!」



 あっと言う間に5人叩き潰され、調子に乗って女性達に声を掛けていた1人以外が沈んだ。正確には2人ほど股間を蹴り上げられているので、気絶はしておらず、代わりに悶絶しているが。


 ミクは今の内にと女性達を逃がしており、この場に残っているのは、ミクとマヌケ面を晒しているゴロツキのような男だけである。



 「て、てめぇ……。こんな事をして、許されると思ってんのか! オレ達がギルドに言えば、どう「言えばいい」なるか分かって……」


 「ギルドに報告すればいい。私もお前達が何をやっていたのか報告する。後はギルドが判断する事。さて、どっちが損をする?」


 「ぐっ……てんめぇ………」


 「喧嘩を売るなら相手を選べ、マヌケ」



 そう言って、ミクはその場を立ち去る。後ろでは憤怒の表情をした男が、他の男達を起こしていた。ミクの背を憎しみの篭もった視線で睨みつけながら……。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 当然、一部始終を確認しているミクにとっては予定通りである。愚か者やゴミのような者は喰らっていいのだから、釣り上げる為に餌を撒くのは当たり前の事だ。もちろんミクは釣りなど知らない。


 ただ、初心者ダンジョンの時のように、最奥のボス部屋に奴等を乱入させられないかという考えからの行動だ。そしてそれは正解であったらしく、あの男どもはミクの後ろを尾行してきた。


 ミクは後ろを振り向く事なく、しかし内心は大喜びである。また喰らってもいい肉が喰えるのだ。ミクにとって、これほど喜ばしい事は無い。肉が自分から喰われに来るのだから、捕食者にとってはありがたい限りである。


 ミクはその後も周囲の探索者を見ながら、魔物を避けて進んで行く。そしてボス部屋前まで到達。そこは誰もおらす、男達にとって実に都合が良かった。もちろんミクにとっては言わずもがな、だ。


 ミクはノンストップでボス部屋の中に入ると、後ろの男達も雪崩れ込んでくる。入り口が閉まった途端、男達は声を上げようとしたが、それより早くミクが口を開いた。



 「お疲れ様。バカはこうやって簡単に引っ掛かってくれるから助かるよ。ちょっと挑発するだけで簡単に喰われに来てくれる。本当にありがたいね?」



 ミクは男達の方に振り返り、笑顔を向ける。されどその目は笑っていない。彼女の目は爛々としており、これから喰う事を全力で楽しもうという思いに溢れていた。


 自分達に手を出してきた生意気な女を潰す。そんな事を考えていた男達は、初めて自分達の考えが間違っていたんじゃないかと疑問に思い始めた。しかし、それは既に遅い。



 「「「「「「ガッ!?」」」」」」



 ミクは男達に掌を向け、両足に骨杭を発射する。これは男達の足を潰し、逃げられなくする為だ。そしてボス部屋の中央に振り向き、まずはボスに対処する。


 出てきたボスはオーク。全身に毛が一切無く皮のみであり、顔は猪と猿を足して2で割ったような顔をしている。口の中には牙が大量に見え、まるで鮫か鰐のような怪物っぷりだ。


 しかしこの魔物は天然にもおり、とにかく異常な性欲を持つ魔物である。男も女も関係なく犯し、無理矢理に性欲を発散。犯し尽くした後は食料として喰らうという魔物であり、蛇蝎の如く嫌われている。


 そんなオークが10体ボスとして出現した。ミクは即座にオークの両足に骨杭を射出、足を潰してしまう。その後に後ろの男達に振り向いた。


 その顔は爛々と輝く目と吊り上がった口が見え、もはや狂気に染まっていると言っても過言では無い。とはいえ、5階からお預けにされていた”食事”だ。


 ようやく欲望が満たされるとなれば、この怪物の喜びようも仕方がないと言えるだろう。


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