1109・ハルキの冒険 その21
Side:ハルキ・ゴトウ
オレ達はフォルドーの町のダンジョンでのお金稼ぎを終え、さっさと竜人国に進む事にした。皆も同じ事を思っていたが、探索者ギルドのギルドマスターが、大量に獲物を持って帰ってくるオレ達を怪しみ始めたんだ。なので無理難題を吹っ掛けられる前に逃げる事にした。
現在オレ達は歩いてフォレスターと竜人国の国境の町へと向かっている。乗合馬車などに乗るとオレ達がどっち方面に行ったかバレるので、出来るだけ分かり難い方向に出発し、途中で国境の町への道へと戻って歩いている。
魔物が出る事も無い旅路だけど、馬車に乗るよりは遅いな。とはいえ明らかに遅いって程でもないので気にしなくてもいいか。ここ最近オレ達は乱獲と言っても良いほどに狩りまくっていた。明らかに全員がアイテムバッグを持ってないと無理な量だ。
しかしその所為もあって、買い取り額が下がるまでの事態に発展した。ま、その事がギルドマスターの疑いに繋がったんだけどな。
でもオレ達としたらダンジョンはともかく、あの町に未練も何も無いし、だったら最後に出来るだけ金を巻き上げようぜって事になったんだ。
あのギルドマスターには良い思い出どころか脅された記憶しかないし、別にあの町に良くしてくれる人なんて居なかったしな。それどころか余所者として、ずっとジロジロ見られ続けただけだ。まるで「早く出て行け」と言わんばかりだったよ。
だからこそ誰にもアイテムバッグの出し方を教えてないし、あの町に砂を掛けるようにして出たんだ。恩には恩を、仇には仇を。自分達がやった事を、形を変えてやり返されただけだ。ま、ああいう人達は自分は悪くないって言うんだろうけどさ。
「どうしたの、ハルキ? 何かさっきから表情がコロコロ変わってるけど」
「ゴメン。あの町であった事とか思い出してたら腹が立ってきてさ」
「ああ、そういう事。それなら分かるわ。あそこの町と言うべきか、それともエルフという種がそうだと言うべきかしら? 何か壁があるっていうか、こっちを見下してたわよね? いちいち面倒だから気にはしなかったけど」
「だねえ。露骨に目で見下してるヤツも居たし、ラトが高慢なヤツが多いっていうのもよく分かるよ。この世界じゃないところでも高慢だし、この世界でも高慢だ。エルフっていう種が高慢なのは不変の真理なんだろうさ」
「嫌な真理じゃと思うが、しかし間違ってないのが何とも言えん。実際に元の世界でも奴等は高慢だったからの。全方位の種族を陰で見下しておった。もちろんあからさまにはせんが、かといって伝わるようにはやるのだ。だから嫌われるんだがの」
「何処でもそうよ、嫌われる者は嫌われるべくして嫌われるわ。たまに時代錯誤な昔からの差別があるけど、私の元の世界では殆ど無くなってた。ま、だからといって種族間の抗争が無かった訳じゃないけど」
「それは仕方ないだろ、種族が違うだけで争いは起こるさ。何たって同種でも争うんだから、違ってたら尚の事争うに決まってる。それが生き物の生き方ってもんだろうしね」
「ワシらも元の世界とは違うからこそ争わんのかもな。兄ちゃんが言ってた通り、この世界では異物であるが故に、ワシらは異物仲間でもある。実のところ根っこは同じだ」
「だね。何処に行っても異物扱いなら、異物同士で集まるのが自然か。となると、あのエルフはどうなるのやら。あの国に一人残されるけど……ま、エルフで待遇が良いんだし、自分の力で何とかしてもらおう」
確かにそうなんだけど、本当に大丈夫かな? でもあのエルフの人あんまり記憶に無いし、口を開くと結構ズバズバ言うからハッキリ言って良い印象が無い。狼の人ことフィグよりも良い印象が無いんだよ。
ちなみにフィグリスの事はフィグと呼ぶ事になったんだけど、それは本名を全部言うなという事だった。ディオレッタさんが、名前がバレると呪いを掛けられるかもしれないって言ってたのを思い出して、しこたま怒られたんだ。
確かに言われてみれば本名全部呼ぶとマズいのは間違い無い。その時は気付かずに普通に呼んでいて、怒られるまで呪いの事なんて忘れてたんだ。流石に理不尽な怒りじゃないんでオレもしっかり謝ったけど、相当に怒られたよ。
そんな事を思い出しつつオレ達は国境への道をひたすら歩いていく。
…
……
………
フォレスターと竜人国の国境を越えて8日。やっとこの国の王都までやってきた。途中でこの国の乗合馬車に乗って移動したけど、それでも大変だったな。周りから怒りと恨みの目を向けられるし、この国ではかなり肩身が狭い。
それでもオレ達がこの国、ドラゴニア王国の王都を目指しているのはたった一つ。そこにダンジョンがあるからだ。それと殺されるなんて言われてたけど、そんな事は無かった。
確かに怒りと恨みの目を向けられるんだけど、中には親切に助けてくれる人も居た。それも妙に親身になってくれる人で、最初はこっちを罠に嵌めようとしてるんじゃないかって思ったくらいだ。
実際には唯の良い人だったんだけど、そういう人が各町にそれなりに居たんだよな。そういう人達に本当に助けられた。周りから睨まれるだけなら、この国からはとっくに出て行っている。でもああいう人も居るから、何とか大丈夫なんじゃないかと思ってるんだ。
それに、この国の王都が一番危険が無いっていうか、一番ウェルトゥーザの連中に見つかる可能性が低い。そういう意味での危険は一番遠い場所なんだ。なので王都に行こうと皆で決めたんだよ。
それと親切な人達が言うには、王都が一番マシならしい。怒りや恨みはぶつけられるだろうけど、王都の貴族はそこまででもないそうなんだ。理由は召還者が<奴隷の首輪>で強制されているのを知っているかららしい。
まあ、それを教えてくれた人も貴族で驚いたけども、そこまで上の方には嫌われてないようで良かったよ。貴族なんかが「人間を殺せ!」とか言い出したら、多分だけど逃げる事も出来ずに殺されてただろう。そういう意味では何重にも幸運だった。
そしてそろそろ王都に着くんだが、門の手前で降ろされる事になってる。理由は王都の中には馬車が入れないっていうか、王都は小山に作られてるので坂ばかりらしい。しかも小山の頂点に王城があるんだそうだ。
聞いただけでもゲンナリしてくるが、それでもこの小山が王都なんだから仕方ない。実際に今自分の目で見ているが、マジで小山の上に王城があるっぽい。下から見上げただけじゃ、何となくでしか分からないけども。
オレ達は乗合馬車を降りて、王都の門番に登録証を見せる。その後に質問をされたが、オレ達はダンジョンに挑戦に来たとハッキリ告げた。こういう時に狼狽えると余計に怪しまれるって、ミューとアムに何度か注意されたからな。流石に覚えてる。
「よし。なら通ってよし」
ふぅ……、何とか問題も無く通れたか。やっと王都に着いたし、早めに宿を確保しておこう。とりあえず表通りの高い宿は最後の手段として、まずは安値の宿を探そう。あまりに安いと怪しいけど、多少安いくらいなら問題ない筈だ。
蚤とか虱とかはお断りだから、汚かったらランクを上げる。たまに普通の値段の癖に猛烈に汚い宿とかあるからなぁ、事前に部屋を見せない宿は止めた方が良い。そういう事も。この世界に来て身につけたよ。
元の世界でも外国に行く際に役に立つと思う。そもそも帰れないから意味は無いんだけど、外国の観光地に行くとそうやって……って、黒髪の女性?。
いやいや、ちょっと待て。何でドラゴニアの王都に人間が居るんだ? しかも黒髪の。
いったいどういう事なんだ? この世界の人間ってだいたい金とか赤とかだろう。たまに茶色のヤツも居るけど、あからさまに黒髪なのは居ない筈だぞ。もしかして日本人か?。
残念ですが、この作品を凍結する事にしました。理由としては、おおよそ一年に渡って頑張ってきましたが、大して総合ポイントもPVも伸びないのでコレは駄目だと思った次第です。
本日より新たに「時空の旅人 ~イシスとヌン~」を投稿します。そちらは最初からほぼ最強ではなく、オーソドックスな内容になっておりますので、宜しくお願いします。




